青島駅を出た志布志方面行きの列車はすぐに折生迫の駅に着く。「折生迫」はこの辺りの地名で、「おりゅうざこ」と読む。折生迫駅は
青島駅から1kmほどしか離れていないが、観光地的風情は消えて駅近くまで山肌が迫り、山間の鄙びた駅を思わせる佇まいだ。
折生迫駅は、そもそもは
赤江駅(後に大淀駅、さらに南宮崎駅に改称)と内海駅とを結んで1913年(大正2年)に開業した宮崎軽便鉄道(後に宮崎鉄道に改称、さらに合併により宮崎交通へ移行)の路線に設けられた駅だったが、1962年(昭和37年)6月に軽便鉄道が営業を終了したのに伴って一旦は廃止されている。軽便鉄道に代わって1963年(昭和38年)5月に全線開通した日南線には当初折生迫駅が設けられておらず、日南線折生迫駅が設置されたのは1966年(昭和41年)のことだ。宮崎軽便鉄道時代とは駅の場所は異なっているから、正確には日南線折生迫駅の開業は1966年(昭和41年)とするのが正しいのかもしれない。
折生迫駅はもちろん無人駅だ。駅は脇の道路から少し高くなっており、スロープを上がって改札口がある。屋根とベンチが設けられた片側使用のホームがあるだけで、駅舎と呼べるようなものはない。線路の向こう側にはすぐ近くまで山肌が迫っている。駅の横はすぐに道路で、「駅前」としての佇まいはまったく無い。駅の正面には青島小学校と数戸の住宅が建っており、さらに駅前の道路を南へ辿ると青島中学校がある。駅の周辺、特に南東側は田園地帯で、山々に囲まれて長閑な風景がひっそりと横たわっている。
駅から青島小学校前を東へ抜ける道路は300メートルほどで県道377号へ至っている。この県道377号はかつての国道220号だが、山間部を抜ける通称「青島バイパス」が2005年12月23日に全面開通し、そちらが国道220号となって旧国道220号は県道になった。新国道220号は折生迫駅の西側の丘の向こうを抜けており、駅南側の踏切を渡る道路が国道へと接続する。
折生迫駅はもっぱら地元の人々が利用する。地理的には
白浜海水浴場の最寄り駅であるはずだが、折生迫駅を利用する海水浴客はほとんどないだろう。観光客らしい人が乗り降りする姿を見ることもほとんど無い。折生迫駅から南へ向かう日南線はトンネルを抜けて
内海の町に至る。
内海駅を過ぎてようやく、日南線の車窓から海が間近に見えるようになる。