国道448号を南下し、
都井岬も近い大納地区にさしかかると美しい入り江が眼前に広がる。「恋ヶ浦」という。尾根で隔てられた南側に位置する
宮ノ浦の集落に、昔、鳥羽上皇が上陸したという伝説があり、その鳥羽上皇が丘の上から都を恋しがったというので「恋ヶ浦」と呼ばれるようになったという。そのロマンティックな名はとても印象的で、昔から地元ではよく知られていたものだった。海岸線まで張り出した山肌に抱かれるようにして広がる砂浜の景観も美しく、日南と
都井岬を繋ぐドライブコースでは絶好の休憩ポイントだったものだ。
恋ヶ浦の入り江は海底の地形によってか、いつも波が高い。その波がいつの頃からか波乗りをする人たちに知られるようになった。初めは数少ない地元のサーファーが訪れているだけのようだったが、やがて県北や鹿児島あたりからも人が集まりだし、九州全域、さらには関西圏のナンバープレートを付けた車も多く見かけるようになった。今では砂浜に腰を下ろすサーファーの中に外国人の姿を見つけることもある。波乗りを愉しむ人たちに混じって、波打ち際で遊ぶ家族連れの姿を見かけることもあるが、恋ヶ浦の浜は海水浴場ではない。
波乗りのポイントとして有名になって多くの人が集まるようになり、串間市内でも屈指のレジャースポットであるはずなのだが、恋ヶ浦の近辺には満足な駐車場も無く、レジャー施設らしいものは何も無い。昔からこの地で商売を営んでいた商店が民宿も兼ねており、それだけがサーファーたちの御用達だ。レジャー客向けの施設を整備しても良さそうに思うのだが、その反面、昔ながらの風景の残る入り江にあまり近代的な建物が建って欲しくはないという気もする。