相模原市の県立相模原公園はさまざまな樹木の植えられた、緑に溢れた公園だ。春には新緑が美しく、夏には滴るような深緑が素晴らしい。秋が深まれば落葉樹が紅葉に染まり、見事な錦秋の景色を見せてくれる。

晩秋の相模原公園に訪れたなら、まずは「噴水広場」の両脇に植えられたメタセコイア並木の黄葉を見ておかなくてはいけない。「噴水広場」はシンメトリックにデザインされたフランス式庭園として造られ、その両脇にメタセコイアの並木が100mほどの長さで延びる。メタセコイアは高さ30m、全体で約100本、堂々した並木だ。

メタセコイアはヒノキ科メタセコイア属の落葉樹で、つまり秋を迎えれば黄葉し、やがて落葉して冬を越す。メタセコイアの黄葉はモミジのような鮮やかな赤色に染まることはないが、そもそも円錐形の美しい樹形の樹木であり、相模原公園の「噴水広場」の並木が壮観であることもあって、その黄葉は素晴らしい景観を見せてくれる。

メタセコイアは緑の葉が少しずつ褪せていき、黄色く色付き、さらに赤みを増して、やがて落葉する。時期によって異なる色彩を楽しめる。総じて少しくすんだような色付きだが、日の光を浴びて輝く様子などはたいへんに美しい。順光を浴びた景観もよいものだが、逆光の中に霞む景観もいい。少し離れて黄葉のメタセコイアの並木を眺めたり、並木の下を歩いたり、晩秋のメタセコイア並木を楽しみたい。

相模原公園の「噴水広場」は北北西から南南東の方角へ延びているため、お昼頃から午後にかけての時間帯では広場の中から眺めると西側の並木は日陰になってしまう。東西両方の並木に（広場の中から見て）日が当たる景観を見るには、朝の9〜10時頃に訪れなくてはならない。午後遅くに訪れると、東側の並木も日陰に沈んでしまう。早起きして出かけるのが良さそうだ。

「噴水広場」の西側に設けられた「紅葉の丘」でも、その名の通りに美しい紅葉の景観を楽しむことができる。「紅葉の丘」からさらにその西側に設けられた「見本庭園」にかけて、モミジが多く植栽されており、真っ赤に染まったモミジが他の落葉樹の黄葉と共に美しい秋のハーモニーを見せる。

時刻が違えば日差しの向きも変わり、その景観はさまざまな表情を見せてくれて飽きない。写真趣味の人なら美しい景観を探しながらのんびりと散策を楽しむといい。このエリアも晩秋の相模原公園でお勧めの場所と言っていい。

「紅葉の丘」と「芝生広場」の境目辺りに、ラクウショウの木がある。ラクウショウは「落羽松」と書き、ヌマスギの名でも呼ばれる。スギ科（あるいはヒノキ科）ヌマスギ属の落葉針葉樹だ。

ラクウショウも晩秋になれば紅葉する。“真っ赤”という色ではなく、赤褐色と呼ぶべき色だが、これも日を浴びて輝く様子はたいへんに美しい。秋の青空を背景に見上げる、紅葉したラクウショウは見事な姿である。これも秋の相模原公園でぜひ見ておきたいもののひとつだ。

公園南西側、道路に隔てられて「水無月園」という名の花菖蒲園が設けられている。花菖蒲は六月頃が花期だから、木々が紅葉に染まる季節には花菖蒲田は殺風景な景観だが、この「水無月園」の北側の園路脇に見事なモミジがあって、これをぜひ見ておきたい。それほど大きなモミジではないのだが、こんもりと大きく枝を張って、それが真っ赤に紅葉した姿は素晴らしいものだ。

モミジの紅葉は逆光の中で透過光に輝く姿が美しいものだが、「水無月園」のモミジは北側の外縁部にあるから逆光で見るのは少し難しい。時刻によっては斜光で見ることのできる場所を探すことができるだろう。

「噴水広場」の南、大温室の東側の緑地スペースに、モミジを植栽したエリアがある。木はそれほど大きなものではなく、数も多くはないが、真っ赤に紅葉したモミジはやはり格別の美しさがある。

「森の木展望台」周辺ではケヤキの黄葉と展望台とのコラボがフォトジェニックな景観を見せる。ケヤキは黄葉としては少し地味な印象だが、日差しの向きによってはたいへんに美しい色彩に輝く。

「水無月園」へと繋ぐ園路脇でもコデマリやニシキギ、ハゼノキといった樹木の美しい紅葉を見つけることができる。普段はあまり目立たない木々が美しい紅葉に染まっているのを見つけるのも楽しいものである。

相模原公園は都市緑化植物園としての側面もあり、園内ではさまざまな花々、樹木を見ることができる。晩秋には園内の落葉樹の見せる景色が美しい。メタセコイアばかりが有名だが、園内の随所で見事な秋景色をみつけることができる。のんびりと時間をかけて紅葉の景観を楽しむのがお勧めだ。