横浜市都筑区北山田〜南山田
晩冬の北山田
Visited in February 2018
そろそろ梅の花が盛りを迎えた二月の下旬、横浜市都筑区北山田の町を訪ねた。
山田富士公園の梅林を目当てに訪れたのだが、さらに散策の足を延ばして
徳生公園から滝ケ谷公園へと巡って、北山田一丁目〜三丁目の辺りを歩いてみたい。
横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅から北へ辿って富士塚歩道橋を渡ればすぐに
山田富士公園だ。公園内に「山田富士」と呼ばれる富士塚が保存されていることからこの名がある。公園は西側が樹林地となった尾根筋で、富士塚もその一角にある。東側はかつての谷戸の地形を利用して設けられた広場で、小さいながらも池が設けられている。広場はなだらかな斜面を成し、南が低く、北に高い。まだまだ風の冷たい季節で、園内の木々も冬枯れの姿だが、早い春を求めてか、広場には多くの家族連れの姿がある。
その北の端、公園の北端部に当たる一角に梅林が設けられている。南側から眺めると、広場越しに梅林を眺めることになるが、その景色がなかなか風趣に富んでいる。広場を歩いて行くと、梅林が近づいてくる。梅林は公園北端部の斜面を利用して設けられ、梅の木を縫って散策路が辿る。散策を楽しむ人に交じって、梅の木の下ではシートを広げて観梅を楽しむグループの姿もある。梅林の梅は20〜30本といったところか。白梅と紅梅が取り混ぜて植えられており、そのお陰で景観の表情に変化があるのがいい。規模としては大きくはないが、なかなか魅力的な梅林である。
山田富士にも立ち寄っておこう。富士塚がいつ頃築かれたものかはよくわかっていないらしいが、文化文政期(1804〜1829年)に編纂された「新編武蔵風土記稿」に記述があるとのことだから、1700年代以前のものであることは確かだ。本物の富士に倣って美しいコニーデ形に築かれた富士塚は緑に覆われた季節とはまた違った表情を見せている。木々に葉が茂っている季節には見えない角度からも頂上部分を見ることができるし、周囲への眺望も開けているのは、この季節ならではの魅力だ。
山田富士公園の梅林と富士塚を楽しんだら、
徳生公園に立ち寄っておこう。徳生公園は山田富士公園から「
ふじやとのみち」を辿って約1km、15分ほどで着く。
徳生公園もまだ冬枯れの風景だが、この季節は公園内の池で水鳥たちの姿を見ることができるのが嬉しい。今回訪れたとき(2018年2月)にもオナガガモの“つがい”やキンクロハジロの群れを見ることができた。オナガガモもキンクロハジロも日本で越冬する、いわゆる“渡り鳥”だ。暖かくなれば北の繁殖地へ飛び立ってゆくのだろう。その姿を見ることができるのも、この季節ならではの楽しみだ。
徳生公園を楽しんだ後は「
ふじやとのみち」を少し北山田駅方面へと戻って神無公園の横から北東の方角へと延びる舗道を辿ってゆこう。この舗道は北西側に隣接する「港北ニュータウン ルミエラガーデンズ」の敷地内だが、いわゆる“公開空地”として一般開放されており、公道のように自由に通行できるものだ。舗道には植栽が施され、石のベンチなども設けられて公園のように整備されている。この季節には木々が葉を落として少しばかり殺風景だが、木々が緑濃くなる季節には潤いのある景観が楽しめるだろう。なかなか素敵な舗道だ。
その舗道を、神無公園から250mほど行くと「北山田地区センター」が建っている。会議室や和室、体育室、音楽室などを備えた、地区の交流センターだ。訪れた時(2018年2月)、音楽室で何かのイベントが行われていた。何をされているのだろうと見ていると、係の方から「どうぞ」と誘われた。都筑区民でもない、通りがかりの身、丁重にお断りした。
北山田地区センターの敷地の一角で白梅が咲いていた。青空を背景に、日差しを浴びる姿が美しい。冬枯れの風景の中にふと見つける梅の花に、春が近いことを実感する。
「北山田地区センター」から東へ進めばすぐに滝ケ谷公園だ。滝ケ谷公園はほぼ三角形の輪郭をした公園で、西側には広場があり、東側は樹林地になっている。まだまだ風は冷たいが、広場では何組かの家族連れが遊んでいる。
その名称に反して公園は丘の上の立地で、東端部からは南山田三丁目から東山田三丁目周辺の町並みを見下ろす。南寄りの方角に見えるこんもりと木々が茂った丘は山田神社の辺りか。この季節には木々の葉が落ちて視界が開け、周囲の眺望を楽しむことができるのが嬉しい。
滝ケ谷公園の東端から歩道橋でバス通りを渡れば南山田三丁目の町だ。この辺りも港北ニュータウンとして整備された住宅街だが、住宅と住宅の間に畑地があったりもする。その町の中を300mほど辿れば「
ふじやとのみち」の東端部、ちょうど城山橋の辺りに抜け出る。
城山橋から横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅まで、「ふじやとのみち」を辿って1km足らず。そろそろこの辺りで北山田駅へと向かうことにしよう。初夏には輝くような新緑に覆われる「ふじやとのみち」も今は冬枯れの風景だ。低い角度の日差しが、木々の陰を長く伸ばしている。
梅が見頃とは言え、風の冷たさの残る二月下旬、散策を楽しむのにお勧めの季節とは言えないが、この季節ならではの興趣を感じることができるのは楽しい。
山田富士公園の梅林はもちろんだが、
徳生公園の水鳥たちの姿や滝ケ谷公園からの眺望もこの季節ならではの楽しみだろう。次の機会には新緑の頃の滝ケ谷公園にも訪ねてみたい。