横浜市中区山手町
−港の見える丘公園−
薔薇の咲く港の見える丘公園
Visited in May 2018
横浜山手の
港の見える丘公園はバラの名所として名高い。もともと横浜の観光名所のひとつとして季節を問わず来園者の多い公園だが、バラが見頃を迎える五月中旬から六月初旬にかけてはいっそう多くの来園者を迎えて賑わう。園内に植えられたバラは約330種、2200株、名実共に横浜随一のバラの名所である。
バラは横浜市の「市の花」である。1989年(平成元年)9月、市政100周年、開港130周年を記念してバラが横浜市の花として制定されている。市民投票で最も人気が高かったのがバラだったのだという。その制定記念として1991年(平成3年)5月に
港の見える丘公園内にバラ園がオープン、約110種、1300株ものバラが咲き誇って公園を彩ってきた。そもそも西洋バラの多くは横浜開港期に横浜から日本に上陸したものらしく、このバラ園開園時にも初めて日本に紹介された品種があったのだという。
その既設のバラ園を併合して公園を拡張し、新たに「ローズガーデン」がオープンしたのは1999年(平成11年)3月31日のことだ。かつて
イギリス軍の兵舎があった場所を活用、2ヘクタール近くの面積を有する「ローズガーデン」が整備されて観賞できるバラは1800株を数えた。
2016年(平成28年)4月、園内で行われていた緑化工事が終了し、港の見える丘公園内のバラ園もリニューアルオープンした。これまでバラ園の中心部分だった
横浜市イギリス館の前は「イングリッシュローズの庭」、横浜市イギリス館後庭から
山手111番館後庭にかけてのカスケードやガゼボを配した部分は「バラとカスケードの庭」、大佛次郎記念館前の沈床花壇は「香りの庭」と、それぞれ名付けられて、これらの三つの区画が港の見える丘公園のバラ園を構成する。これによって港の見える丘公園のバラ園はさらに規模が拡大され、植栽されたバラの数も増え、より充実したものになった。
港の見える丘公園のバラ園のメインとなるのが
横浜市イギリス館の前に設けられた「イングリッシュローズの庭」である。約150種、1100株のバラが植えられているという。緩やかな曲線を描いて園路が辿る庭園は、まさにイングリッシュガーデンの趣だ。横浜市イギリス館の建物を背景に見る風景は異国情緒と漂わせてたいへんに美しい。
バラはイギリスの国花、さまざまな品種のイングリッシュローズがイングリッシュガーデンとして作庭された庭園を彩り、気分は英国である。それぞれのバラを間近に愛でながら、あるいは庭園の美しい景観を楽しみながらの散策は楽しい。のんびりと時間をかけて観賞したいローズガーデンである。
庭園の隅に儲けられたガゼボ(西洋風四阿)は以前からあったものだが、今回のリニューアルに併せて化粧直しされており、なかなか洒落た意匠でフォトジェニック、記念撮影をするには絶好の場所だと言っていい。
「イングリッシュローズの庭」にはバラだけでなく、さまざまな一年草と宿根草とを混植して季節を問わず花が楽しめる庭園として整備されている。そうしたところも、まさにイングリッシュガーデンとしての在り方だろう。しかしやはり最も美しい景観を見せてくれるのは庭園にバラが咲き誇る季節だ。見事なバラ園である。
「イングリッシュローズの庭」の東側(海側)、大佛次郎記念館前に設けられた沈床花壇は、以前から四季折々の花々を楽しめる花壇として親しまれていたが、2016年(平成28年)のリニューアルによって「香りの庭」と名付けられて
港の見える丘公園のバラ園のひとつを担うことになった。
沈床花壇は中央部に噴水を置き、シンメトリックなデザインで作庭されており、噴水の周囲に設けられた花壇に数多くのバラが植栽されている。「香りの庭」のバラは約100種、500株、その名が示すように香りを楽しむバラを中心に植栽されている。つるバラも多く、随所にバラのアーチも設けられている。人の背丈を超える高さに咲き誇るバラの美しさは素晴らしく、バラの香りに包まれながらの散策は素晴らしいバラ観賞のひとときだ。
「香りの庭」の魅力は、何と言っても視界いっぱいにバラの色彩が広がる圧倒的な美しさと、その芳香である。バラ花壇としてのスケール感は「イングリッシュローズの庭」を上回るものと言ってもいい。
もちろん庭園そのものも美しく、中央部の噴水とバラとが織り成す景観も素晴らしい。北側から見れば噴水の周囲をバラの色彩が彩り、その向こうに大佛次郎記念館の建物が見え隠れする。たいへんに美しく、ついカメラを向けてしまう風景である。
横浜市イギリス館後庭から
山手111番館後庭にかけてのエリアは、今回「バラとカスケードの庭」と名付けられて
港の見える丘公園のバラ園の一角を担うことになった。ここは園内の起伏を巧みに活用し、その名のようにカスケード(階段状の水路)やガゼボを配した西洋風庭園として造られている。このエリアは、そもそもは1999年(平成11年)に「ローズガーデン」がオープンした際に整備されたものだ。
「バラとカスケードの庭」に植えられているバラは約80種、500株。植栽されたバラの美しさはもちろんだが、「バラとカスケードの庭」の最大の魅力はカスケードやガゼボとバラの花とが織り成す庭園美である。
庭園の景観は場所によってさまざまな表情を見せ、それぞれにフォトジェニックで何度もカメラを向けたくなってしまう。庭園は緩やかな斜面になっており、上から見下ろすように眺めたり、下から眺めたり、それぞれに美しい景観が楽しめる。見る角度によっては庭園の向こうに横浜市イギリス館や山手111番館の建物も見え、それが借景となってさらに美しい庭園美を演出する。異国情緒溢れる庭園を巡れば、ここが日本の公園であることを忘れてしまうほどだ。ゆっくりと時間をかけて庭園の景観を楽しむのがお勧めだ。
バラが見頃を迎えるのは初夏(5月中旬〜6月上旬)と秋(10月中旬〜11月上旬)の年二回だが、やはり新緑の中に鮮やかに咲く5月下旬あたりがいちばんの見頃と言えるだろう。美しく整備された庭園の中に咲き誇るさまざまな品種のバラは見応え十分、鮮やかな色彩で園内を埋め尽くす景観は圧倒的な美しさだ。
2016年(平成28年)のリニューアルによってさらに魅力的に生まれ変わっている。以前のローズガーデンを見たことのある人にも再訪をお勧めする。名実共に横浜を代表するバラの名所である。