横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市都筑区茅ヶ崎中央〜荏田東
都筑中央公園
May 2005
都筑中央公園
横浜市都筑区、横浜市営地下鉄「センター南」駅の西側に、都筑中央公園がある。「都筑中央」の名が示すように、都筑区のほぼ中央に位置し、都筑区内で最も広い(2005年5月現在)公園であるという。圧倒的な広さというわけではないが、それでも充分に広く、また昔からの里山の地形を利用して造られた園内は起伏に富み、池や尾根道などもあって表情にも変化があり、その数値以上に広く感じる。園内には雑木林が広く残り、いわゆる里山保全型の公園ということができるだろう。平成15年(2003年)春の全面開園という。
都筑中央公園−中央口
都筑中央公園は横浜市営地下鉄センター南駅から至近だ。駅前の広場から北西へ舗道を辿り、昭和大学北部病院の東側を抜けて歩道橋を渡れば、公園の「中央口」だ。歩いて五分ほどだろうか。「中央口」の名があるから、このあたりが公園のメインエントランスと考えてよいのだろう。「中央口」の辺りは公園の南端部分の中央に当たっており、公園南端の外郭に沿うように舗道が東西に延びている。舗道を西へ辿れば「北部病院口」を経て、「渋沢口」へ至り、東へ辿ればレストハウスや「円形広場」、駐車場などがある。

都筑中央公園−展望広場
「中央口」から眼前の丘へ石段が上っている。丘は木々が茂り、里山の様相を保っている。急な石段を登ると、丘の上には木々に囲まれた草はらの広場がある。この広場は「展望広場」の名があることからもわかるが、公園の中でも高所にあたり、南西側に港北ニュータウンの景観が望める。広場の周囲には木々が茂っているためにそれほど開放感に富んでいるわけではないのだが、かえって木々に包まれて落ち着いた雰囲気だ。草はらはなだらかな斜面になっており、ところどころにシートを広げてくつろぐ人の姿がある。いかにも「丘の上」という様子が楽しい。

都筑中央公園−港北ニュータウン建設事業記念碑
広場の中央部分にはリングを立てたような形状のモニュメントが建っている。これは「港北ニュータウン建設事業記念碑」で、基部には港北ニュータウン事業の概略が記されている。港北ニュータウン事業は1965年(昭和40年)に横浜市六大事業のひとつとして発表され、その9年後の1974年(昭和49年)に「港北ニュータウン基本計画」が策定されて着工に至っている。着工から20年後の1994年(平成6年)には都筑区が誕生、その2年後の1996年(平成8年)、港北ニュータウン事業はようやく終了する。のどかな農村地帯を近代的な街並みに変貌させた大事業だった。美しい意匠のモニュメントを見ながら、失われてしまった風景にも思いを巡らせておきたい。

都筑中央公園−ステージ広場
「展望広場」から北西側へ進むと、眼下に野外ステージのような一角が現れる。その名も「ステージ広場」だ。半円形のすり鉢状の斜面に「観覧席」が設けられ、西側の低くなったところに木製のデッキによる「ステージ」が設置されている。おそらくこの野外ステージを利用してさまざまなイベントが開催されるのだろう。訪れたときには閑散としており、「観覧席」の思い思いの場所に腰を下ろしてランチタイムを楽しむ人たちの姿があった。この「観覧席」の上部は西側への眺めもよく、なかなか爽快な気分だ。

「展望広場」から「ステージ広場」にかけての一角が、都筑中央公園のほぼ中心と言ってもよいだろう。「展望広場」から「ステージ広場」北側の尾根筋を辿る散策路のあたりが、公園の「背骨」というふうで、そこから外縁部へと幾筋かの散策路が降りてゆき、西の「ばじょうじ谷戸」や北の「清水谷戸」、東の「境田谷戸」、「境田貝塚」、「宮谷戸」へと辿って行くことができる。それぞれの谷戸がそれぞれに公園入口としての機能を果たす形になっている。
都筑中央公園
「ステージ広場」を回り込むように西側へ降りてゆくと、「ばじょうじ谷戸」と呼ばれる谷戸だ。「ばじょうじ」という名は昔からの呼び名であるに違いない。公園の案内板にもひらがなで「ばじょうじ谷戸」と記されており、文字から推測することもできないが、どのような由来なのだろう。興味を覚える。

