橘公園の東側の一角、宮崎観光ホテル前に川端康成「たまゆら」文学碑が建っている。この文学碑は、川端康成の「たまゆら」執筆の記念碑として1987年(昭和62年)に建立されたものだ。
川端康成は1964年(昭和39年)11月、取材のために宮崎を訪れ、大淀川河畔の宮崎観光ホテルに滞在、「たまゆら」を執筆した。川端康成は当初、2泊の予定で宮崎を訪れたそうだが、客室バルコニーから見える夕日の景観に感動し滞在を延長、滞在期間が約2週間になったことはよく知られている。
「たまゆら」は1965年(昭和40年)から1966年(昭和41年)にかけて放送されたNHK連続テレビ小説、いわゆる“朝ドラ”の「たまゆら」の原作で、川端康成にとっては初のテレビ書き下ろし、主演を務めた笠智衆もテレビ初出演であったという。昭和40年代に宮崎は新婚旅行先として人気を集め、宮崎は空前の観光ブームに沸くのだが、「たまゆら」の放送はそのひとつのきっかけになったとも言われる。
1964年(昭和39年)に宮崎を訪れた川端康成は宮崎観光ホテルの西館A棟、和洋室のある522号室に宿泊した。ホテル側は2014年(平成26年)頃から建物の耐震化に伴うリニューアルを検討、西館の全客室は洋室に改装される予定だったが、川端が宿泊した部屋の保存を求める声も多く、2019年(平成31年)3月、522号室に限って間取りや内装をそのまま維持することをホテル側が決定している。以後、同室は川端縁の資料などを展示しつつ、客室として活用するという。