長野県上田市の中心街から南西に10km余り、夫神岳の山裾に別所温泉がある。別所温泉の開湯がいつ頃だったのかははっきりとしないようだが、かなり古いことは確かなようで、日本最古の温泉のひとつであるとも言われる。温泉街の一角に設けられた「別所温泉の由来」には、日本武尊が東征した際に発見したと記されている。その解説板によれば、泉質は女性の肌によく、かつては近郷の娘が嫁入りする際に別所の湯に入って肌を整えてから嫁いだと言われているそうだ。別所温泉の東方、すなわち上田市中心部の南西側に広がる盆地を「塩田平」というが、塩田平は古代から肥沃な土壌と穏和な気候に恵まれ、人々の営みが盛んな土地柄だったようだ。北向観音をはじめとする古刹、古社が点在するのもそのためだろう。