横浜線沿線散歩公園探訪
八王子市下柚木
柳沢の池公園
Visited in May 2005
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
柳沢の池公園
南大沢の都立大学(首都大学東京)の北西側、「都立大学入口」交差点の角にこの「柳沢の池公園」がある。「都立大学入口」交差点のひとつ北側の交差点は「柳沢の池公園北」という名となっているし、比較的交通量の多い道路沿いなので、車で走りながらその存在に気付く人も多いだろう。
柳沢の池公園−柳沢の池
交差点の角に位置した公園はおおよそ三角形をしており、その中心にはその公園名の由来となった「柳沢の池」という池がある。この池は江戸時代に下柚木村の領主であった柳沢氏によってため池として掘られたものであるという。公園内に設置された案内板によれば、池の大きさは縦横が35メートルに25メートル、深いところで1.7メートルの水深があるそうだ。すでに灌漑用水としての役目が終わっているが、今でも湧き水が集まるのだという。

「多摩ニュータウン」の中にあって、この池の周囲は開発の手が付けられず、昔ながらの山間の池の風情を残している。バードサンクチュアリとしての意味合いもあり、池とともにその周囲には木立が残され、カルガモやコサギ、シジュウカラといった野鳥が集まるという。トンボなどの水辺の小動物の姿も見られるということだが、池は保護と安全のためかフェンスが取り囲み、西側のデッキからフェンス越しに観察できるだけで水辺に近づくことはできない。造成された住宅街の中にこうした自然が残されることは確かに素晴らしいことなのだが、本来は山間の林の中にひっそりとあったであろう池の姿を思うと、現在の高層の住宅を背景にした風景にはやはり複雑なものを感じてしまうのも事実だ。周囲はすっかり現代的な住宅街に姿を変えてしまったが、この池がいつまでも枯れずに残ることを願わずにはいられない。
柳沢の池公園−お花見広場
池の周囲は芝生の広場が取り囲む形となっているが、池の南西側、交差点の角に当たる部分は「お花見広場」と名付けられて桜が植えられている。緩やかな起伏を伴った草はらが桜の林になっており、花期には広場全体が桜色に染まって美しい景観だ。桜の花が終われば青々と葉が茂り、木陰を抜ける風が爽やかだ。交通量の少なくない道路のすぐ横とあって少々落ち着かないのが難点だが、木々に囲まれればそれほど車の音も気にならない。林の中には随所にベンチなども置かれ、近所の人たちがのんびりと一休みする姿を見るこも多い。休日には家族連れも訪れ、近くに暮らす人たちにとっての憩いの場として充分なものだろうと思える。
柳沢の池公園−石の広場
池の東側、三角形の長辺に当たる部分は「多目的広場」と名付けられた芝生の広場や、「石の広場」、「遊具広場」と名付けられた子どもたちの遊び場が置かれている。トイレと管理所もこの一角に置かれている。「遊具広場」から「多目的広場」にかけての一角は車輌の通行しない舗道を挟んで下柚木の住宅地に接しており、近くに暮らす人たちにとっては自分たちの生活圏の中にあるという感覚が強いだろう。近所の子どもたちも気軽に訪れて遊んでいるようだ。舗道は南大沢駅方面に行き来する人の姿も多いが、人の目が多いということは「安全」という観点から言えば良いことかもしれない。

柳沢の池公園−遊具広場
「遊具広場」の遊具は木材を使って作られたもので、丸木橋をイメージさせるようなものなど、シンプルなものが多いが、お仕着せ的ではない遊び方ができて良いかもしれない。「石の広場」はオブジェのような石を配した広場だ。管理所近くには円形の砂場と四阿があり、子どもたちにとっては良い遊び場であるようだ。管理所脇から東に一段上がって「多目的広場」がある。「多目的広場」は園内では最も高所に当たる。草はらの広場にはベンチが置かれ、脇の方には花壇も置かれている。高所であるために周囲が開けて広々とした解放感のある広場だ。
柳沢の池公園−小川
公園の北端、道路に沿って「柳沢の池公園北」交差点付近まで細長く伸びた部分があるが、ここには池から流れ出た水が小川を形作っている。公園として整備される以前から存在していた流れなのかどうかは不明だが、コンクリート製の側溝的なものではなく、土の地面と石とによって自然な小川の様相を保つように整備が施されている。

数年前のことだったか、夏のように暑い春の日に、この小川で遊ぶ子どもたちの姿に出会ったことがあった。初めは数人の子どもたちが「アメンボがいる」と騒ぎながら、それを捕まえようと遊んでいるだけだったが、やがて友だちらしい子どもたちやお母さんたちも次々と集まってきて大人数となってしまった。中には小川に足を踏み入れて泥だらけになってしまう子どももいて大騒ぎだった。今ではこうした小川を探すのも難しく、そういう意味では貴重な場所と言えるかもしれない。五、六歳前後の子どもたちにとっては魅力的な遊び場だろう。流れも浅いので親としてもそれほど心配は要らないと思える。
柳沢の池公園
公園自体はそれほど規模が大きいわけでもなく、駐車場も無いが、近所に暮らす人たちにとって、特に子どもたちの遊び場としては充分な公園と言えるだろう。京王線の南大沢駅からも充分に歩ける距離なので、「多摩ニュータウン」に残された自然というものに興味のある人なら、松木日向緑地と合わせて「柳沢の池」を見学に訪れるのもよいかもしれない。公園の西側を南北に通る道路はカツラの並木で、秋には美しい紅葉に染まる。また公園の南側、大学との間を抜ける道路はヤマボウシの並木で、初夏には白い花を、秋には紅葉が楽しめる。公園北側の舗道を西に辿って行くと上柚木公園が近い。
【追記】
公園脇の交差点は当時はまだ「都立大学入口」という名だったが、後に「首都大学東京入口」と改められている。
柳沢の池公園