東京都府中市の府中の森公園は木々が茂って緑濃く、人気のある公園だ。園内には随所にモミジの木があり、晩秋になると美しい紅葉に染まって園内を彩る。紅葉が見頃の十二月初旬、府中の森公園を訪ねた。
東京都府中市の都立府中の森公園は大きな広場や樹林地などから構成された公園で、季節を問わず大勢の来園者で賑わっている。各種遊具類も充実し、子どもたちの遊び場としても人気を集めている。園内にはさまざまな樹木が茂っているが、随所にモミジの木があり、晩秋になれば見事な紅葉に染まって園内を彩ってくれる。
府中の森公園の南東側の角、公園南口から入ったところには日本庭園が設けられている。園路を挟んで二つの池を配し、池の岸辺に四阿を設け、日本庭園として設えられたエリアだ。この日本庭園の紅葉が素晴らしい。園路の両脇にモミジの木が大きく枝を張り、その間を抜ける園路はモミジのトンネルのようになって紅葉の染まった光に包まれる。見事な紅葉だ。
モミジの紅葉は順光を浴びる様子より逆光や逆光気味の斜光の中に浮かぶ姿が美しいから、園路北側の池の岸辺から園路側を見る景観もお勧めだ。園路脇に並ぶモミジが日の光を弾いて赤く輝き、空の青とのコントラストも美しい。ほんの少し場所を変えるだけで日差しの向きが変わり、紅葉の表情も変わる。さまざまな表情の紅葉を楽しんでおきたい。
園路南側の池の北側の岸辺、すなわち園路側に沿って小径が辿っている。小径の端には露地門を模した木造りの門も設けられて日本庭園の風情を漂わせている。この小径から見る紅葉も素晴らしい。見事な枝振りのモミジが小径脇で紅葉を誇っている。小径の風情と相まって風趣に富む景観だ。時刻によって美しく見える方向も変わるだろう。それも楽しい。
日本庭園の西側には公園の南西側部分を占めて「武蔵野の森」と名付けられた樹林地がある。その名のように昔ながらの武蔵野の樹林を残し、復元したものだろう。樹林地にはさまざまな樹木が茂っているが、随所にモミジの木もあり、晩秋になると紅葉に染まってひときわ存在感を放っている。
モミジの木は樹林地の中のところどころにポツリポツリと立っていて、“モミジ林”のようなものはない。しかしそれがかえって興趣に富んでいる。晩秋になって落葉が進んだ樹林の中に、紅葉のモミジが日の光を浴びて浮かび上がる。たいへんに美しい。素敵な構図を探してカメラを向けるひとときも楽しい。
樹林地の地面はコナラなどの落葉樹の落ち葉で覆われている。これも晩秋の風情だろう。落ち葉を踏みしめながら歩くのも楽しい。
公園のほぼ中央、駐車場横には石垣と壁泉を施した池が設けられている。この池の南側の岸辺にモミジの木が並んでいる。日陰になった池の岸辺で、モミジが日の光を浴びる景観がなかなか美しい。池越しに見る景観だが、石垣や壁泉との組み合わせが興趣に富んだ景観を見せてくれる。
石垣と壁泉のある池の南側、園路脇にモミジの木が集まった場所がある。林の中に入って上を見上げればモミジとコナラなどの落葉樹との競演が美しく、空の青との対比も素晴らしい。場所をうまく選べば紅葉越しに公園中央を貫く「花のプロムナード」を行き交う人たちや「花の広場」のモニュメント噴水を見る構図で写真を撮ることもできる。いろいろと構図を工夫してカメラを構えるのも楽しいひとときだ。
石垣と壁泉のある池の北側にはサービスセンターと売店がある。この売店の北側に、印象的に立つ樹木がある。すっかり葉を落としたコブシの横で、こんもりと球状に茂らせた葉を黄金色に染めて輝いている。コナラのようだ。ケヤキやコナラ、クヌギなどの落葉樹は紅葉の美しさが語られることが少ないが、日差しの向きによってはモミジやイチョウに負けない美しい姿を見せることがある。このコナラも見事な景観だ。
公園の中央部西側、「大きな広場」と名付けられた広場がある。中央部はこんもりと小高い丘のように造られており、開放感の素晴らしい広場だ。この季節にも広場には公園でのひとときを楽しむ家族連れの姿がある。その向こうに秋の色に染まった木々が見える。晩秋の公園の、素敵な風景だ。
