横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市中区新港
赤レンガパーク
November 2016
赤レンガパーク
横浜港を臨む横浜市西区新港地区の一角に、昔日の横浜港の面影を残す建物がある。「赤レンガ倉庫」だ。赤レンガ倉庫は、今では横浜の観光名所のひとつとして認知され、常に多くの観光客が訪れて賑わっている。赤レンガ倉庫の周囲は「赤レンガパーク」という名の公園として整備され、臨港公園としての風情も楽しめる。名実共に“港ヨコハマ”を象徴する観光地と言っていい。
赤レンガ倉庫
いわゆる「赤レンガ倉庫」が建てられたのは、明治末期から大正初期にかけての頃のことだ。横浜港の近代港湾設備として1899年(明治32年)に新港埠頭が着工された際、その付属設備として建てられたのだ。設計は当時の大蔵省臨時建築部だが、この時の大蔵省臨時建築部部長が横浜正金銀行(現在の神奈川県立歴史博物館)赤レンガ酒造工場(旧醸造試験所第一工場)の設計などで知られる妻木頼黄(よりなか)である。1911年(明治44年)に二号倉庫が完成、1913年(大正2年)には一号倉庫が完成している。赤レンガ造りの三階建て、150メートルほどの長さの倉庫は当時の最新技術を導入したものだったという。明治期から昭和初期まで横浜税関の施設として使用され、近代港湾としての横浜港を象徴する施設として横浜の生糸貿易を担った。

関東大震災では被害を被り、昭和初期に復旧したが、当初のものより小規模のものになってしまった。戦後は米軍に接収されたが1956年(昭和31年)に接収解除、その後一号倉庫は税関施設、二号倉庫は横浜市の管理のもとに公共上屋として使用されていたが、1970年代に入って新港埠頭の取引量が激減すると倉庫の用途も減っていった。やがて1989年(平成元年)、赤レンガ倉庫はついにその「倉庫」としての役目を終える。

1992年(平成4年)、横浜市が赤レンガ倉庫を取得、歴史的建築物である建物を保存、活用するために改修工事を開始する。構造の補強や屋根・外壁の補修などを経て、現在の赤レンガ倉庫が2002年4月にオープンした。赤レンガ倉庫のオープンに伴って周辺は5.5ヘクタールの面積を持つ赤レンガパークとして整備され、現在に至っている。開放的な空間の中に建つ赤レンガ倉庫の姿も美しく、今や横浜観光の定番の名所のひとつとして広く知られている。
赤レンガ倉庫
二棟が並ぶ赤レンガ倉庫は、東側の小さな方が一号館、西側の大きな方が二号館で、その間の石畳の二棟間広場はさまざまなイベントなどに使用されている。一号館はホールや展示室などを置き、文化施設としての役割を持つ。一階フロアの一角には横浜の老舗なども並ぶ。二号館はレストランや雑貨店などの並ぶ商業施設で、株式会社横浜赤レンガに運営を委ねられている。

多くの観光客を集めるのはやはり二号館だ。訪れた人たちはそれぞれに館内を見て回っているが、ほとんどの人たちはショッピングが目的ではないように見える。「観光」に訪れた人であれば、「赤レンガ倉庫の中を歩いてみる」ということが目的であるかもしれない。館内は決して広くはないが、元々は倉庫として使われていた歴史的建築物の中を歩くというのはなかなか楽しい。

館内の店舗はそれぞれに特色があり、時間に余裕があればそれぞれのお店をゆっくりと見てゆくのも楽しい。お洒落な雑貨店やカフェなどは特に若い女性の人気を集めるものだろう。一階の東側の一角には「ガラスボックス」と名付けられたサンルーム風のカフェのスペースが設けられており、そこから外の景色を眺めながらの食事やひと休みもお薦めだ。

