JR八王子駅北口から西北西の方角へ約1km、甲州街道（国道20号）に「八幡町」という交差点がある。交差点を境に、西側は八幡町、東は八日町だ。それぞれ甲州街道を中心に、その両脇に町域が広がっている。八日町の町域内は甲州街道と国道16号の重複区間で、「八幡町」交差点で国道16号は北へ折れる。

「八幡町」交差点の南側は都道506号八王子城山線だ。「八幡町」交差点は都道506号八王子城山線の起点だ。「八幡町」交差点から都道506号を南へ400mほど辿ったところで、都道は梅原横町踏切でJRの線路を越える。この梅原横町踏切横から北へ、「八幡町」交差点を経て大横町を抜け、国道16号が浅川を渡る浅川橋の袂まで、およそ1km、沿道にはハナミズキが植えられている。

梅原横町踏切の南側、すなわちJR中央線の線路の南側では都道506号は八重桜の並木だ。八重桜はソメイヨシノより花期が遅く、例年、四月中旬に満開を迎え、街路を春色に染める。上野町の八重桜並木として地元ではよく知られている。

線路北側では八重桜並木ではなく、沿道にはハナミズキが植えられている。“並木”というほどの規模ではない。沿道の歩道脇に間隔を置いて植え込みが設けられ、そこにハナミズキが植えられているという形だ。壮観なハナミズキ並木の景観が見られるわけではないが、赤白の花を咲かせるハナミズキは春らしい色彩で街路を彩ってくれる。

線路北側、都道506号の東側は南から天神町、南新町、八日町と並ぶ。西は小門町、八幡町と並んでいる。都道506号はそれらの町の境になっている。梅原横町踏切から400mほど北へ辿ったところが「八幡町」交差点だ。交差点を過ぎると北へ国道16号が延びているが、国道16号の沿道にもハナミズキが植えられている。

植えられたハナミズキは個体差があって、見事な姿で咲き誇っているものもあれば、花数があまり多くないものもあるが、どれもそれぞれに美しい姿だと言っていい。

「八幡町」交差点から100mほど北へ進めば、そこから北は大横町だ。都道506号の両脇に大横町の町域が広がっている。沿道にはスーパーや個人商店、企業の建物などが建ち並んでいる。西側には警視庁第9方面本部合同庁舎もある。国道16号は交通量も多く、ひっきりなしに車が行き交っている。

そのような街路の歩道にハナミズキが春を告げる。美しく咲き誇っているハナミズキを見つけて、うまく構図を探し、街路の風景と共に写真に収めるのも楽しいひとときだ。

「八幡町」交差点から北へ約500m、国道16号の西側に宝樹寺という寺がある。その門前、歩道に二本の八重桜が立っている。どちらの八重桜もちょっと珍しい品種だ。

四月中旬に花期を迎える八重桜と言えば、濃いピンクの花を咲かせるカンザン（関山）や白い花を咲かせるフゲンゾウ（普賢象）、あるいは薄ピンクのイチヨウ（一葉）などが一般的だが、宝樹寺前に咲いているのはウコン（鬱金）とギョイコウ（御衣黄）だ。

ウコン（鬱金）もギョイコウ（御衣黄）もサトザクラ群の栽培品種で、江戸時代に作出されたもののようだ。ウコンは“ウコンザクラ”と呼ばれることも多い。どちらも白色・薄緑・薄黄緑色の花を咲かせるのが特徴で、知らなければ桜の一品種だとわからないかもしれない。

ウコンやギョイコウは、さまざまな品種の桜が植えられた公園などでは見ることがあるが、街路樹として植えられているものは珍しいのではないか。宝樹寺前にはそれぞれ一本ずつ立っている。どちらもそれほど大きな木ではないが、花数は多い。四月の中旬にここを通りかかる機会があれば足を止めて目を向けてみるといい。

宝樹寺前からさらに北へ辿れば200m足らずで浅川だ。浅川橋が川を跨いで国道16号を通している。浅川橋から眺める浅川の流れも心なしか春らしい長閑な印象だ。浅川橋を渡った先の、浅川左岸は中野上町だ。

浅川橋まで歩いた後は近くのバス停からバスを待ってもいいが、八幡町の辺りまで来た道を戻るのも悪くない。往路で歩かなかった側の歩道を歩いたり、歩く方角が変われば見える景色の表情も変わる。のんびりと春の町散歩を楽しみたい。