新百合ヶ丘駅は大きな駅で、駅周辺には麻生区役所やさまざまな商業施設が建ち並んで繁華な佇まいだ。駅の南側はバスターミナルとなったロータリーがあり、その上には周辺の商業施設を繋いでペデストリアンデッキが設けられている。デッキ上には植え込みが設けられ、野外彫刻もあり、西へ延びる部分は水路を設けて小公園のように設えられている。周囲に建ち並ぶ建物も洗練されたデザインで、建物そのものがひとつのオブジェのようにも見える。ペデストリアンデッキに囲まれたバスロータリーは中央部に木々が植栽され、木々は大きく育って枝を張り、駅前の景観に潤いを与えている。都市計画によって造られた街だからか、雑然とした喧噪が感じられず、整然として美しい佇まいだ。この新百合ヶ丘駅周辺の街並みは「ふるさと麻生八景」のひとつに選定されており、1991年(平成3年)から2000年(平成12年)にかけて国土交通省が選定した「都市景観100選」のひとつにも選ばれている。
前回、新百合ヶ丘駅から歩いた時には駅前からまっすぐに南へ向かった。今回は駅前から水路を設けた舗道を西へ辿ろう。ペデストリアンデッキの延長となって延びた舗道を行くと、舗道の真ん中に円形の穴があり、そこから樹木が伸びている。舗道下の地面に植えられた樹木が、上の舗道の穴を通して枝を広げているのだ。敢えてこのようなデザインにして樹木を植栽したものか、元々この地にあった樹木を活かすためにこのようなデザインになったものかはわからない。それほどの巨木というわけでもないので、おそらく前者だろう。ちょうどビルとビルの間の場所で、景観の潤いとして樹木が欲しいが、デッキ上には植えることができず、このような形になったものかもしれない。ちょっと面白い趣向だという気がする。
ビルの間を抜け出ると、道路を人道橋で渡って視界が開けた。そのまま続く舗道はヤマモモの並木だ。ヤマモモの並木の舗道を行くと麻生スポーツセンターの前の道路に出た。この道を北へ折れる。道はすぐに小田急線の線路を渡り、渡った先の左手(西側)に「
隠れ谷(かくれやと)公園」という公園がある。広場を中心に、遊具類を配した小公園だが、「隠れ谷公園」という、その名に惹かれてかねてから訪ねてみたいと思っていた公園だった。残念ながらその名の由来などを記した案内板などは設置されていないようだ。
隠れ谷公園から西へ降りてゆくとすぐに麻生川の河岸だ。麻生川の河岸はこの辺りから柿生駅付近まで桜並木が続き、麻生区の桜の名所として知られている。春の花期にはぜひ歩いてみたい。
隠れ谷公園から再び小田急線を越え、南へ辿る。麻生スポーツセンターの前を過ぎると、道の右手(南西側)に「
山口白山公園」という公園がある。現在の公園となった場所に、昔、白山神社があったことが、この名の由来であるらしい。道路に面した部分には広場が設けられているが、この公園の大部分は雑木林に占められている。広場の奥から林の中に小径が延びており、辿ってゆくと鬱蒼とした樹林地が広がる。周辺はすっかり住宅街になってしまったが、それだけにこれほどの規模で雑木林が残るのは貴重なことだろう。
山口白山公園の広場から南側の斜面を降りてゆこう。斜面の途中にも段差を利用して小広場が設けられている。公園を抜け出て、東へ進み、南側の丘を上がると丘上の住宅街の中に「
鶴亀松公園」がある。昔、「鶴松」と「亀松」と呼ばれた二本の松があったことから名付けられたものという。鶴亀松公園を通り抜け、南側へ丘を降りると「吹込」交差点だ。この辺りは以前、
王禅寺東の町へ向かって歩いたときにも通ったところだ。あの時と同じように南へ丘を上がろう。尾根を越えると道の右手(西側)に「
むじなが池公園」がある。むじなが池公園は鬱蒼とした雑木林と、その中に沢や池のある公園だ。訪れたとき、近所の子どもたちが池の辺で遊んでいた。近くに暮らす子どもたちの遊び場になっているのだろう。
むじなが池公園の横手は小さいながらも商店街になっており、スーパーもある。飲み物を買って、むじなが池公園の池の辺の四阿で一休みすることにしよう。今回の散策はむじなが池公園を終点にすることにして、一休みの後は公園近くのバス停で新百合ヶ丘駅行きのバスを待つことにしたい。