都筑中央公園−ばじょうじ谷戸休憩所
「ばじょうじ谷戸」には山小屋を思わせる意匠の休憩所が建っている。休憩所の前には畑があり、また谷戸の一角には炭焼きの窯もある。都筑中央公園では都筑中央公園里山倶楽部(正式な名称は「都筑中央公園自然体験施設管理運営委員会」といい、「都筑中央公園里山倶楽部」は愛称という)が横浜市からの委託を受けて公園の管理保全などを行っており、この倶楽部の主催で畑での耕作や、炭焼きなど、さまざまな里山体験活動が実施されているらしいのだが、この「ばじょうじ谷戸」の一角はその主たる活動場所のひとつであるのだろう。訪れたとき、休憩所の前の畑にはレンゲの花が咲いていた。休憩所の奧は竹林で、竹林の中の小径を辿ると尾根道へと上がることができる。
都筑中央公園−ばじょうじ谷戸の竹林都筑中央公園−レンゲ

都筑中央公園−ばじょうじ谷戸池
「ばじょうじ谷戸休憩所」の正面、散策路の向こうに池がある。「ばじょうじ谷戸池」という名が付けられた小さな池で、昔は水田として使われていた場所のようにも見える。池は柵で囲われていて岸辺に近づけないようになっており、柵の中に立ち入らないようにとの旨の注意書きが立てられている。この注意書きが面白い。「注意してください。泥沼で、入ると抜け出すことが困難になり、大変危険です」ということだ。軽い気持ちで岸辺に近づき、うっかり足を滑らせたりすると、泥沼に足を取られてなかなか抜け出せなくなるというわけだ。不謹慎だが、その様子を想像して少しばかり笑ってしまった。

「ばじょうじ谷戸池」の横手から南へ逸れる散策路がある。少し上り坂になっており、それを進むとすぐに公園の南端を東西に延びる舗道に繋がる。これは東側の「北部病院口」から降りてきて西の「渋沢口」へ至る舗道で、公園内の散策路というよりは「センター南」駅周辺と公園西側の荏田東四丁目の住宅街を繋ぐ舗道としての役割を持っているように思える。この舗道を辿って西へ進むと、「蛍見橋」という風雅な名の人道橋を渡って「ささぶねのみち」と名付けられた緑道へと至っている。「ささぶねのみち」を南へ辿れば鴨池公園へもそれほど遠くはない。
都筑中央公園
都筑中央公園−西の尾根道
「ばじょうじ谷戸池」の横を抜け、南へ逸れずにそのまま西へ散策路を辿れば、すぐに「ばじょうじ谷戸口」へ達し、その向こうは荏田東四丁目の住宅地だ。「ばじょうじ谷戸口」の手前、北側の丘へ登ってゆく小径がある。今はきちんと整備されているが、かつては尾根筋へ辿る山道だったのだろう。今もその面影が随所に感じられる。小径脇の木々の様子も昔ながらの里山の佇まいを残していて楽しい。坂道を上るにつれて北へ視界が開けた場所もあり、その眺めを楽しみながらさらに登ると、やがて尾根道へ達する。左手、東側に「ばじょうじ谷戸」を見下ろす尾根で、木々の隙間に「ばじょうじ谷戸休憩所」の建物などが見え隠れする。

都筑中央公園−西の尾根道
ほぼ真っ直ぐに尾根道を進むと、やがて道は東に屈曲する。そのまま進むと、「ばじょうじ谷戸」の奧の竹林の中を登ってきた小径が合流し、そのすぐ東側で尾根道が二手に分岐する。分岐を北へ辿れば「清水谷戸」だ。分岐を右手へ、そのまま東へ進むと道は緩やかに南へ曲がって「ステージ広場」の上方へと至っている。この尾根道の佇まいがいい。昔から尾根伝いに小径が抜けていたらしい様子がうかがえる。途中、北方へ視界が開けた場所がある。そこからは「清水谷戸」を見下ろし、さらにその向こうの街並みが見えている。なかなか爽快な眺めだ。
都筑中央公園−清水谷戸
「ステージ広場」の北方には「清水谷戸」と呼ばれる谷戸がある。谷戸を挟む東西ふたつの尾根筋に小径が設けられ、鬱蒼とした林の中を辿って谷戸へ降りてゆくことができる。谷戸は草はらの広場になっており、南側の駅周辺の街並みからは丘によって隔てられているために、ひっそりと静かだ。広場の中央には小川らしいものがあったが、訪れたときには水は流れていなかった。広場は「清水谷戸口」という公園入口にもなっており、そこから外へ出ると茅ヶ崎中央の西端部の住宅地だ。幹線道路から距離があるためか、車の騒音も遠く、住宅地もひっそりとしている。

