横浜線沿線散歩街角散歩
町田市相原町〜八王子市寺田町〜椚田町
秋の寺田町
November 2005
現況と異なる内容を含んでいます
寺田町
八王子市の南部、町田市に接して寺田町という地区がある。中央部を「めじろ台グリーンヒル通り」が抜け、その周囲に団地が広がっている。「めじろ台グリーンヒル通り」は、その名が示すようにめじろ台から南下してきた道路で、町田市との市境を越えて町田街道に繋いでいる。その市境付近に、法政大学がある。秋のよく晴れた日、学生たちに混じってバスで法政大学の入口まで行き、そこから北へ、寺田町を歩いた。
法政大学バス停のケヤキ
法政大学前のバス停はロータリーになっており、八王子駅や相原駅、相模原駅などからバスの便が学生たちを運んでくる。学生たちに混じって、法政大学前でバスを降りた。すでに11月、バス停のケヤキが紅葉に染まり、蒼く澄んだ秋空を背景にした姿が美しい。バス停から「めじろ台グリーンヒル通り」へと出る。「めじろ台グリーンヒル通り」という呼称は八王子市域だけのもので、町田市側ではこの呼称は用いないようだが、その延長ということで便宜的にそう呼んでおこう。片側二車線の道路は法政大学前から南へ緩やかな下り坂になって町田街道との「法政大学入口」交差点へ至っている。この区間は桜並木で、春はたいへんに美しい姿になり、町田市の桜の名所のひとつとして知られているが、すでにすっかり落葉してしまっている。
めじろ台グリーンヒル通り
法政大学前から北へ向かうと、頭上を二本の橋が跨いでいる。南側の橋には学生たちの行き交う姿が見える。北側の橋は法政大学の敷地内を通る道路で、この橋の下あたりがちょうど市境の尾根になっており、ここから北は八王子市になる。八王子市に入ると「めじろ台グリーンヒル通り」はケヤキの並木だ。紅葉した並木が美しい。緩やかな下り坂を降りて行くと、道路は少し右手(東)へ曲がってゆく。道路の周辺はのどかな農村の風景を残している。木々を背負った農家の佇まいや、道路脇に広がる畑地の表情を眺めながら歩く。「めじろ台グリーンヒル通り」は車両の通行が多く、散策を楽しむには少々うるさいのが難点だ。

ゆりのき通り
やがて「寺田町西」交差点だ。東へ曲がる「めじろ台グリーンヒル通り」から北へ「ゆりのき通り」が延びる。「ゆりのき通り」は「ゆりのき台」の住宅地を貫いて北へ辿り、北野街道へと繋いでいる。「ゆりのき通り」はその名が示すようにユリノキの並木で、秋の色に染まり始めている。交差点は「めじろ台グリーンヒル通り」と「ゆりのき通り」との丁字路を成しているが、もう一本、北東側から旧道らしい道も交わり、少々変則的な形をしている。「めじろ台グリーンヒル通り」が造られる以前は、こちらの道路が寺田町を抜けて南北を繋いでいたのだろう。道路脇には家々や田畑が並び、昔から人々の暮らしがあったことをうかがわせる佇まいだ。

稲荷山公園
その旧道と「めじろ台グリーンヒル通り」に挟まれた交差点の角に「稲荷山公園」という小公園がある。公園は交差点側から見ると道路から一段高くなった小さな丘の上にあり、交差点角から散策路が登っている。公園は小さな規模だが、木々に包まれるようにしてブランコや滑り台などの遊具が置かれ、北側は円形の広場になっている。公園には樹木が茂り、円形の広場も木々に囲まれている。それらの木々が紅葉に染まり、秋空の青に映える。またこの円形の広場の外縁部には桜も並んでおり、春の花期には丘全体が桜に包まれたような美しい景観を見せる。
牛
稲荷山公園を後にして、「旧道」を北へ辿ろう。歩道も設置されていない道だが、それほど歩きにくいわけではない。寺田町を抜けて南北を行き来する車はほぼすべて「めじろ台グリーンヒル通り」を通るために、こちらの「旧道」は地元に暮らす人たちの車が利用するだけらしく、車両の通行量がとても少ないのだ。「鍛冶谷戸」バス停を過ぎ、大恩寺前を過ぎてしばらく進むと、牛に出会った。道脇の農家で乳牛を飼っているようだ。道の両脇に牛舎が並び、何頭もの牛が飼育されている。道の東側の牛舎は屋根と柵を設けただけの簡素なもので、すぐ近くに牛の姿を見ることができる。手を伸ばせば触れるほどの距離だが、やはり不用意に触るのは遠慮しておこう。牛は好奇心旺盛な動物なのか、通りかかると近寄って見つめられる。その表情がなかなか可愛らしい。