一号館と二号館との間の広場スペースはさまざまなイベント会場になることも多い。と言うより、常に何らかのイベントが開催されているという印象がある。それらのイベントを目当てに訪れる人も少ないないようだし、それと知らずに訪れても何らかのイベントで賑わっている様子は楽しいものだ。
赤レンガ倉庫
もちろん赤レンガ倉庫はその建物自体が歴史的建築物であり、“鑑賞”に値するものだと言っていい。赤レンガの独特の質感が醸し出す存在感は圧倒的で、時の流れを封じ込めたように横たわる様が見事だ。大さん橋から見ると、みなとみらいの高層ビル群を背景にした赤レンガ倉庫は意外なほど小さいのだが、間近に見るその姿はかなり大きく感じる。今では現役を退いた身ではあるが、かつて横浜港の生糸貿易を担った時代を経てきた誇りのようなものを感じさせて、その風格のようなものが実際より余計に大きく見せるのかもしれない。

赤レンガ倉庫を写真に収めようと、カメラを携えて訪れる人の姿も多い。思い思いの場所に三脚を立てて倉庫の姿にレンズを向ける人の姿を多く見かける。写真趣味の人にとっては魅力的な被写体であるのに違いない。場所によっては赤レンガ倉庫の屋根の向こうにランドマークタワーの姿が重なり、新旧の横浜を象徴する風景を捉えることもできる。
赤レンガ倉庫赤レンガ倉庫
赤レンガパークとして整備された敷地は開放感に満ちており、横浜港を臨む海岸部分からは象の鼻防波堤大さん橋が間近に見え、さらに湾の向こうにベイブリッジの姿が見える。海岸に佇み、のんびりと海を眺める人の姿も少なくない。芝生の広場やベンチなどでくつろぐ人も多く、のどかな海辺の公園の風情が漂う。

パークの最も東側の海辺の突端部分あたりから陸側を振り向くと、象の鼻パークの向こうに神奈川県庁のキング、横浜税関のクイーン、横浜市開港記念会館のジャックという「横浜三塔」の姿を一望することができる。かつて横浜港に寄港する船の上から見えるその姿は横浜のシンボルとして親しまれたというが、その想いがほんの少し理解できるような気もする。
赤レンガパーク赤レンガパークから見る横浜三塔
赤レンガ倉庫二号館の西側には旧税関事務所遺構がある。1914年(大正3年)に建設された税関事務所の遺構であるらしい。関東大震災のために焼失し、復旧されることなく埋められていたものが、赤レンガパーク整備の際に発見されたものという。現在は花壇として使用されつつ、遺構として保存されている。旧税関事務所遺構の傍らには旧横浜港駅プラットホームが復元されている。かつて外国航路の客船で賑わった時代を支えたプラットホームだが、今では少し淋しげに公園の片隅に佇んでいる。赤レンガ倉庫の姿や公園内に残された遺構などから、往時の新港埠頭の賑わいを思い浮かべてみるのも一興かもしれない。
旧税関事務所遺構旧横浜港駅プラットホーム
1982年(昭和57年)頃、赤レンガ倉庫を訪ねたことがある。当時の新港地区はすでに埠頭としての役目は第一線を退き、時代に置き去りにされたかのように朽ちてゆく赤レンガ倉庫の姿が哀しげに見えたものだ。2002年(平成14年)10月、現在の姿で再出発したばかりの赤レンガ倉庫にも訪ねてみた。明るく開放的な広場の中に建つ赤レンガ倉庫はずいぶん堂々と立派に見えて、横浜の新しい観光名所の誕生を実感したものだ。

そして今、赤レンガ倉庫はすっかり横浜の観光名所のひとつとして定着した感がある。設計当初とは異なる目的のために改修され、多くの観光客や買い物客を集める赤レンガ倉庫だが、その姿は悠々として泰然としたものさえ感じさせてくれる。日本の発展の一翼を担った施設の、幸福な余生である。
赤レンガ倉庫
赤レンガパークは横浜の湾岸地域、いわゆる“横浜ベイエリア”のほぼ中央に位置していると言っていい。周辺にはさまざまな観光名所や商業施設が多数点在し、散策の足を伸ばして見るのも楽しい。横浜ベイエリアの観光名所を繋いで設定された「開港の道」のルートの一部でもあり、「開港の道」の道を辿っての横浜観光も、特に初めて横浜を訪れる人にはお勧めだろう。パーク内の岸壁には「ピア赤レンガさん橋」も設けられ、各種の観光遊覧船が発着する。それらを利用するのもお勧めだ。
赤レンガパーク