川崎市麻生区黒川
黒川
Visited in June 2007
川崎市麻生区の北西端に「黒川」という地区がある。北西側では多摩市に、南西側では町田市に接し、それらの市境はいずれも緑濃い丘陵地になっており、その尾根に抱かれるように水田の広がる地域だ。多摩丘陵の懐深くに入り込んだような黒川地区は、里山散策の好きな人たち、あるいは多摩丘陵を愛する人たちにとって「聖地」のような場所のひとつだ。現在では黒川地区の北東側は小田急多摩線の「はるひ野駅」を中心とした住宅街に変貌しつつあるが、南西側には今も変わらず緑の尾根と水田との織りなす田園風景が残っている。田植えも終わった六月の半ば、黒川を歩いた。
谷戸田の風景の美しさを堪能したらいったん南側へと戻り、最も東側に位置する谷戸へと進んでみる。この谷戸は、以前(2002年4月)多摩市側から降りてきたことがあった。当時はまだ整備中だった「多摩よこやまの道」から降りてきたのだった。あれから五年を経たが、谷戸の風景はあまり変わっていない。ただこの日は西側の丘の一部で何やら工事が行われているらしく大型のダンプが行き来していた。
この谷戸を奧へ、すなわち北へと進んでゆくと、やがて道は北方の丘へと登ってゆく。坂となった道の両脇に畑地が広がっている。黒川と言うと谷戸田の風景ばかりが有名だが、こうした畑地の広がる丘の風景もなかなか美しい。道を上ってゆくと、西側の谷戸から上がってきた道と合流する。その近くに大きなヤマザクラの木がある。解説のパネルが添えられており、樹齢四百年ほどという。このヤマザクラが満開になった姿を見てみたいものだ。道をさらに北へ登ってゆけば水道局の建物の傍らを過ぎて丘の上に出る。視界が開け、北方に多摩ニュータウンが見渡せる。この辺りは「多摩よこやまの道」として整備され、散策路が東西に延びているが、今回はそちらへ足を延ばすのはやめておこう。樹齢四百年のヤマザクラに別れを告げて再び谷戸へ降りよう。谷戸田の風景を楽しみながら、のんびりと黒川駅を目指し、そろそろ帰路を辿ることにしよう。
黒川は市街化調整区域や農業振興地域に指定されるなど、こうした田園風景の保存が図られているようだ。美しい谷戸田の風景を残す地域だが畑地も少なくなく、梨や柿の栽培も盛んだ。かつては炭焼きも盛んで、質が良く、「黒川炭」の名で呼ばれて広く知られていたという。「黒川炭」は「瓜生黒川往還」を通って遠く八王子や江戸へと運ばれた、との旨の解説が「多摩よこやまの道」に設置されている。黒川から「瓜生黒川往還」を抜けて「多摩よこやまの道」へ足を延ばしてみるのも一興かもしれない。
鶴川街道「黒川」交差点近くにはコンビニエンスストアや飲食店などがあるが、西側の水田地帯に入り込んでしまうとお店などは無く、公園なども無いからトイレも無い。散策の際にはその心積もりが必要だ。
黒川の最大の魅力は、やはり緑の尾根に抱かれるようにして横たわる谷戸田の風景だ。水を湛えた田圃に若い稲が育つ頃、夏の日差しの下で稲が青々と育つ頃、そして実った稲穂が黄金色に輝く稲刈りの頃、それぞれに美しい風景を見せてくれるだろう。雑木林の尾根は晩秋の紅葉も美しいに違いない。四季折々にその表情を見てみたい。
鶴川街道「黒川」交差点近くにはコンビニエンスストアや飲食店などがあるが、西側の水田地帯に入り込んでしまうとお店などは無く、公園なども無いからトイレも無い。散策の際にはその心積もりが必要だ。
黒川の最大の魅力は、やはり緑の尾根に抱かれるようにして横たわる谷戸田の風景だ。水を湛えた田圃に若い稲が育つ頃、夏の日差しの下で稲が青々と育つ頃、そして実った稲穂が黄金色に輝く稲刈りの頃、それぞれに美しい風景を見せてくれるだろう。雑木林の尾根は晩秋の紅葉も美しいに違いない。四季折々にその表情を見てみたい。