横浜線沿線散歩街角散歩
八王子市子安町〜台町
南大通りから富士森の丘
April 2002
現況と異なる内容を含んでいます
上野町の八重桜並木
八王子駅を南口に出ると「南大通り(みなみおおどおり)」という通りが東西に延びている。交通量は多いが街路樹のイチョウやハナミズキが美しい。八王子市民会館近くの上野町では八重桜の並木道と交差する。新緑の美しい季節、この通りを辿って富士森公園へと歩いてみた。
八王子駅の南口は、北口の繁華街とは違ってのんびりとしていて、どこか地方の町の駅前のような風情が漂っている。再開発の計画もあるのだろうと思うが、あまり高いビルなどが林立するよりは、今のままの町並みの方が魅力的であるような気もする。

興林寺
バスターミナルを兼ねた駅前ロータリーの横を抜けると南大通りだ。すぐ右手(西)には「八王子駅南口」交差点があり、「とちのき通り」が南へ延びている。南大通りはイチョウ並木で、枝は短く剪定されていてそれほど美しい景観ではないが、この季節には新緑が芽吹いて鮮やかだ。レンガ敷き風に仕立てられた歩道を西へ辿ると、通りから北へ少し入り込んだところに興林寺がある。興林寺には八王子市指定の有形民俗文化財の「弘安の板碑」がある。1283年(弘安6年)に建立された板碑であるという。興林寺の東側には税務署があり、税務署前の道路が中央線の線路を跨いで南大通りと三崎町界隈とを繋いでいる。

ハナミズキ並木の南大通り
駅の南口付近は子安町だが、税務署を過ぎると万町(よろずちょう)になる。税務署入口を過ぎるとすぐに国道16号との交差点だ。交差点を過ぎると、南大通りはハナミズキの並木に変わる。視線を歩道の先に向けると赤や白のハナミズキの花が重なるように見える景観が陽射しに映えて美しい。今年はあらゆる花々の開花が早いようで、ハナミズキもすでに花の盛りを過ぎているように思われた。

いちょう公園
第三小学校を右に見ながら進むと、小学校の脇に「いちょう公園」という小さな公園がある。広場があるだけの町中の小公園だが、その名が示すように広場の中央付近にイチョウの大木があり、青々と若葉を茂らせて聳えている。このイチョウが黄葉に染まる頃の景観は見事だ。いちょう公園を過ぎて、本立寺の横に差し掛かると上野町になり、さらに進むと「市民会館入口」の交差点に至る。交差する通りは八重桜の並木が美しい。
金剛院の藤
天満神社
「市民会館入口」の交差点から八重桜の美しい通りを北へ辿ると、通りの西側に金剛院がある。広々とした境内に木々の緑が美しい。境内の隅で藤が咲いている。金剛院は「八王子八福神」のうちの福禄寿と寿老人を祀る寺でもある。金剛院と道路を挟んで交差点の角には天満神社がある。金剛院の開山である真清師による建立という。社殿は戦災で焼け、現在のものは1956年(昭和31年)の再建という。

時の鐘
天満神社と並んで念仏院があり、敷地に大きな台座に乗った鐘楼がある。「時の鐘」として市指定有形文化財になっているものだ。傍らに設置された解説板によれば、「1699年(元禄12年)に八日市名主新野与五右衛門を大旦那として近郷村々の協力によって鋳造された」ものであるらしい。鐘楼はやはり戦災で焼け、戦後の再建らしいが、梵鐘そのものは戦時の「金属回収令」の際にも供出を免れたのだという。解説板によれば「270余年の間八王子十五宿の人々に時を告げ」たとのことだから、単純に考えても1970年頃まで、鐘が近隣に響いていたということになる。鐘が鳴ったのは明け六つ(午前6時)と暮れ六つ(午後6時)の二回、現在はその音が響くことはないが、今でも鐘の音色を憶えている人は多い。

ハナミズキ並木の歩道
金剛院の北側は間近に中央線の線路が走っている。踏切を渡ると、右手は天神町、左手は小門町だ。道路脇の歩道はハナミズキの並木になって続く。道はやがて甲州街道と交差し、その後は国道16号となって北へと続いている。甲州街道に沿って商店街の店先などを眺めながらの散策も楽しいものだが、それはまた次の機会だ。
「市民会館入口」交差点から南へ辿ると、八重桜並木の坂道の表情が美しい。八重桜もやはり花を楽しむには時期を少し過ぎて、すでに葉が茂っているのが少し残念だ。道は徐々に緩やかな上り坂になり、Y字型に分かれている。分岐したうちの右手(西)の道路にも八重桜並木はあるが片側だけで、散策を楽しむのなら左(東)へ逸れる道を辿るのがいい。
上野町の八重桜並木

