神奈川県横須賀市の「くりはま花の国」は四季折々の花が楽しめる公園だ。特に春のポピーや秋のコスモスは有名で、大勢の行楽客が訪れる。コスモスが咲き誇る十月中旬、くりはま花の国を訪ねた。
神奈川県横須賀市の南東部に位置する「くりはま花の国」は、その名が示すようにさまざまな花が楽しめる名所として知られている。特に春のポピーや秋のコスモスは有名で、花の盛りの時期には大勢の来園者を迎えて賑わう。丘陵の尾根を巧みに活かした園内からは久里浜港や浦賀水道の眺めを楽しむこともできる。丘を吹き渡る海風も爽快な、素敵な公園だ。
「くりはま花の国」は神奈川県横須賀市の南東部、三浦海岸と浦賀の街の間辺りの丘陵地に設けられている。横須賀市立の都市公園で、かつて米軍の倉庫があった場所を返還後に「久里浜緑地」として整備したものだ。面積は58haを超える広大なもので、その中に「ポピー・コスモス園」や「冒険ランド」、「ハーブ園」、「県木の広場」といった各種施設が設けられている。売店やレストランが設けられているのも嬉しい。
ポピー・コスモス園
「くりはま花の国」の代名詞とも言えるのが正面入口奥に設けられた「ポピー・コスモス園」だ。2ha以上に及ぶ敷地面積を誇る。その名の通り、春にはポピー、秋にはコスモスが植えられ、花が盛りを迎える時期には大勢の来園者を迎える。「ポピー・コスモス園」は尾根と尾根の間、すなわち“谷戸”の地形となったところに設けられている。開放感には乏しいが、何しろ広いので閉塞感などはまったく感じない。かえって緑に囲まれて落ち着いた空気感を漂わせているのがいい。
十月中旬、まだまだコスモスの見頃が続いている。2ha超の敷地にコスモスが咲き誇る景観は圧巻と言っていい。「ポピー・コスモス園」はほぼ南北の方向に延び、さらに緩やかな斜面になっている。北側の正面入口側が低く、南側の奥にいくにしたがって少し高くなる。正面入口側から見る景観は特に美しく、逆光の中に浮かぶコスモスがたいへんに美しい。奥側から見下ろすように眺めるのも、また別の味わいがあって素晴らしい。
「ポピー・コスモス園」は花畑の中を縫うように小径が辿り、花を間近に見ながら散策が楽しめるのがいい。気の向くままに小径を巡れば花畑の表情はさまざまに変わり、その景観の美しさに飽きることがない。あちこち場所を変えて良い構図を探してカメラを構えるのも楽しいひとときだ。花の好きな人、花の写真趣味の人なら、何度も繰り返し訪ねたくなるに違いない。
冒険ランド
「ポピー・コスモス園」の奥を回り込むように園路を辿れば、丘上の立地で「冒険ランド」が設けられている。「冒険ランド」はさまざまな遊具を設置した、子どもたちのための遊び場だ。海をモチーフにしたアスレチック遊具や大型の複合遊具、いわゆる“ターザンロープ”などが用意されており、かなり充実している。小さな子どものいるファミリーには魅力的なところだろう。
「冒険ランド」内の施設でひときわ目を引くのが「ゴジラのすべり台」だ。滑り台を設けた巨大なゴジラの像で、その姿はまさに映画に登場するゴジラそのものだ。今ではすっかり「くりはま花の国」のシンボルのひとつになった感がある。
「ゴジラのすべり台」は、かつて多々羅浜(観音崎公園南端部の浜辺)にあった。初代ゴジラが上陸した地とされていることから設置されていたのだが、老朽化のため1973年(昭和48年)に取り壊されている。それを、いわば“復活”させたのが「くりはま花の国」の「ゴジラのすべり台」だ。“復活”にはいろいろ苦労もあったようだ。設置された案内板に“復活”の経緯などが記されているので目を通しておきたい。
県木の広場
「冒険ランド」から園路をさらに(東へ)辿っていくと、園路の南側に「県木の広場」が設けられている。各都道府県はそれぞれ郷土の木を定めている。例えば東京都の「都の木」や神奈川県の「県の木」はイチョウだ。そうした各都道府県の木を集めた広場だ。広場内の散策路を巡りながら、各都道府県の木を見ていくのも楽しい。香川県のオリーブや宮崎県のフェニックスなどは寒冷地を嫌い、関東でも温室内などに植えられることのある樹木だが、それらの姿も見られるのは三浦半島南端部の温暖な気候が奏功しているのだろう。
くりはまKidsガーデンとハーブ園
「県木の広場」前からさらに園路を東へ辿っていくと、園内最東部のエリアだ。尾根筋から北へ降りた平地部分に「くりはまKidsガーデン」と「ハーブ園」が設けられている。
「くりはまKidsガーデン」はその名の通り、子どもたちの遊び場として設けられており、大型の複合遊具が設置されている。「冒険ランド」ほどではないが、子どもたちは充分に楽しめるだろう。
