日南市街から県道28号を北へ辿れば北郷地区だ。県道28号は北郷地区の中心部を抜け、さらに北へ辿り、やがて市境の峠を越えて宮崎市の田野地区へと至っている。県道28号が北郷中心部を抜けて間もなく、広渡川がギリシャ文字の「Ω(オメガ)」のような形状に大きく蛇行するところがある。その「Ω」の右上に当たる河岸に、蜂之巣公園がある。昔から「蜂之巣キャンプ場」として知られていたところだが、現在ではテニスコートやグラウンド、幼児用プール、コテージなども設けられ、スポーツやレジャーの拠点として整備されている。
県道28号から広渡川の河岸に沿った道を入り込んでゆくと駐車場が設けられ、その横には管理棟が置かれている。その奥にはテニスコートやグラウンド、幼児用プール、大型の複合遊具などが設置され、その周辺がキャンプ場として使われる。もちろんキャンプ用の炊飯施設なども設けられている。河岸の堤防には遊歩道が整備されており、広渡川の流れを眺めながらの散策も楽しい。
広渡川が大きく流路を変えて曲がってゆく辺り、吊り橋が架かって対岸とを繋いでいる。吊り橋は強固なもので恐怖感などは感じないが、歩いてみるとやはり少しばかりスリリングだ。吊り橋からは広渡川と河岸の山々とが織り成す美しい風景を堪能することができる。吊り橋を渡った先の対岸にもテニスコートが設けられ、さらにその奥には「蜂之巣コテージ」と名付けられたバンガローが並ぶ。「蜂之巣コテージ」は露天風呂付きだそうだ。対岸側のこの一角には別ルートを辿って車で来ることもでき、バーベキューを楽しむ人たちも少なくないようだ。溢れる自然の中でのんびりと過ごすひとときは心癒されるものだろう。
グラウンドや大型遊具などの置かれた一角から広渡川右岸(すなわちΩの内側)の遊歩道を上流側に少し辿ると、双龍橋という名の橋が広渡川に架かっている。この橋は日本で最初の実用吊床版橋であるとの解説が設置されている。10本のピアノ線が入った暑さ18cmのコンクリートの“床”を両脇から吊った構造らしい。川の中ほどに橋桁が一基設けられ、その構造の橋が二組繋げられた形だ。そこから“双龍”の名があるのだろう。双龍橋を渡れば、こちらも美しい広渡川の景観を楽しむことができる。キャンプ場のメイン部分から少し足を延ばしてみるのもお薦めだ。
蜂之巣公園はさまざまな施設が設置されているが、最大の魅力のひとつは広渡川の河原での川遊びかもしれない。緑濃い山々に包まれての川遊びは子どもたちにとってはこの上なく楽しいひとときだろう。地元の子どもたちにとっては日常的な夏の遊び場のひとつであるらしく、今回訪れたときにも川遊びを楽しむ子どもたちの姿があった。川の中ほどまで入って釣り糸を垂れる男の子の姿もある。川は事故防止のために遊泳禁止になっているのだが、淵の部分では中学生くらいの男の子のグループが泳いでいた。決して誉められたものではないが、彼らもこの河原に慣れた地元の子たちのようだ。言うまでもないが、川遊びの際は充分な注意が必要だ。浅瀬に見えても流れは速く、場所によっては急に深くなったところもある。特に都会から行楽や帰省などで訪れた人にとっては不慣れな場所であるわけだから、浅いからと油断したりせず、慎重な注意を怠ってはいけない。
蜂之巣公園は主として地元の人たちのレジャーのための場所と言っていいが、キャンプ場には県外から訪れる人もあるようだ。自然豊かな公園だが、“観光名所”ではなく、観光のために訪れた人にお勧めできる公園とは言い難い。しかし、特に普段は町中に暮らす人にとっては緑濃く静かな蜂之巣公園はそれだけで魅力あるものかもしれない。有名な“観光名所”を巡るばかりでなく、蜂之巣公園で広渡川を眺めながら過ごすひとときを設けるのも良いものだろう。
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ページ内の写真は2010年夏に撮影したものです。本文は2013年8月に作成しました。