八王子市大谷町〜暁町
−小宮公園−
晩秋の小宮公園
Visited in December 2018
小宮公園は20ヘクタールほどにもなる園内のほとんどを雑木林が占めている。クヌギやコナラといった落葉樹を中心とした雑木林は晩秋に見せる紅葉の景観がとても美しい。また公園南側外縁部にはモミジを植栽した広場も設けられ、晩秋の日をのんびりと過ごすのによいところだ。
公園南端の外縁部、「雑木林ホール」のある一角から西へ緩やかな勾配の小径を辿って行くと、視界の開けた広場がある。「けやきの小道」、「つつじの小道」と名付けられた散策路が広場の中を抜けている。その広場の一角にモミジの木を植栽したところがある。数はそれほど多くはなく、数本のモミジがあるだけだが、日の光を真正面から浴びる姿も逆光に染まる姿もそれぞれに美しい景観を見せる。見る方向によってさまざまな表情を見せるモミジの姿はそれぞれに風情があって素晴らしい。その脇、広場と雑木林の境に当たるところにもモミジの木が並んで見事な景観を見せている。モミジの背後には雑木林のクヌギやコナラが濃いオレンジに染まり、それらの色彩の組み合わせもとても美しい。ゆったりと歩いてゆけば見える景色の表情も変わり、それぞれに味わいがあって眺めていて飽きない。
さらに西へ辿って行けば、公園南西の角に当たる場所に広場が設けられている。緩やかな起伏を伴った草はらの広場には、随所にモミジが植栽され、木製のベンチが置かれている。広場の中に植栽されたモミジはまだ小さいが、紅葉は美しく、なかなか見応えがある。日の光に照り輝く様子を眺めながら散策路を辿り、ふとふりかえると逆光に映えるモミジの姿が目に入る。もちろんモミジ以外の樹木も植栽されており、それらの木々の姿もそれぞれに美しく、北側の林も紅葉に染まり、見る角度、見る場所が変われば景観の表情が変わる。ついあちらこちらと歩き回ってさまざまな表情を楽しみたくなる。広場を辿る舗道には散策を楽しむ人の姿も少なくない。広場の西側は道路を挟んで住宅地だが、喧噪感はなく、周囲はとても静かだ。お弁当を広げて、のんびりと過ごすのにも良い場所だろう。
公園北端部、「ひよどり山」の草地の広場も晩秋の表情だ。澄んだ秋空の下、広場の開放感が素晴らしい。広場のところどころに立つ樹木のそれぞれが秋の色に染まり、あるいはすっかり落葉して印象的な樹形のシルエットを残し、秋空の青と美しいコントラストを見せる。こちらの広場にはモミジなどは植栽されておらず「紅葉」という点では物足りないが、落ち着いた色彩の風景が醸し出す穏やかな空気感が美しく、深まりゆく秋の気配を感じさせるのがいい。ベンチに腰を下ろして秋の風に吹かれていると、のんびりとゆったりとした気分になって時の経つのを忘れる。広場脇の道路をときおり車が行き過ぎるが、辺りは静かなもので、どこからか鳥の声が聞こえてくる。広場に設けられた遊歩道を、散策を楽しむ人たちが行き過ぎる。犬を連れた人は近所に暮らす人なのだろう。
せっかく晩秋の小宮公園を訪ねたのであれば、外縁部の広場だけでなく林の中も歩きたい。落葉の進んだ雑木林は葉の茂った夏より明るく、低い日差しが差し込んでくる。上を見上げれば黄葉の木々が日の光に輝き、その隙間に秋空が覗く。林の中に設えられた木道の上に落ち葉が積もっている様子なども素敵だ。「かわせみの小道」と名付けられた木道を南へ辿って行けば弁天池に着く。弁天池の周辺も秋の装いだ。静かな池のほとりをときおり散策の人が通りすぎてゆく。弁天池から東側の駐車場脇に出ると、小さな広場が設けられている。この広場に一本のモミジが印象的に立っている。モミジはもちろん紅葉し、日の光を浴びて美しく輝いている。
小宮公園は基本的に雑木林の自然を保全した公園だが、外縁部には端正に整備された広場なども設けられ、ピクニック気分で訪れても充分に楽しめる。広場のモミジや雑木林が秋の色に染まる季節、お弁当を持って家族や友人たちと訪れてみるのもいい。鮮やかなモミジの紅葉と、素朴な味わいの雑木林の紅葉と、その双方を楽しめるのが嬉しい。