大堂津駅は海辺の駅だ。ホームから海が見える。駅の裏側の浜辺は
大堂津海水浴場で、夏であれば海水浴を楽しむ子どもたちの歓声が風に乗って届くかもしれない。
大堂津駅は1936年(昭和11年)に開業した。1935年(昭和10年)に志布志〜榎原間が延伸開業していた志布志線が、翌年に大堂津まで延伸、大堂津駅が開業した。志布志線はさらに1937年(昭和12年)には油津へ、1941年(昭和16年)には北郷まで延伸開業し、やがて1963年(昭和38年)に日南線が全線開業、志布志〜北郷間の志布志線が日南線に編入されることになる。
現在の大堂津駅舎は2019年(平成31年)3月20日に完成したものだ。それまで、開業時に建てられた駅舎が長く残り、細部の改修が施されながらも風情ある姿を見せてくれていた。しかし海辺の駅ということで潮風による傷みも大きく、老朽化が無視できなくなって、ついに2019年(平成31年)早春に建て替えられたというわけだ。
大堂津駅はそもそも(おそらく国鉄民営化の頃から)無人駅で、乗降客も少ないから、新駅舎はコンパクトなもので充分ということで、旧駅舎に比べてずいぶんと小さくなった。外観はなかなか洒落た意匠で、正面から見たときの両側の黒い外壁部分は細田川に架かる橋梁の橋桁をモチーフにしたもの、屋根部分は橋梁の枕木をイメージしたものだという。ガラス部分には波と群れ飛ぶ海鳥の姿がデザインされており、海辺の駅らしいデザインが施されている。使用建材は飫肥杉、新燃岳の灰から作ったレンガも使われているという。
古い駅舎が失われたのは残念でもあるが、現代的なデザインの新駅舎もなかなか可愛らしく、フォトジェニックだ。新駅舎のベンチに腰を下ろし、吹き抜けてゆく潮風を感じるのも素敵なひとときだろう。
大堂津駅は二本の軌道と相対式ホームを持つ交換可能駅だが、もちろん跨線橋などはなく、海側に位置する下りのホームへは駅舎から線路を横切ってゆかなくてはならない。線路を横切るその通路からも、眼前に海が見える。青い海の向こうに見える島影は大島だ。いかにも小さな海辺の町の駅という佇まいが、旅情を誘ってなかなか楽しい。