都筑中央公園−清水谷戸東側の尾根道
「清水谷戸」へと降りてゆく尾根筋の小径の佇まいがなかなか素敵だ。木々の間を縫って細い尾根を辿る小径はもちろん未舗装で、昔ながらの山道という風情だ。特に東側の尾根筋を辿る小径がいい。もちろん柵を設けるなどの整備の手が加えられているものの、必要最小限の整備というふうで、ちょっと足を滑らせると脇の斜面へ転がり落ちそうな、なかなか野趣溢れる小径だ。都筑中央公園の中でも、この辺りが最も雑木林散策の醍醐味を味わえるところではないかと思える。
都筑中央公園
都筑中央公園−境田谷戸
「ステージ広場」の北側から北東の方角へ延びる散策路を辿って行くと「境田谷戸」へと降りてゆくことができる。それほど広くはないが、「境田谷戸」にも草はらの広場があり、その一角に公園管理詰所が置かれている。谷戸を降りる散策路の脇には小川らしきものが沿っているのだが、訪れたときには水の流れはなかった。「境田谷戸」はそのまま「境田口」という公園入口となっている。「ステージ広場」方面から「境田谷戸」へと降りてきて公園内の散策を続けるには降りてきた散策路を再び戻らなくてはならない。
都筑中央公園−境田貝塚
「境田谷戸」南側の尾根のあたりが「境田貝塚」だ。「境田貝塚」は草はらの広場になっており、脇の方にはテーブル付きの木製ベンチも設置されている。のんびりと一休みするのによい場所だ。「境田貝塚」という名が示すように、この付近には古代の人々が貝殻を捨てた「貝塚」の遺跡があるという。約8000年ほど前の縄文前期の遺跡なのだそうだ。その頃にはこの近くまで海だったのだという。それを思うと、不思議な気持ちになる。特に遺跡に関する解説板などは設置されていないようで、どこに遺跡があるのかもよくわからないのが残念だ。
都筑中央公園−杉山神社前
「境田貝塚」の広場の東側には杉山神社がある。「境田貝塚」の方から降りてゆくと神社の背後から脇へとまわりこむ形になってしまうが、いったん外へ出て、きちんと鳥居をくぐり、参道を辿って参拝をしておきたい。東側正面から見る鳥居付近の風景がいい。緑の丘を背負って白い鳥居の建つ姿は古い時代の農村の風景を彷彿とさせるものだ。現在は神社前には「中山・北山田線」という広い道路が通っており、交通量も多いために、とても静かとは言い難いが、こうした風景が残されているのは素敵なことではないかと思える。鳥居前には「宮谷戸の大池」からの小川が流れている。この小川の岸辺の様子も素敵だ。鳥居前から少し北へ行けばすぐに早渕川だ。早渕川の河畔へ足を延ばしてみるのも楽しい。
都筑中央公園−杉山神社前都筑中央公園−中山・北山田線
杉山神社の南側には駐車場が置かれている。駐車場は有料で数十台分の駐車スペースがあるが、公園の規模から考えれば休日などには足りないだろう。「中山・北山田線」に面して駐車場入口が設けられている。

都筑中央公園−円形広場から宮谷戸の大池を望む
駐車場の南側、駐車場と一体になるような造りで「円形広場」がある。「円形広場」は公園の東南の角にあたり、その名のように円形に造られた広場で、車を使って公園に訪れた人にとってはこちらがメインエントランスとしての役割を持つ場所だろう。この辺りは公園の中で唯一「造られた」観のある一角で、オブジェ的な壁面に囲まれた円形のスペースがあるためにこの名があるのだろう。「円形広場」の正面はスロープとなって、その向こうには「宮谷戸の大池」が横たわっている。ここから見る大池の景色がなかなか美しい。

「円形広場」の西側には都筑中央公園里山倶楽部の事務所を兼ねたレストハウスがある。レストハウス内には公園が整備される以前の宮谷戸の風景など、昔の風景をとらえた写真なども展示されており、興味深い。レストハウス前の舗道を西へ辿ると「中央口」へ、さらに「北部病院口」へと、公園の南端の外縁部を辿ってゆくことができる。

