神奈川県横須賀市の市街地に「どぶ板通り」と通称されるところがある。「どぶ板通り」は商店街で、米海軍の基地を抱える町だけあってミリタリー関連の物品を扱う店も少なくない。五月の初め、「どぶ板通り」を訪ねた。
どぶ板通り
どぶ板通り
神奈川県横須賀市の中心部、京浜急行汐入駅から東へ、米海軍横須賀基地正面辺りの国道16号に沿った商店街の一帯を「どぶ板通り」と呼ぶ。町名としては「本町」なのだが、「どぶ板通り」という通称の方が広く浸透しているようだ。横須賀はかつて旧日本海軍の軍港のある町として栄えた土地柄だが、その当時、本町一帯の通りにはドブ川が流れていたという。どのドブ川が人々や車の往来に邪魔だというので、海軍工廠から厚い鉄板を提供してもらって蓋をしたのだそうだ。そのことから「どぶ板」の名が生まれたのだという。現在はもちろんドブ川はなく、「どぶ板通り」の名だけが残っているというわけだ。
どぶ板通り
どぶ板通り
どぶ板通り
どぶ板通り
戦後は横須賀に米軍が駐留、その米軍人相手の歓楽街として栄えた。バーやハンバーガーショップなど、アメリカンスタイルの店が並び、以前は帰国した米兵に送る手紙を翻訳する店も多かったらしい。米軍人向けの土産物を扱う店も少なくなく、いわゆる「スカジャン」は横須賀に駐留していた米軍の兵士たちが記念として龍や虎などをあしらった和風柄の刺繍を施したジャンパーをオーダーしたのが始まりという。当初は兵士たちが持参したパラシュート生地で作られたそうだ。蛇足ながら「スカジャン」はもちろん「ヨコスカジャンパー」のことだ。

戦後からしばらくは少しばかり猥雑な雰囲気も漂う町だったようだが、現在ではその当時の面影を残しつつ、現代的な商店街に姿を変え、広く人気を集めるようになった。ドブもドブ板も姿を消したが、ドブ板を模したコンクリートブロックが往時を偲ばせる。アメリカの雰囲気が漂う町並みは「観光地」としても認知されるようになり、市内、県内のみならず、遠方からも客が訪れるという。

「どぶ板通り」にはさまざまな店が並ぶ。戦後の間もない頃から続く“老舗”も残っているという。通り沿いに並ぶ店は必ずしも“アメリカ風”の店ばかりではないが、他の地域の古い商店街とは明らかに違った独特の風情を漂わせている。かつて米兵を相手に栄えた街だが、今では日本人観光客が客層の中心なのだろう。米軍の放出品などを扱う店やアメリカンカジュアルファッションを揃えた店などが人気のようだ。
どぶ板通り
観光客の立場であれば、そうした店々を巡りつつ、街の雰囲気を楽しみながらの散策がお勧めだろう。「どぶ板通り」の中に「ドブイタステーション」という施設がある。観光客向けの観光情報などを提供する施設で、土産物などの販売も行っている。「ドブイタステーション」でしか買えない“限定品”もあるようだ。観光に訪れた人なら立ち寄っておくといい。
どぶ板通り
今回訪れたのは五月初めの連休中で、折しも「どぶ板バザール」が開催されており、「どぶ板通り」はたいへんな賑わいだった。多くの人出で賑わう商店街ももちろん楽しいものだが、普段の姿の「どぶ板通り」も訪ねてみたい気がする。バーのネオンが目立つ時刻を過ぎると、「どぶ板通り」はまた別の顔を見せ、今でも米兵の姿が多いという。それが「どぶ板通り」の本来の姿なのかもしれない。それを見てみたいとも思う。
どぶ板通り
参考情報
交通
「どぶ板通り」へは京浜急行の汐入駅が至近だ。駅前から東へ200mほど進めば「どぶ板通り」だ。京浜急行の横須賀中央駅やJR横須賀線の横須賀駅からも徒歩で10分ほどだ。

車で来訪する場合は横浜横須賀道路を南下し、横須賀ICから本町山中有料道路を経由するとわかりやすい。あるいは横浜市方面から国道16号を南下するのもわかりやすい。

「どぶ板通り」周辺に時間貸駐車場が点在しているが、初めて訪れるときには場所がわかりにくいかもしれない。「どぶ板通り商店街」では近くにある「ショッパーズプラザ横須賀」の駐車場の利用を推奨している。「どぶ板通り商店街」にも買い物に応じて駐車料金の割引が受けられる店があるようだ。

飲食
「どぶ板通り商店街」にも飲食店があり、また周辺は横須賀市中心部の市街地なので飲食店は数多い。散策しながら好みの店を探せばいい。

テイクアウトのものを買い求めてヴェルニー公園辺りへ足を延ばしてアウトドアランチを楽しむのもお勧めだ。

周辺
「どぶ板通り」の北西側、海岸に面してヴェルニー公園という公園がある。バラの名所としても知られる公園だ。また北東側にある三笠公園には明治時代の戦艦「三笠」が展示されている。興味のある人は足を延ばしてみるといい。

JR横須賀線横須賀駅から一駅、田浦駅へ移動すれば「田浦梅の里」が近い。梅の季節には足を延ばすのもお勧めだ。

また、少し距離があるが、南方の山側には横須賀しょうぶ園がある。花菖蒲の花期にはぜひ訪ねてみたい名所だ。
町散歩
神奈川散歩