横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市都筑区荏田東〜荏田南〜茅ヶ崎南
ささぶねのみち
Visited in April 2006
ささぶねのみち
横浜市都筑区の港北ニュータウン内には数多くの公園が点在し、それらの公園を繋いで緑道が整備されている。「ささぶねのみち」と名付けられた緑道は、港北ニュータウンの南西部に位置し、都筑中央公園から鴨池公園葛ヶ谷公園大原みねみち公園を経由しながら、茅ヶ崎公園までを繋いでいる。茅ヶ崎公園からは「せきれいのみち」と名付けられた緑道が、鴨池公園からは「ゆうばえのみち」という名の緑道がさらに延びて、ニュータウン内の公園を有機的に結びつける役割を果たしている。
ささぶねのみち
港北区役所の西側、都市基盤整備公団の裏手辺りから木々に包まれた緑道が西へ延びている。緑道は「ささぶねのみち」という。「ささぶねのみち」は周囲からは少し低くなっており、かつては丘陵に囲まれた谷戸の立地だったのではないかと思わせる。辿ってゆくと緑道の北側に心行寺という寺がある。緑の丘を背負って建つ寺だが、その丘の緑の向こうには高層の建物の上部が見えており、ここが港北ニュータウンの真っ直中なのだということを改めて思い起こさせる。ときおり緑道を通り抜けてゆく人の姿がある。「センター南」駅方面と荏田東四丁目辺りの住宅街とを行き来する人たちなのだろう。緑道には小さな小川が沿っており、その小川のほとりに二羽の鴨の姿があった。「つがい」だろうか、二羽の鴨が仲良く並んでいる。近づいてカメラを向けたが、逃げるでもなく、じっとしていた。

ささぶねのみち
二百メートルほど歩くと、池を配した広場のような一角に出る。周囲からは一段低くなった窪地になっており、小公園のように設えられ、木々に包まれて落ち着いた空間を成している。のんびりと散策する人の姿も少ないところだ。

ここから北へ少し行くと蛍見橋という風雅な名の人道橋が「ささぶねのみち」と都筑中央公園とを繋いでいる。都筑中央公園は2003年(平成15年)に全面開園した公園で、その名が示すように都筑区を代表する公園と言っていい。里山と谷戸の自然を残した園内はなかなか広く、雑木林の中や尾根に沿った小径を辿って爽快な散策が楽しめる。

蛍見橋からさらに北へも「ささぶねのみち」は延びており、東側に都筑中央公園の雑木林を、西側には荏田東四丁目の閑静な住宅街を見ながら続いている。こちらも距離は二百メートルほどだろうか。北端まで歩くとすでに早渕川に近く、周辺は畑地も残るようなのどかなところだ。

ささぶねのみち
池のある「広場」から南へ、「ささぶねのみち」が延びる。交通量の多い道路をアンダーパスで過ぎ、やがて緑道は一般道に沿った歩道の形になる。歩道脇にはカスケードのような形で段々になった水路が沿っている。道は北が低く南に高い緩やかな坂道になっており、だから水路の水は南から北へ向けて流れている。下流側には水の流れが滞りがちになって落ち葉の溜まったところもあったが、上流にゆくに従って流れも速くなり、水もきれいになった。時節柄、花の盛りを終えた八重桜の花びらが水路を流れてゆく。やがて道の西側に鬱蒼とした雑木林の丘が見え始める。鴨池公園の北側を占める雑木林だ。

鴨池公園
坂道になった歩道を上りきると、「ささぶねはし」で道路を越える。緑道に沿った水路もまた「ささぶねはし」を流れている。「ささぶねはし」の欄干には藤が這っており、ところどころに花を咲かせていた。「ささぶねはし」を渡ると鴨池公園の入口だ。鴨池公園は広場や雑木林を抱えた公園で、その名が示すように道路を隔てた西側部分には池も抱えている。緑に覆われた静かな公園だ。子どもたちのための遊び場として「鴨池公園こどもログハウス」も置かれており、小さな子どもを連れたお母さんたちの姿も多いところだ。鴨池公園から南へは「ゆうばえのみち」という名の緑道が延びている。

ささぶねのみち
鴨池公園入口を経て、「ささぶねのみち」はわずかに東よりに曲がってさらに南へ延びる。緑道に沿った水路は、ここから南へは自然の小川を彷彿とさせる様相に姿を変える。水辺の植物も育ち、自然溢れる様子は「笹舟の道」という名に相応しいものだ。緑道脇には木々が茂り、ニュータウンの住宅街の中であることを忘れる。南へ辿るに従って緑道脇の木々はますます鬱蒼となり、辺りは薄暗く、まるで山深い森の中を歩いているかのようだ。小川の岸辺にはところどころでシャガが咲いている。緑道脇の木々にネームプレートの付けられたものがあるのも嬉しいところだ。やがて緑道の上を区役所通りが越える。「御影橋」という名の橋で、周辺はちょっとした公園のように設えられている。御影橋をくぐり、緩やかな坂道となった緑道をさらに辿れば葛ヶ谷公園が近い。

葛ヶ谷公園
葛ヶ谷公園は雑木林の小高い丘と草はらの広場によって構成された公園だ。運動場も併設され、「シャフルボード」という、一般にはあまり馴染みのないスポーツの専用コートも設置されている。葛ヶ谷公園の草はらは「ささぶねのみち」と一体化した印象で、舗道脇には公園のシンボルとも言えるような石のオブジェが置かれている。