都筑中央公園−ローザ・つづきく
公園に訪れたのは五月中旬、「円形広場」の一角に設えられた花壇でバラが咲き誇っていた。「ローザ・つづきく」という名のこのバラは、フランスのアンジェ市近郊、オービニエ・スール・レイヨンで作られた新品種で、都筑区との友好関係を記念して2000年に名前が付けられ、都筑区に贈られたものという。外周部が白く、中心部がピンク色をしており、白からピンクへのグラデーションが繊細で柔らかな印象の美しい花だ。カメラを携えて花を見てゆく人の姿もあった。バラの咲く五月の土日はバラまつりも開催されるようだ。花の好きな人、特にバラの好きな人であれば、ぜひ見ておきたいものだろう。
都筑中央公園−ローザ・つづきく
都筑中央公園−宮谷戸の大池
「円形広場」の西側の奧が「宮谷戸」だ。「宮谷戸」と書いて「みやと」と読む。本来は「みややと」だったものが短く転じたものか。杉山神社の近くの谷戸であるところから、このような名になったのではないだろうか。谷戸には池が横たわっている。「宮谷戸の大池」と呼ばれるこの池は、公園として整備されたときに造られたものかもしれない。池は特筆するほど規模の大きなものではないが、こうした公園の中の池としては充分に広い。緑の丘に囲まれて横たわる池の表情がとても美しく、眺めていても飽きない。「円形広場」横のスロープに腰を下ろして眺めていると時間の経つのを忘れる。池の北側の岸辺に沿って散策路が辿っており、のんびりと水辺の散策を楽しむこともできる。

都筑中央公園−宮谷戸
「宮谷戸の大池」の西側へ回り込み、谷戸の奧へと進むと水田の跡らしい場所がある。耕作されなくなってずいぶん経つようだが、谷戸中央の窪地とそれを区切る畦らしい部分などにかつての水田の名残を見つけることができる。昔はこの谷戸田で稲作が行われていたのだろう。その真ん中に立って、木々の茂る尾根に挟まれた空を見上げながら、かつてこの場所に水が張られ、田植えが行われ、稲刈りが行われていた頃を思ってみると感慨深い。谷戸の奥まった林の中には炭焼き小屋もあり、辺りは里山の風情を色濃く残している。

「宮谷戸」の奧へと続く散策路は、そのまま坂を登って「ステージ広場」と「境田貝塚」を結ぶ道へと合流する。また、炭焼き小屋近くから西へ、林の中の急坂を登ってゆくとすぐに「ステージ広場」上へと着く。
都筑中央公園
都筑中央公園
都筑中央公園は、「展望広場」から「ステージ広場」、「ばじょうじ谷戸」と続く一角と、「宮谷戸の大池」と「円形広場」、レストハウスなどを置く一角と、その両者が二つの「核」となって、その周囲の丘や谷戸を繋ぐ散策路が延びて構成されているという印象だ。随所に公園内の案内図が設置されているから、初めて訪れたときにはその案内図から公園の構成を把握しておくとよい。

主要な散策路は舗装されて幅も比較的広く、ところどころに坂道はあるものの、ベビーカーや車椅子を利用している人でもそれほど困らないだろう。トイレはレストハウスのものを含めて「円形広場」周辺に三つ、さらに「展望広場」横、「ばじょうじ谷戸休憩所」に設けてあり、困ることはない。レストハウスにドリンク類の自動販売機が設置されているが、他にレストランなどはない。横浜市営地下鉄「センター南」駅が近いから、駅前の飲食店を利用することもできるが、やはりお弁当を持参してのアウトドアランチがお薦めだ。レストハウス横に小さな子どもたちのための遊具を置いた一角があるが、近所の暮らす人たちのために用意された必要最小限のものでしかなく、基本的に公園内に遊具類は置かれていない。

都筑中央公園
公園の管理を担う都筑中央公園里山倶楽部ではさまざまな活動を行っているようだ。近くに暮らす人でこのような活動に興味のある人は里山倶楽部の会員になるとよいだろう。来訪者の立場であっても、里山の自然を残した公園の佇まいはとても魅力的だ。見晴らしの良い尾根道や鬱蒼と木々の茂る雑木林、尾根に囲まれた谷戸の風情など、存分に楽しむことができる。雑木林散策が趣味の人なら見逃せない公園と言ってよい。家族連れでピクニック感覚で訪れるのもいい。遊具類がなくても、「野山を駆け回る」感覚で子どもたちも楽しんでくれることだろう。訪れた五月の半ば、「円形広場」のバラも美しく、林の新緑は日増しに濃くなり、その中でエゴノキの可憐な花がたくさん咲いていた。春の芽吹きの頃秋の紅葉の頃も美しいに違いない。四季折々に訪ねてみたい公園だ。
都筑中央公園