大堂津の町を抜けた後に海岸を離れ、日南線は西へ、内陸部へと辿り、
南郷駅、
榎原駅を経由した後に市境を越えて日南市から串間市へと入ってゆく。国道222号と寄り添うように山間部を抜け、緩やかに南へと向かい、
日向大束駅、
日向北方駅と経由し、串間市の市街地へ入り、串間駅に到着する。
串間駅はその名に市の名を冠する通り、市街地のほぼ中心に位置し、駅の周辺は繁華な佇まいを見せる。駅前の交差点では国道222号と都井方面へと延びる国道448号、西の山間部へと延びる県道112号が交わっている。交差点の斜向かいには「道の駅くしま」が設けられている。
串間駅は2023年(令和5年)3月末にリニューアルされ、小さいながらも現代的なすっきりとしたデザインの駅舎に建て替えられている。施設の老朽化に伴うリニューアルだったようだが、交差点斜向かいに「道の駅くしま」がオープンしたことに合わせてのリニューアルの意味も大きかったのだろう。駅は簡易委託駅で、串間市観光物産協会が切符の販売業務を請け負っている。
改札からホームへと向かう通路の頭上には「いってらっしゃい」と書かれたパネルが掲げられている。パネルには「楽しい想い出をおつくりください」といった文言と共に市の木であるソテツと市の花のソテツのイラストが描かれている。このパネル、ホーム側から、すなわち列車から降りて改札に向かう方向で見ると「ようこそ おかえりなさい 串間市へ」と書かれており、都井岬の野生馬と幸島の猿のイラストが描かれている。
改札を抜けると片側使用のホームがあり、横の線路に上り下りの列車が発着する。ホームはずいぶんと広いが、かつては島式のホームで、ホームと駅舎との間にも線路があったらしい。その線路が撤去され、現在の形になったもののようだ。
串間駅は1935年(昭和10年)に福島仲町駅として開業した。当時の志布志線が志布志〜榎原間(後の日南線の一部)に延伸開業した際に設けられた駅だ。串間駅に改称されたのは1959年(昭和34年)のことだ。2007年(平成19年)2月から2023年(令和5年)3月まで、駅舎は「くしま駅の駅」と名付けられて農林水産物直売店としても使われていた。
串間駅を過ぎると、日南線は緩やかに西向きに進路を変えて志布志へ向かう。次の駅は
福島今町駅だ。福島今町駅からは志布志湾岸を西へ向かい、やがて車窓からは志布志湾の景色が望めるようになる。