横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市中区山手町
山手イタリア山庭園
Visited in July 2024
山手イタリア山庭園
横浜市中区山手町16、JR根岸線石川町駅を見下ろす丘の上に「山手イタリア山庭園」という公園が設けられている。1880年(明治13年)から1886年(明治19年)にかけてこの場所にイタリア領事館があったことから、「イタリア山」と呼ばれるようになり、公園の名の由来となった。公園内は西洋庭園風に仕立てられ、二棟の西洋館も移築されている。横浜山手観光の際には欠かせない場所のひとつとして常に多くの観光客を集める公園だ。
山手イタリア山庭園 根岸線石川町駅の南口から元町方面へと出ると、駅のすぐ脇を南側の丘へ上る坂道がある。大丸谷坂という。大丸谷坂を上がると、横浜の市街地を見下ろす丘の上に出る。ちょうど根岸線のトンネルの上にあたる。この丘の上に「山手イタリア山庭園」がある。

山手本通りを辿って山手観光を楽しむ際には、「山手イタリア山庭園」はその西端部に当たる。山手本通りから「山手イタリア山庭園」を指し示す標識に従って北側へ入り込んだところに公園が設けられている。
山手イタリア山庭園 敷地の南側、山手本通り側に「山手イタリア山庭園」の正面ゲートがある。ゲートの奧には端正な芝生の庭があり、その向こうに「外交官の家」が建っている。まるで古い時代の広いお屋敷のような佇まいだ。ゲートはそのままお屋敷の門であり、「山手イタリア山庭園」を示すプレートは表札を思わせる。

庭の中を散策路が辿っている。庭の随所にバラの咲く姿がある。「外交官の家」の、向かって左手に、管理事務所や喫茶室の設けられた建物が併設されている。洋館への入館口もそこに設けられ、観光客らしき人たちの出入りする姿がある。

山手イタリア山庭園外交官の家」は明治から大正にかけての外交官だった内田定槌の私邸として建てられたもので、渋谷区にあったものをここに移築したものだ。

アメリカ人ガーディナーの設計によるという「アメリカン・ビクトリア様式」の建物は「山手イタリア山庭園」によく似合って馴染んでいるように見える。内部も無料で見学することができ、室内の佇まいや家具、調度品の様子などから明治期の外交官の暮らしぶりを思い描くのも楽しい。
山手イタリア山庭園 「外交官の家」の北側に一段下がって、「山手イタリア山庭園」のメインとも言える洋風庭園が横たわっている。中央には水路があり、それを取り囲むように花壇が配されている。水路を中心としたシンメトリックなデザインの美しさは、洋風庭園の醍醐味といったところだろうか。

花壇は常に季節の花々で彩られ、美しい庭園をさらに美しい景観に演出する。幾何学的なデザインの庭園を花壇の花々が彩る様子はとても美しい。

山手イタリア山庭園 庭園内から南側を見ると、一段高くなって「外交官の家」の姿がある。庭園と洋館の組み合わせは実に風情があり、まさに“絵になる”美しさだ。この角度で見る庭園の景観は、まさに「山手イタリア山庭園」を代表するものとしてさまざまなところで目にするが、それも無理のないことだと思える。

訪れた人のほとんどがその景観を写真に収めようとカメラのレンズを向ける。庭園の隅でキャンバスの上に絵筆を走らせる人の姿を見ることもある。写真や絵画の対象として魅力的な風景なのだ。
山手イタリア山庭園 洋風庭園の東側にさらに一段下がって「ブラフ18番館」の建つ一角がある。「ブラフ18番館」は関東大震災後に外国人住宅として建てられ、戦後はカトリック山手教会の司祭館として使用されてきたものを移築したものだ。大正期の外国人住宅の特徴を残した建築ということだが、木立に包まれて建つ姿はどこか可愛らしい印象もあって魅力的だ。

こちらも内部を無料で見学することができ、かつて元町で製作されていた「西洋家具」を復元したものも見ることができる。「ブラフ18番館」の横手にはホールが併設され、市民による各種のイベントが行われていることも多い。

山手イタリア山庭園ブラフ18番館」の周囲は緑に覆われ、「外交官の家」周辺の開放感溢れる雰囲気とは少々趣が違っている。林の中にひっそりと建つ童話の世界の家のような佇まいさえ感じさせて、木陰のベンチなどでひとときのんびりと過ごすのも楽しい。庭の北東側の角には横浜市街を見下ろす展望デッキが設けられ、そこからは市街地に向こうにマリンタワーの姿を見ることもできる。

根岸線石川町駅から大丸谷坂を登ってくると、「山手イタリア山庭園」への“裏口”があるが、そこから入園すると「ブラフ18番館」の裏手へと入ってくる。その際にはおそらく「ブラフ18番館」を見学して西洋庭園の方へと辿り、最後に「外交官の家」を見学するというルートになるのではないかと思うが、それもまた魅力的な楽しみ方であるような気がする。
山手イタリア山庭園外交官の家」の東側、「ブラフ18番館」の前庭と正面ゲート横とを繋いでメタセコイアの並木となったプロムナードがある。並木は端正に整えられており、木漏れ日の中を歩くのは楽しいひとときだ。

メタセコイアは夏は青々と葉を茂らせて緑陰を落とし、晩秋には黄金色に染まって陽光に輝く。春の新緑もいい。季節毎のメタセコイア並木の表情もまた「山手イタリア山庭園」のひとつの“見所”と言っていい。
山手イタリア山庭園
「山手イタリア山庭園」はその名が意味するように、開放感溢れる「公園」というよりまさに「庭園」だ。「外交官の家」や「ブラフ18番館」などの洋館が敷地内に建っていることもあって、丘の上に建つお屋敷の敷地であるかのような佇まいを見せる。庭園内には随所にベンチが置かれ、のんびりとくつろぐ人の姿を見ることも多い。庭園は根岸線の線路を見下ろす崖の上に位置し、北方へ視界が開けて横浜市街の眺望が広がっている。その開放感に溢れた雰囲気もいい。

「外交官の家」には喫茶室も併設されており、散策途中の一休みにも好適。美しい庭園の景観を眺めながらお茶を楽しむひとときはなかなか素敵なものではないかと思える。山手地区に残る洋館群の中ではここだけが少し離れているが、横浜山手観光の際には欠かすことのできない場所のひとつと言っていい。
山手イタリア山庭園 山手イタリア山庭園 山手イタリア山庭園