Y字に分岐する交差点の左手(東)の道路横には上野町公園という小さな公園があり、広場の遊具で子どもたちが遊んでいる。公園の南側部分には小規模ながら木立の茂る一角があり、イチョウや桜などがそれぞれの季節に美しい姿を見せるが、今は新緑が陽射しに輝いている。その若葉の緑を背景に、歩道の八重桜が映える。上野町公園の横辺り、緩やかに曲がった坂道の風情が八重桜の並木をいっそう美しく見せてくれるようでもある。そのあたりに立って北方を見ると、ちょうど下り坂となった並木道を見下ろす感じになり、八重桜並木の織りなす景観が美しい。
上野町の八重桜並木

坂道を上りきると、実践高校前の交差点で並木は終わっている。交差する道路は国道16号の「万町」交差点から「みよし坂」を上がって西へ辿る「富士森公園通り」で、この道路を西に向かうとその名が示すように富士森公園の北側に至る。「富士森公園前」の交差点から南を見ると、富士森公園の木々がこんもりと見える。富士森公園の位置するのは「台町」という町だ。昔は小高い丘のような場所を「台」と呼んだらしいが、この辺りは昔は「富士森の丘」と呼ばれた木々の茂った丘陵であったという。今でも「市民体育館」交差点の周辺はこの近辺では高所にあたり、交差点から山田方面へ降りる坂道から南西の方角へ、冬の晴れた日などには富士山の姿を見ることができる。
八王子市郷土資料館
「市民会館入口」交差点からさらに南大通りを東へ辿れば、左手(南)に八王子市民会館、右手(北)には八王子市郷土資料館が建っている。八王子市郷土資料館はその名が示すように八王子の歴史資料を各種展示している。それほど大規模なものではないが、先史時代の土器などから八王子千人同心関連資料など、さらに八王子織物といった近代に及ぶ資料はやはり見応えがある。事務所では展示物に関する解説書や市内の史跡などを巡る散策のモデルコースを案内したガイドブックなども販売しており、興味のある人は買い求めてみるのもよいだろう。

市民会館と郷土資料館との間を過ぎてさらに行くと、八王子市立第七小学校の傍らを抜けてやがて「松姫通り」との交差点に至る。このあたりは昔は細い路地が抜けるだけの住宅街だったのだが、近年区画整理が行われ、広い「南大通り」がそのまま続くようになった。松姫通りとの交差点の角には信松院が建っている。信松院は武田信玄の四女であった松姫が開基で、墓所には松姫の墓がある。「松姫通り」の名もこれに因んだものだろう。松姫通りを南へ坂を登ると富士森公園の西側へ至る。
富士森公園は花見で賑わう時期を過ぎて、新緑の中に静かな佇まいを取り戻している。今年(2002年)はあらゆる花々の開花が早いらしく、四月の中旬だというのに慰霊塔前のパーゴラでは藤の花が盛りを迎えている。体育館横のツツジもすでに咲き始めているようだった。木々の多い公園内は若葉の緑が陽射しを受けて瑞々しく、木漏れ日の中の散策が楽しい。
富士森公園

富士森公園から南へ、「富士森の丘」を越えて山田町方面へと降りると広園寺が近い。「広園寺」は「こうおんじ」と読む。「こうえんじ」ではない。広園寺から南へ少し行けば京王線の山田駅が近く、ここから帰路を辿ってもよいが、さらに小比企町方面やめじろ台方面へと足を延ばすのもいい。
「市民体育館」交差点の角の歩道には「関東武者ゆかりの地」を訪ねるという趣旨の散策コースを示す案内の石柱が立っており、近辺の地図にコースが記してある。この案内の石柱は他にも広園寺前や上野町の歩道、八王子駅に近い南大通りの歩道など、随所に設置されて、散策の人を導いている。このコースに沿って散策を楽しんでみるのも一興かもしれない。
追記 八王子駅南口は2007年11月下旬から2010年12月初めにかけて再開発工事が行われた。駅前にはペデストリアンデッキが設けられ、その横には高層のビル「サザンスカイタワー八王子」が建ち、整然として現代的な風景に一変している。その「サザンスカイタワー八王子」の4階に「オリンパスホール」と名付けられた新市民会館が2011年4月にオープン、上野町にあった旧市民会館は2011年3月で閉館となっている。「市民会館入口」交差点も“市民会館入口”ではなくなり、その名標も撤去された。
「市民会館入口」交差点から見る南大通り