横浜市緑区新治町〜三保町
−新治市民の森−
早春の新治市民の森
Visited in March 2005
横浜市緑区新治町は今も緑濃い里山と谷戸の風景を残している。それらを整備し、「新治市民の森」として一般公開されたのが2000年の春だった。以来、「新治市民の森」は多くの人々が散策に訪れている。古き佳き農村の風景を残す「新治市民の森」は四季それぞれに見せる表情が美しいが、冬枯れの中に春の息吹を感じさせる早春の日の散策もまたとても魅力的だ。
「籠場」を示した案内注の立つ谷戸の分かれ道へと戻り、左手南側への谷戸へと進む。案内標識は「へぼそ」を示している。道を谷戸の奧まで進むとやがて道は雑木林の斜面の中へと入り込み、霧が丘の住宅街へ抜け出るのだが、そのあたりのことを「へぼそ」と呼ぶようだ。谷戸が奥まったところには「籠場の奧」と記した案内柱が立てられている。黒っぽい木柱に白く手書きされているのが手作り感覚で楽しい。愛護会の人たちによるものだろうか。公開されて間もない2000年の6月に訪れた時にはこのような案内柱は無かったから、その後に設けられたものだろう。「籠場の奧」から斜面林へと入り込む小径が二本、延びている。右手のものは霧が丘の住宅街へと抜け出るものだが、左手のものは以前は無かった気がする。この小径も後になって整備されたものかもしれない。
その小径を登ってゆく。林の中を曲がりながら登る小径を辿ると、やがて「見晴らし広場」の脇に抜け出た。「見晴らし広場」からは北東の方角へ視界が開けている。初夏から秋にかけては葉を茂らせた木々に視界を遮られてそれほど良い眺めではないのだが、今は葉を落とした木々の向こうに眺望が開けている。
「見晴らし広場」から舗装された散策路を下りてゆくと「池ぶち広場」だ。「新治市民の森」の中では唯一トイレの設けられた広場で、「新治市民の森」の中心となる広場だと言っていいだろう。広場入口の脇には枯れ木で作られたオブジェのようなものが置かれ、「5周年」と記されたプレートが架けられていた。2000年の春に公開された「新治市民の森」は2005年で五周年だ。それを記念して造られたものなのだろう。「池ぶち広場」も公開当初の頃には小さな広場だったが、今は広くなり、広場に設けられた木造のテーブルやベンチも増えているようだ。広場の奧には炭焼き小屋がある。「炭焼きクラブ」の名があったから、そうしたクラブの活動が行われているのだろう。
広場で一休みしていると、脇の散策路で大きなレンズを付けたカメラを三脚に据えて何やら上の方を狙っている人の姿があった。野鳥の姿を追っているのだろう。その人と少し話をする機会があった。「ノスリが飛んでいたので撮ろうとしたのだが、照準を合わせている間に見えなくなってしまった」とのことだった。ノスリはタカの仲間の猛禽類で、大きさはトビより少し小さい。普段は標高の高いところに棲息しているらしいが秋から春にかけてはこうした田畑でネズミなどの小動物を狙うらしい。話を聞いて慌てて空を見上げたが、もちろんノスリの姿は見えなかった。
素朴な里山の風景が残る「新治市民の森」には、特に観光客を出迎えてくれるような規模の大きな梅林があるわけではないが、道脇の民家の庭先に咲く梅や、道端の小さな花々に早い春を感じながらの散策は楽しい。木々が葉を落とした季節には眺望も良く、野鳥観察などにも好適な時期だ。ゆったりとした気分で早春の散策を楽しみたい。