その磯辺を間近に見下ろすことのできる展望所も設けられている。眼下の磯辺には無数の柱を束ねて立てたような、特徴的な岩場の景観を見ることができる。これは古い時代に溶岩の冷却によって形成された「柱状節理」というもので、爪木崎の柱状節理は静岡県の天然記念物に指定されている。
散策路脇には静岡県教育委員会の名で解説パネルが設置されている。それによれば、爪木崎の柱状節理は約五百万年前に安山岩質溶岩の冷却によって生じたものという。その形状から、地元では「俵磯」と呼ばれているそうだ。江戸時代には建設用材として切り出され、「俵石」の名で好評を博したそうである。柱状節理そのものは、“とても珍しい”というものではないが、爪木崎のものは眼下に一望できるうえに近づいて観察することができる点で価値の高いものだという。散策路脇には柱状節理が形成されるメカニズムを簡単に解説したパネルも設置されている。興味を覚えた人はその解説にも目を通しておくことをお勧めする。
尾根の展望所から見る「俵磯」は少し遠く、細部まで見ることが難しいが、双眼鏡や望遠レンズを装着したカメラがあれば、より大きく見ることができるだろう。もっとしっかり観察したい人は磯辺の遊歩道に降りてみるといい。こうしたものに興味のある人にはもちろん、そうでない人でも一度は見ておきたい景観である。