「大きな広場」の北側は「遊具広場」だ。大型の複合遊具や小さな子どもたち向けの遊具などが設けられた広場だ。遊具類はかなり充実していると言ってよく、家族連れに人気のエリアだ。「遊具広場」には樹木は少ないが、脇の方に一本だけモミジが立っている。遊具で遊ぶ子どもたちとモミジの組み合わせも楽しい景観だ。
「遊具広場」の東側、「花のプロムナード」を挟んでテニスコートがある。このテニスコートの東側にもモミジが植えられた一角がある。モミジだけでなく、コナラなども混じった林になっていて、それらの木々の紅葉が美しい景観を見せる。紅葉の木々の向こうにテニスコートを囲むフェンスが見えるのも、それはそれで一つの興趣か。この一角にはあまり訪れる人はいないようだが、紅葉の景色を求めての散策なら足を延ばしてみてもいい。
公園の北端部、「花のプロムナード」の北端部に公園の北側の入口が設けられている。実はここが府中の森公園の“正門”であるようだ。その“正門”の東側には壁泉を設けた池がある。この池の東側の岸辺にもさまざまな木々に混じってモミジの姿がある。モミジの赤、ケヤキの赤褐色、常緑樹の緑が混じり合い、壁泉の景観とともに風趣に富んだ景色を織り成している。この景色も見ておきたい。
府中の森公園は園内にさまざまな木々が植えられ、随所で美しい紅葉の景色が楽しめる公園だ。“紅葉の名所”と呼ぶべきではないかもしれないが、紅葉の景観を求めて訪れても決して後悔しない。美しい紅葉の景観を探しながらのんびりと園内を巡ってみるのがお勧めだ。訪れるタイミングや時刻によって、紅葉の景色はさまざまな表情を見せてくれる。何度も訪れてみたくなる、晩秋の府中の森公園である。
本欄の内容は府中の森公園関連ページ共通、2023年12月現在の状況です
電車での来訪であれば京王線東府中駅が近く、駅から北方へ10分ほど歩けば公園に着く。JR中央線を使う場合は武蔵小金井駅からバス路線を利用しなくてはならない。
車で訪れる場合は国道20号の「東府中」交差点や「緑町二丁目」交差点から北へ入り込むのがわかりやすいだろう。遠方の人は中央自動車道の国立府中ICから国道20号を東進、あるいは調布ICから国道20号を西進すればいい。
駐車場は有料で100台分を越えるスペースが用意されているが、お花見の時期や行楽シーズンの休日には足りなくなりそうだ。駐車場入口は公園東側の「平和通り」に設けられている。
公園中央部、駐車場横のサービスセンター脇に売店があり、カレーや牛丼、ラーメン、焼きそば、うどん、エビピラフ、おでんなどといった軽食とドリンク類を販売しているので、簡単な食事には困らない。また公園北端部に建つ府中市美術館にもカフェが併設され、軽食やデザート類、ドリンクなどを扱っている。テラス席もあり、公園の木々を眺めながらのんびりと食事をすることもできる。公園南側に隣接する府中の森芸術劇場の中にもレストランがあるから、これを利用するのもいい。
木々の茂った公園だから、お弁当を持参して木陰にシートを広げてのランチタイムもお勧めだ。公園周辺は住宅街で、コンビニなども駅近くへ行かないとないようだ。お弁当やおにぎりを買って公園へ来ようというときには、途中で立ち寄っておいた方がいい。
公園の南側には府中の森芸術劇場が隣接し、北には府中市美術館が建っている。例えば芸術劇場での音楽や舞台の観賞のついでに時間に余裕を持って訪れ、美術館や公園内の彫刻作品を観賞しながらの散策を楽しむというのもなかなか素敵な時間の過ごし方であるかもしれない。
また公園北側から東へ辿れば新小金井街道の東側に浅間山公園がある。浅間山公園も東京都立の公園で、浅間神社の鎮座する丘を中心にした自然溢れる公園だ。併せて訪ねてみるといい。
府中の森公園(東京都公園協会)
府中市美術館
府中の森芸術劇場
府中の森公園
早春の府中の森公園
桜咲く府中の森公園
浅間山公園