横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市青葉区もえぎ野
もえぎ野公園
April 2004
もえぎ野公園
横浜市青葉区もえぎ野の住宅街に池を抱える公園がある。東急田園都市線の藤が丘駅の北、駅前の道路と旧大山街道との交差点の角に位置している。藤が丘の駅から歩いても七、八分の距離で、そのためか周辺には店舗なども多く並んでいるが、表通りから一歩奧へ入り込むと基本的に閑静な住宅街だ。駅から近く、交通量の多い道路に面しているために公園の存在は広く知られ、地元に暮らす人を中心に利用する人は多い。
もえぎ野公園

もえぎ野公園

もえぎ野公園

もえぎ野公園

もえぎ野公園

もえぎ野公園
もえぎ野公園の最大の特徴はやはりその中央に抱える池の存在だろう。このような住宅地の中の公園の池としては比較的広く、2haほどの面積を有する公園の三分の一ほどを池が占めている。池は公園が整備されたときに造られたものではなく、この付近が住宅地として造成される以前から溜め池として存在していたもののようだ。池の西側の広場の片隅には「紀元二千六百年紀年 溜池復旧工事」の石碑が建ち、池の由来を物語っている。この石碑に記された「紀元」は神武天皇即位紀元のことで、通常の西暦より660年古く、この場合の「紀元2600年」は西暦1940年(昭和15年)に当たる。

この池もおそらく農業用の溜め池だったのだろう。現在では周辺は家々の建ち並ぶ住宅地だが、昔は雑木林の丘陵と谷戸とが入り組む地形だったはずで、その谷戸で人々は稲作を営み、そのための水源としての溜め池だったのに違いない。溜め池は歳月の経過とともに土砂などが流れ込み、浚渫などの必要が出てくる。この「もえぎ野公園」の池の「紀元2600年紀年復旧工事」も、そのような溜め池の復旧工事だったのだろう。現在では住宅地の中の公園の池として残されているわけだが、水辺の植物の茂る岸辺の様子などに、古い時代の面影を探すことも難しいことではない。

その池の岸辺を散策路が巡り、そこを歩けばさまざまに表情を変える池の佇まいを楽しむことができる。見る角度によっては市街地の中の公園ではなく、山深い農村にいるような錯覚さえ感じられる。池は釣りを楽しむこともできるようで、休日などには釣り人で賑わうという。池の傍らには「ルアー釣り、投げ釣りは禁止」の旨の注意書きがあった。西側部分には池を跨いで「橋」が架かっている。「中の橋」との名があるが、しかし「橋」という名が似つかわしくない。池を跨ぐ木道と言うところか。途中で屈曲が与えられた橋は中央辺りに観察デッキも設けられ、間近に池の様子を見ることができる。この橋は中央部分では水面近くまで下がっており、水量が増えれば水中に没してしまいそうだ。そのような様子も、なかなか楽しい。

池の西側には多目的広場が設けられ、トイレも設置されている。池を見下ろすようにベンチが置かれており、そこに腰を下ろして池を眺めていると、のんびりとした気分になって時の経つのを忘れる。広場の背後は林となった丘で、緑濃く落ち着いた佇まいを見せる。池の南側にも丘となって林が残り、そうしたところにも住宅街となる以前の風景の名残を感じるようでもある。西側の林と東側の林に挟まれるようにして岸辺に広場があり、四阿が置かれている。その広場の背後は草はらの斜面で、シートを広げてのんびりとくつろぐのに良いところだ。
もえぎ野公園
公園の周辺は住宅地で、表通りには店舗なども多く賑やかな印象だが、公園の中にいると木々に包まれて町の喧噪からは隔たっているように感じられる。公園内にも樹木は多いが、公園横の道路も街路樹が美しい。そしてまた公園の北に道路を挟んで「もえぎ野ふれあいの樹林」があり、往時の雑木林をそのままに残している。公園内にいるとそうした木々の緑が視界を覆い、その緑が池の水面に映りこみ、住宅地の中であることを忘れさせてくれる。そのような穏やかな空気感が、この公園の最大の魅力だ。遊具類は設置されておらず、子どもたちのための遊び場としては物足りないが、木々や水辺の織りなす風情がそれを補ってくれるだろう。

駐車場はなく、遠方から訪れるには少々不便だが、藤が丘の駅からそれほど遠くはない。藤が丘駅からもえぎ野公園にかけての地域にはお洒落なお店なども多く、有名な飲食店なども軒を並べる。藤が丘駅からもえぎ野公園にかけて、街の散策を中心にして訪れてみるのがお勧めかもしれない。北側に隣接する「もえぎ野ふれあいの樹林」にも足を延ばしたい。「このあたりにこんな場所が残っているのか」と驚きを感じるかもしれない。また、もえぎ野公園は春の桜も美しく、お花見の名所としても知られている。桜の花の時期から新緑の季節にかけて、のんびりと周辺の散策を楽しみながら訪れてみるのがお勧めだ。
もえぎ野公園