この石のオブジェの脇から北東へ住宅街の中の舗道を辿れば横浜市営地下鉄「センター南」駅方面へと続いている。住宅街から駅前の商業地域へと続いているが街並みは美しく散策も楽しい。

ささぶねのみち
葛ヶ谷公園から東へ「ささぶねのみち」は木々の茂った緑道となって続く。ここでも小川が沿っているが、葛ヶ谷公園を過ぎると水の流れの向きが変わる。葛ヶ谷公園以西では北西側へ向かって流れていたのだが、葛ヶ谷公園以東では東に向かって流れており、葛ヶ谷公園を境に水の流れは逆になる。すなわち葛ヶ谷公園から東西へ向けてそれぞれの小川が流れ出ている形なのだ。歩いていると実感しにくいが、葛ヶ谷公園のあたりは高所にあたるのだろう。確かに都筑中央公園付近から葛ヶ谷公園付近まで、「ささぶねのみち」は概ね緩やかな上り坂となって続いてきた。ここから東へは緩やかな下り坂だ。

大原みねみち公園
木々に囲まれていた緑道の視界が開けてきて、前方に池が見えるとすでに大原みねみち公園だ。大原みねみち公園は東西に長く、雑木林と池とから構成されている。「ささぶねのみち」と一体化した印象で、どこからが公園の範囲内なのかも判然とせず、「ささぶねのみち」を西から東へ歩いているといつのまにか大原みねみち公園に入ってしまうという感覚だが、池が見え始めて視界が開けるときには爽快な開放感が感じられて楽しい。公園の南側は道路を挟んで住宅地が広がっているが、木々に包まれて池を配した園内は穏やかな空気感に満ちて町中の喧噪はあまり感じない。池を渡る橋や岸辺の四阿などが巧みに配され、庭園風の景観もなかなか美しい。のんびりと散策を楽しむ人も多いところだ。

大原みねみち公園の東側には「歴博通り」という名の大きな道路が南北に通っている。早渕川の北側にある横浜市歴史博物館の横を抜ける道路だからこの名となったのだろう。周囲からは一段低く造られた「歴博通り」を、「ささぶねのみち」は「萌黄橋」という名の橋で越えて東の住宅街へと繋いでいる。「萌黄橋」のすぐ横には横浜市営地下鉄の線路が寄り添うように「歴博通り」を越えている。「歴博通り」を越え、その地下鉄の線路をくぐって線路とは南北が入れ替わり、「ささぶねのみち」は東の茅ヶ崎公園へと続く。

茅ヶ崎公園
茅ヶ崎公園は丘陵の斜面を利用した造られた公園で、南側が高く、北側に低い立地だ。雑木林や草はらの広場などによって構成され、北側は湿地となって池があり、自然のままの沢も残されている。公園の西側の一角は「自然生態園」として谷戸田や溜め池などを保存しているという。フェンスで囲まれた「自然生態園」は普段は立ち入ることができない。春夏の土日祝日、昼間のみ開放されるという。公園内では「ささぶねのみち」の緑道としての存在感は希薄で、公園内の舗道と一体化して機能していると言っていい。茅ヶ崎公園が「ささぶねのみち」の東端だ。ここから東へは「せきれいのみち」が延び、「ささぶねのみち」は「せきれいのみち」にその役割を譲り渡す。
「ささぶねのみち」はさまざまな表情を見せてくれる。都筑中央公園付近から鴨池公園入口にかけての区間では住宅街の中を辿る緑濃い舗道という佇まいだが、鴨池公園入口から葛ヶ谷公園を経て大原みねみち公園へかけての区間では緑道脇には鬱蒼と木々が茂り、林の中を歩いているかのような感覚が楽しい。大原みねみち公園から茅ヶ崎公園にかけては緑道としての存在感はあまりないが、緑濃い公園そのものが緑道と一体化して魅力的な散策路を提供してくれる。「ささぶねのみち」そのものも魅力的な散策路だが、点在する公園や他の緑道同士を結ぶように機能していることでさらにその魅力が増しているように思える。
ささぶねのみちささぶねのみち
ささぶねのみちささぶねのみち

「ささぶねのみち」は車両の通行する道路を横切ることはなく、交差するところではすべて橋によって分離されており、日常の喧噪から離れてのんびりとした散策を楽しむことができるのも嬉しい。緑に溢れた「ささぶねのみち」は新緑の頃が爽快だが、秋の紅葉もよく、四季折々に美しい景観を見せてくれるだろう。地元の人たちのための散歩道としてはもちろんだが、遠方から訪れても充分に楽しめるのではないかと思える。
ささぶねのみち

「ささぶねのみち」のルートは横浜市営地下鉄「センター南」駅を中心とした半円を描くように延びており、どこからでもそれほど遠くない距離で「センター南」駅へと向かうことができる。都筑中央公園大原みねみち公園茅ヶ崎公園などの公園や、「センター南」駅周辺の街も併せて散策を楽しむのがお薦めだ。体力と時間に余裕があれば、「ささぶねのみち」から「ゆうばえのみち」や「せきれいのみち」へと、さらに散策の足を延ばすのもいい。
ささぶねのみち