多摩市南野の一本杉公園は野球場やテニスコートなどを設けた公園だが、昔ながらの里山風景も残り、古民家もあり、散策の楽しい公園だ。園内には数多くの木々が茂り、秋には美しい紅葉が楽しめる。晩秋の散策を楽しむにもお勧めの公園だ。

晩秋の一本杉公園でまず見ておきたいのは「流れ」の周辺のモミジだ。野球場の南東側、駐車場の脇に設けられた「流れ」は、夏には子どもたちの水遊びの場所となるところだが、秋になれば水は流されていない。その「流れ」の奥（東側）がモミジの林になっていて、晩秋になれば美しい紅葉に染まる。

駐車場側から眺めると順光の方向になってしまうためにその色合いは少々赤くくすんだ感じを受けてしまうが、奥へと回り込んで「流れ」の施設の上流部分あたりから見ると逆光に映えて美しい色を見せてくれる。

「流れ」の施設は夏以外の季節には水は無く、この時期には中を歩くこともできる。足下を確かめつつ降りてみれば、美しい紅葉を間近に見ることができて楽しい。林の中に足を踏み入れて頭上に覆い被さる紅葉を眺めるのもいい。あちこち場所を変えながら、素敵な構図を見つけてカメラを構えるのも楽しいひとときだ。

「流れ」の施設の付近、駐車場の脇の辺りは他にもモミジが多く、園路の脇などでも美しく染まった景観を楽しむことができる。

公園の北端部、「石の広場」脇でもモミジを見つけることができる。日当たりのせいか、こちらのモミジは紅葉の進み方が遅いようだが、真っ赤に染まったモミジとオレンジ色のモミジ、まだ緑色のモミジが美しい色彩のコントラストを見せる。東側の広い園路から見上げるのもいいし、斜面の端を辿る園路から目の高さで眺めるのもいい。

「石の広場」の周辺にはケヤキなどの落葉樹も多く、それらの樹木が見せる紅葉も美しい。秋の青空を背景に、日を浴びる黄葉を見上げれば驚くほどの美しさを見せてくれる。

公園の南側に設けられた池の辺にも数は少ないながらモミジの木があって、散策の目を楽しませてくれる。モミジの木は古民家脇の日当たりの良くない場所にあるため、日差しを浴びて輝くような光景を見るのは難しいが、木漏れ日を浴びてところどころ浮かび上がるように輝くモミジが風趣に富んでいる。

池の北側、園路がせせらぎを跨ぐ辺りにも小さなモミジがある。せせらぎには飛び石が置かれていて、興趣に富んだ景観を織りなしている。なかなか素敵な景観だ。

晩秋の一本杉公園は木立の多い公園らしく秋の色に染まった風情が良く、散策は楽しい。紅葉の見事さが語られることの少ない公園だが、「流れ」の周辺のモミジは紅葉の景観を目当てに訪れても後悔しない見事さだ。晩秋の休日、季節の魅力を味わいながらの散策に好適な公園だと言っていい。