横浜線沿線散歩公園探訪
多摩市中沢〜唐木田
からきだの道
May 2000
からきだの道
多摩市の西端にあたる唐木田の街の北側には多摩市と八王子市にまたがってゴルフコースが広がっているのだが、このゴルフコースの外郭に沿って中沢二丁目から唐木田一丁目にかけて「からきだの道」という散策路がある。唐木田の街は小田急多摩線唐木田駅の南西部に町田市と八王子市に接して広がる区域で、現在では多摩ニュータウンの一部として整然として住宅街になってしまったが、かつては雑木林の広がる丘陵地帯だった。

「からきだの道」はゴルフコースとの境界部分の緑を残し、散策路として整備したもので、かつては唐木田に住む人々の生活のための道であったという。「道」は中沢二丁目から唐木田一丁目の西端まで約2キロほどの長さで延びており、途中に「見晴らし広場」、「寺ノ入の湧水」、「草花園」、「砦山」といった場所を辿り、南に多摩ニュータウンの街並みを眺めながらの木立の中の散策を楽しむことができる。
「からきだの道」は唐木田駅の北方、中沢二丁目の中央あたりに「入口広場」が設けられていて、ここが起点という位置付けだろう。四阿の設置された「入口広場」から丘の林へ登ってゆくように散策路が延びている。丘の上には「見晴らし広場」がある。標高は143メートルあるそうで、ここからは東に眺望が開けて多摩ニュータウンの街を一望することができる。視界が澄んでいれば遠く新宿の高層ビル群も見ることができるらしい。

寺ノ入の湧水
「見晴らし広場」を降りて散策路に戻り、南に辿るとほどなく「寺ノ入の湧水」に着く。林の斜面の麓にひょっこりと小さな池がある。昔からの自然の湧水なのだそうだ。道路脇の小さな水辺ではあるが、湿地を好む植物の姿も見られ、何となくこのあたりだけ静かな空気に包まれているような気もする。西にはゴルフコース、東には多摩ニュータウンが広がっているが、この湧水だけがそうした時代の流れに抗っているようにも感じる。
かぶとむしの林
「寺ノ入の湧水」を後にして道をさらに辿ると「展望台」がある。この展望台も眺望がよく、真正面には団地と唐木田駅を隔てて鶴牧西公園が見えている。「展望台」から南に向かうと「かぶとむしの林」と名付けられた一画に着く。かつての雑木林を復元したものであるらしく、大きな木々の佇まいが嬉しい。既存林ではカブトムシの幼虫を育成しているらしく、ゆくゆくはこの林をカブトムシの楽園にしようということなのだろう。

このあたりは林の中を往く散策路という趣だが、さらに進むと「おしゃもじの森」という場所がある。この辺りにはかつて「石神(いしがみ)の森」と呼ばれた大木の森があり、「おしゃもじ様」の小さな祠があったのだという。さらに進むと小さな公園に出た。榎戸公園という。小さな芝生の広場があって、その片隅にはベンチやフィールドアスレチック風の遊具が設置してあるが、まだ午前中ということもあってか、人の姿はなかった。

公園から「草花園」を経て、上り坂となった道を進むと、高みとなったところに四阿がある。そこは「砦山」と名付けられている。この辺りにはかつて小山田城主の側室が住んでいたと言われ、唐木田の隠し砦と呼ばれていたのだそうだ。

小山田氏は平安から鎌倉の時代にかけて現在の町田市を領有していた鎌倉武士で、現在町田市下小山田町の大泉寺が建っている場所に居館を構えていた。現在の唐木田は多摩ニュータウンの中の町として多摩市に属しているが、南に接する町田市の上小山田町の丘陵地帯には意外なほど近い。多摩ニュータウン造成以前の本来の姿は多摩丘陵として連なったものであったはずで、当時の唐木田は小山田氏の支配する小山田荘の領内であったのだろう。
お花見広場
「砦山」を降りると「お花見広場」だ。小さな広場だが、春はお弁当でも広げてのんびりとお花見を楽しむのに良い場所のように思える。「お花見広場」から「尾根の径」を辿るとやがて「からきだ百本シダレ」という一画に出る。その名が示すように、斜面にシダレザクラが数多く植えられており、ここも春の花の季節の景観が素晴らしいように思える。さらに進むと「ヤエザクラの原っぱ」だ。「原っぱ」というほど広くはないが、ちょっとした広場があって遊具も設置されている。「お花見広場」から「ヤエザクラの原っぱ」にかけて四月の桜のシーズンには美しい景観の中の散策が楽しめることだろう。

「ヤエザクラの原っぱ」を過ぎると「からきだの道」も終点を迎える。すでに八王子市との市境に近く、別所公園へもわずかな距離しかない。八王子市別所のあたりも公園が多く、水路に沿った舗道などもあって散策は楽しい。時間が許せば足を伸ばすのもいいだろう。また東側の「入口広場」のあたりからはゴルフコースを回り込んで中沢一丁目の中沢池公園へも歩けない距離ではない。
榎戸公園
「からきだの道」は北にはゴルフコースの敷地が迫り、南には多摩ニュータウンの唐木田の街並みが広がり、その隙間を縫うように残された緑地の帯に過ぎない。歩いていると南には木立の隙間から整然とした現代的な街並みが見え隠れし、北側にはゴルフコースの外郭を示す塀やフェンスが無粋に視界を遮っている。決して自然溢れる雑木林の中の遊歩道という雰囲気ではないのだが、散策路は常に木立の中を辿り、時にはかつての雑木林を彷彿とさせる大木にも巡り会う。野鳥の声も絶えず聞こえてくる。広場などではすぐ間近で野鳥の姿を見ることもあった。時折視界が開けて多摩ニュータウンの眺望が楽しめるのも悪いものではない。道は決して平坦ではなく、手応えのある坂道などもあり、そうしたところにも造成以前の姿を偲ぶことができる。要所要所に立てられた案内板に書かれたエピソードに目を通しながら、のんびりと歩いてみるのもよいものかもしれない。

トイレは榎戸公園と李久保公園に設置してあるので利用するとよいだろう。「からきだの道」に沿った街並みは住宅地だが、唐木田駅周辺には店舗などもあるので利用するとよい。榎戸公園から南に出たところになかなかお洒落な喫茶店があり、一休みやランチにお勧めだ。
からきだの道