「くりはまKidsガーデン」の横手は「ハーブ園」だ。各種のハーブ類の植物が植えられている。約80種8000株のハーブが集められているという。訪れるならハーブの花が咲く春から初夏にかけてがお勧めだ。
「くりはまKidsガーデン」と「ハーブ園」の設けられた広場の東側、丘陵の斜面を利用して長いすべり台が設けられている。全長38mだそうだ。すべり台の上部は茂った木々に隠れ、木々の中から滑り降りていく感覚だ。なかなか楽しそうだ。
レストラン ロスマリネス
「くりはまKidsガーデン」と「ハーブ園」の東側、丘の上の立地でレストラン「ロスマリネス」が建っている。メニューはそれほど豊富なわけではないが、ハンバーグのプレートやカレー、パスタ、ピザなどが用意されており、食事を楽しむにも充分だ。辛口の「ゴジラカレー」が名物として人気のようだ。「花の国はちみつパンケーキ」などのスイーツもあるからティータイムにもいい。
レストランの建つ場所は公園内でも高所になるところで、特に東側に視界が開けて開放感に溢れている。東側、眼下には久里浜港を望み、さらに浦賀水道から房総半島まで見渡すことができる。素晴らしい眺望だ。レストランの窓側の席やテラス席ならその眺望を楽しみながらの食事が可能だ。「くりはま花の国」と訪れたときは、特に初めて訪れたときには、ぜひともこの眺望を楽しんでおきたい
送電鉄塔の建つ風景
「くりはま花の国」のある丘陵の上を複数の送電路が通っている。東側に横須賀発電所があるからだ。「くりはま花の国」の敷地内にも(もちろん立ち入りはできないが)複数の送電鉄塔が建っている。自然溢れる景観の中にこうした人工物があるのを無粋と思う人も少なくないと思うが、送電鉄塔の建つ景観に魅力を感じる人もある。緑濃い丘陵の中に屹立する巨大な人工物の姿は独特の興趣を漂わせているのも確かだ。“送電鉄塔の建つ風景”に魅力を感じる人にはお勧めの「くりはま花の国」である。
「くりはま花の国」は、その名のように“花の名所”として知られ、特に春のポピーや秋のコスモスが有名だが、尾根筋を辿る園路を辿るだけでも楽しい。場所によって海が見え隠れするのもいい。園内は広く、高低差もあるから、園内を巡るには相応の距離を歩かなくてはならないが、歩くだけでも充分に楽しい公園だと言っていい。歩くのに疲れたら、園内を運行しているフラワートレインを利用するのも楽しい。行楽地としての魅力も充分。お勧めの公園だ。
くりはま花の国は入園料は必要ない。無料で入園できる。休園日・休園時間などはなく常時開園だが、園内施設は営業日と営業時間が設けられている。詳細は指定管理者による公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
くりはま花の国へは京急久里浜線京急久里浜駅が近い。京急久里浜駅東口からくりはま花の国正門まで約1km、20分ほどで着く。
くりはま花の国には来園者用の駐車場(有料)が設けられており、車での来園も便利だ。第一駐車場(79台)、第二駐車場(247台)、臨時駐車場(102台)が設けられている。第二駐車場の方が広く、アクセスもわかりやすい。駐車場の場所や駐車料金など、詳細は指定管理者による公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
遠方から車で訪れる場合は横浜横須賀道路を利用し、佐原ICで降りれば近い。
公園内に「ロスマリネス」というレストランがあり、カレーやハンバーグ、パスタ、ピザなどを提供している。眺めのいいレストランで、久里浜港や浦賀水道の景色を楽しみながら食事できる。「ロスマリネス」の横には「天空BBQ」というオープンテラスのバーベキューガーデンがある。事前予約制で、手ぶらでBBQを楽しめる。詳細は指定管理者による公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
正面入口横手には「うおくに」という和風レストランが建っており、御膳ものや丼、麺類などを提供している。
お弁当持参で訪れて、園内に場所を見つけて“青空ランチ”を楽しむのもお勧めだ。レジャーシートを持っていこう。
くりはま花の国の北東側は久里浜港だ。第二駐車場から海岸まで数百メートル、足を延ばして海岸散歩を楽しむのもお勧めだ。さらに北東側へ辿れば浦賀の街、
観音崎公園
も遠くない。
国道134号を西へ向かえば三浦海岸も近い。車で訪れた際はドライヴを楽しむのお勧めだ。
くりはま花の国(指定管理者公式)
観音崎公園