横浜市都筑区北山田
横浜国際プール周辺
Visited in May 2017
横浜市都筑区の北端部近く、北山田七丁目の町に「横浜国際プール」がある。国際規格のプールを備え、1998年(平成10年)に開催された「かながわ・ゆめ国体」の会場として使われた施設だ。メインの施設の周辺にはテニスコートや緑地などもあり、“公園”的な性格も持っている。陽光眩しい五月の初め、「横浜国際プール」周辺を歩いてみた。
「横浜国際プール」は横浜市都筑区の北端近く、北山田七丁目の町の西部に位置している。横浜市営地下鉄グリーンラインの「北山田」駅から至近で、北へ真っ直ぐに300mほど歩くと着く。
「横浜国際プール」は1995年(平成7年)に着工、完成したのは1998年(平成10年)、同年に開催された「かながわ・ゆめ国体」の会場として使われた施設だ(「かながわ・ゆめ国体」は第53回国民体育大会の夏季大会と秋季大会として開催された)。公募によって「WATER ARENA ウォーターアリーナ」という愛称が付けられている。
「横浜国際プール」のメインアリーナは地上3階地下2階の鉄筋コンクリート造、国際規格の50m×10コースのメインプールと25m×25m×水深5mのダイビングプールを備え、約4000名の観客を収容可能という(メインアリーナは冬期は床転換が行われてスポーツフロアとして使われる)。その他にも50m×8コースのサブプールやトレーニングルームなどを備え、屋外にはテニスコートや緑地も設けられている。
「横浜国際プール」の建物はなかなか意匠に凝っており、その外観を見るだけでも楽しい。メインアリーナの緩やかな曲線を描く屋根のラインは“波”、あるいは“うねり”をモチーフにしたものだろうか。施設北側の正面エントランス周辺の造形も美しい。「霧の回廊」や「森の回廊」と名付けられた広場が置かれ、メインアリーナ入口へ向かう階段横の金属製のオブジェが陽光を照り返す光景も印象的だ。サブプールとサブアリーナとの間に設けられた階段のデザインもおもしろい。建築物に興味のある人なら、こうした建物の意匠を見て回るだけでも訪れる意味があるのではないだろうか。
メイン施設の西側は丘の斜面の林地がそのままに残され、緑地として開放されている。外縁部に沿って散策路が辿り、ところどころで尾根道が林の中に延びている。現地に設けられた「施設案内」のパネルには、「香の庭」や「林浴の庭」、「瞑想の庭」、「風の丘」などと名付けられたエリアが緑地の中に設けられているが、基本的には林地を中心にした緑地スペースが広がっている。北西側の隅に設けられた「陽だまりの丘」の辺りは「横浜国際プール」の敷地の一部というより、道路を挟んで西に隣接する
山田富士公園の一部のような印象だ。
敷地の南側は北山田七丁目の町に溶け込む形で現代的な造形が成されている。メインアリーナの南側には「花の回廊」と名付けられた舗道が延び、「のぞみ橋」が円形の「展望広場」へ繋いでいる。「のぞみ橋」は“橋”としての実用的な役割はなく、修景用に設けられたもののようだ。「のぞみ橋」の描く曲線は、おそらくメインアリーナの屋根が描く曲線と同じなのだろう。「展望広場」からは西に北山田駅周辺の北山田一丁目から二丁目にかけての街並みを見下ろす。それほどの高みではないが、広々と視界が開け、なかなか爽快な眺めだ。
「展望広場」から丘の斜面を階段が降りている。階段は「光の階段」と名付けられているが、南斜面となった階段にはその名が示すとおりに初夏の陽光が降り注いでいる。「横浜国際プール」の「施設案内」パネルには「光の階段」の中心部分から西側だけが描かれているが、「横浜国際プール」の敷地がその範囲なのかもしれない。「光の階段」を降りれば、「夢逢歩道橋」と名付けられた人道橋が道路と「
ふじやとのみち」を跨いで北山田駅へと通路を繋いでいる。
「光の階段」横の斜面には「花のカスケード」の名があり、植え込みが設けられ、その間を縫って通路がジグザグに辿っている。植え込みはツツジで、四月の終わりから五月の初めにかけて花を咲かせて鮮やかな風景を見せる。このツツジの咲く風景が圧巻の美しさだ。初夏の青空を背景に、色鮮やかなツツジと木々の緑が見事なコントラストを見せる。上側から見下ろすのもいいし、下側から見上げるのもいい。ジグザグに辿る通路からの眺めも素晴らしい。見る場所を変えれば風景の表情も変わり、どれほど見ていても飽きない。ツツジの名所と言っていいのではないか。
「横浜国際プール」の敷地内にはツツジの植え込みが少なくなく、それぞれに美しい景観を見せる。特にメインアリーナ西側の「水の回廊」と名付けられたエリアには通路に沿ってツツジの植え込みが設けられ、素晴らしい景観を見ることができる。色鮮やかなツツジとメインアリーナの屋根の優美な曲線が不思議な調和を見せて、メインアリーナのガラス張りの壁面は空の青を映す様子も素敵だ。北側の正面エントランス周辺にもツツジの植え込みが設けられ、現代的な造形の建物との競演を見せてくれる。ツツジの花期に訪れたなら、ぜひこの風景を楽しんでおきたい。
「横浜国際プール」の周辺は散策に訪れるにもよいところだ。施設の建物そのものを見るのも楽しく、緑地内を巡ってみるのもいい。初夏のツツジは圧巻の美しさで、花の咲く風景の好きな人なら一度は訪れてみるべきだと言っていい。西側には道路を挟んで
山田富士公園が隣接している。雑木林や広場を有する公園で、園内に「山田富士」と呼ばれる富士塚が残っている。併せて散策を楽しむのがお勧めだ。