多摩市永山、京王相模原線の京王永山駅と小田急多摩線の小田急永山駅が寄り添っている。普段の生活の場面では、その両者を併せて“永山駅”と通称している。永山駅の周辺は商業施設が集まって繁華な佇まいだが、少し離れると多摩ニュータウンの住宅街で、その中に緑濃い公園もある。永山駅周辺を歩いてみた。
調布から稲城を経由してきた京王相模原線と、新百合ヶ丘から黒川を経由してきた小田急多摩線は、川崎市と多摩市との境を越えた辺りで寄り添い、併走するように永山駅へ至る。北側を京王相模原線が走り、南側を小田急多摩線が走っており、永山でも京王永山駅が北側に、小田急永山駅が南側に位置して寄り添って建っている。両者の駅が並ぶ町は南北に細長く、駅の南北に商業施設が建っている。この商業施設も含めた駅周辺の町を、“永山”と通称しているのではないかと思う。
駅周辺は南が低く、北に高い地形で、その地形を活かして建てられた商業施設群は少しばかり複雑な構造をしている。駅の北に出て商業施設の横の階段を上ってゆくと建物に囲まれて広場が設けられている。階段から広場へ至る舗道には可愛らしいオブジェが設置されていて目を引く。オブジェは複数設置され、その意匠に倣った椅子なども置かれていて楽しい。どういった経緯でこのようなオブジェが設置されたものかはよくわからないが、無機質な印象になりがちな都市景観の中のアクセントとして功を奏している印象だ。
広場の北側には「ベルブ永山」という施設がある。多摩市立永山図書館や多摩市消費生活センターの他、郵便局やクリニックなどの入った複合施設だが、その建物の意匠が目を引く。建物の中央部には円形に抉られたような空間を抱え、その内部ではガラス張りの壁面が周囲の景観を映し込み、見上げれば円弧に切り取られた空が覗く。この中央部には南側と北側とを繋ぐ通路が設けられており、階段とスロープが設けられているが、それらのデザインも建物の意匠に倣っている。ここにも不思議な形のオブジェが置かれている。少しばかり近未来的な印象の風景だが、地元の人には見慣れた風景のようだ。
「ベルブ永山」の南側へ人道橋を渡ると永山北公園がある。永山駅のすぐ近くに位置していることもあり、“駅前公園”のような役割を担っているように思える。園路はそのまま住宅街の中の舗道へと繋がり、南側の団地へと辿っている。普段は南側の住宅地に暮らす人たちが永山駅への行き帰りに通り抜けてゆく姿が多いようだ。園内はさまざまな樹木が茂って緑濃く、園内西側には樹林地も設けられていて穏やかな空間を成している。駅近くのお店でテイクアウトのものを購入して、公園内でアウトドアランチを楽しむのも素敵なひとときだろう。
「ベルブ永山」北側の広場から東へ、道路を「やすらぎ橋」という人道橋が跨いで東側の住宅街へと繋いでいる。東側は諏訪1丁目と諏訪2丁目の境の辺り、丘陵地になっており、京王相模原線と小田急多摩線の線路が寄り添いながらその丘の下をくぐっている。その丘へ登ってゆくと
諏訪北公園がある。野球場やテニスコートを置いた公園だが、丘の上の立地ということで眺望が開けているのが魅力だ。
永山駅の西側、道路を挟んだ向こう側に鬱蒼とした樹林地がある。正しくは「
永山駅前緑地」というのだが、「さえずりの森」という愛称が付けられている。この緑地は多摩ニュータウン造成以前の多摩丘陵の林相を残した貴重なもので、一時存続が危ぶまれたものの、2006年(平成18年)に市有地となり、こうして緑地として保全されている。それほど広い緑地ではないが、人工的に造られた公園とはまったく異なった様相が魅力的だ。
今回は、特に永山駅の南側周辺を気の向くままに歩いてみた。永山北公園から住宅街の中の舗道を辿ってさらに散策の足を延ばすのも楽しそうだ。北側へ出て、500メートルほど行けば乞田川の河岸に出る。乞田川に沿って歩いてみるのもいいかもしれない。