水田
牛たちに見送られてさらに北へ辿る。「めじろ台グリーンヒル通り」はすっかり離れ、東側の丘の上を通っている。「めじろ台グリーンヒル通り」の周囲にはその名の由来となった「グリーンヒル寺田」の住宅地が広がっている。こちらの道路の周囲には昔からの農家と真新しい住宅とが混在している。東側へ入り込む横道に、誘われるようにして歩を進めた。寺田川を渡る。周辺には刈り取りを終えた水田も残り、そのすぐ脇にはアパートが建っていたりする。丘へ登る小径を辿って行けば、今では「グリーンヒル寺田」の住宅街に抜け出てしまうが、昔は木々の茂る里山が広がっていたのだろう。丘の麓を辿る小径の佇まいに、古い時代の名残が感じられる。

寺田緑地
寺田川に沿って小径があった。辿って行くとそのまま「寺田緑地」の中を辿る散策路へと繋がっている。緑地の木々はすでに落葉しているものも多く、林の中は日差しが入り込んで明るい。この緑地は桜の林で、桜の花期には斜面全体が桜に染まって壮観な眺めになる。左手に寺田川を見下ろしながら進むと、小径はやがて鬱蒼と木々の茂る中を抜け、広場に出た。「寺田緑地」に隣接して「ねの沢公園」という小公園があり、その公園の広場へと出たのだ。公園は「めじろ台グリーンヒル通り」沿いに位置しており、すぐ横が「緑ヶ丘小学校入口」交差点だ。「ねの沢公園」は広場があるだけの小公園だが、「めじろ台グリーンヒル通り」沿いにあり、トイレも設置されているため、横道に車を停めて休憩する人の姿がある。

榛名神社
「ねの沢公園」から横の道を再び西へ降りてゆこう。寺田川を渡り、住宅の並ぶ中を抜けると「旧道」へ戻れる。その辺りに「榛名神社」という神社がある。境内には特に由緒などを記したものは置かれていないようだが、その名が示すように群馬県の榛名神社を勧請したもののようだ。寺田町は江戸期には寺田村と呼ばれたところで、後に横山村大字寺田、さらに八王子市寺田町となった。榛名神社は寺田村の鎮守であったのだろう。道路に面して鳥居が建ち、鳥居をくぐると西の斜面を石段が登っている。上ってゆくと丘の上に社殿と神楽殿があり、背後には林が広がっている。

榛名神社
神社の脇には広場があり、滑り台やブランコなどの遊具が置かれ、「榛名公園」という公園となっている。広場下には「八王子市榛名公園会館」という建物もあり、神社の一帯は地域のコミュニティスペースとして機能しているのだろう。昔は神社や寺の境内で子どもたちは遊んだものだ。山と田畑の中に家々が点在する農村の暮らしで、子どもたちが集まるのはこうした神社の境内だった。「榛名公園」はそうした時代の匂いを濃厚に感じさせる。木々に囲まれた広場に立ち、堂々とした巨木を見上げながら風のそよぎに耳をすませれば、地元の氏神様を祀った神社の境内で仲間たちと遊んだ子どもの頃の日々が、ふと思い出されるようでもある。
湯殿川
榛名神社前から北へ辿ろう。しばらく歩くと「旧道」は「めじろ台グリーンヒル通り」へと合流する。「旧道」と「めじろ台グリーンヒル通り」との交差点のすぐ北側には「寺田町東」交差点がある。大船町を経て東京家政学院方面へと辿る道路との交差点だ。「寺田町東」交差点から北へ少し行けば湯殿川だ。湯殿川が町の境で、湯殿川の北は椚田町になる。江戸時代の寺田村も湯殿川までの範囲であったらしい。湯殿川を渡って北へ進むと「山王坂」交差点、「めじろ台グリーンヒル通り」に北野街道が交差する。北野街道の北側には小さな崖が連なり、湯殿川河岸から一段高くなった台地を成している。坂道を上って右手に入り込むと椚田運動場がある。椚田運動場の南端からは湯殿川河畔を一望でき、なかなか爽快な眺めだ。また「めじろ台グリーンヒル通り」の西側には椚田遺跡公園がある。縄文期の住居跡を整備して公園としたものという。「めじろ台グリーンヒル通り」をさらに北進すれば「椚田遺跡公園通り」との交差点を経てめじろ台だ。京王線めじろ台駅も近い。
寺田町寺田町

寺田町寺田町
かつての寺田村はのどかな農村で、丘に挟まれた寺田川流域のわずかな平地に人々が暮らす土地柄であったようだ。現在では東の丘陵には「グリーンヒル寺田」が、西の丘陵には「ゆりのき台」の住宅地が広がり、時代とともに周辺の環境は大きく変わってきているが、寺田川に沿った地域には古い時代を彷彿とさせる風景も残っている。そうした風景を探しながらの散策が楽しい。稲荷山公園や寺田緑地は春の桜も美しい。次の機会には桜の季節を選ぼう。
追記 「めじろ台グリーンヒル通り」から町田街道まで延びる町田市側の道路には「法政通り」の名があるようだ。2005年秋に歩いたときには通りの名を記した標識は無かったように思う。その後に設置されたものだろう。「法政通り」という名自体も2005年秋以降に定められたものかもしれない。
寺田町