国道220号から逸れた県道377号を南下し、
青島の入口を過ぎて折生迫の町並みを抜けてゆくと、小さな川を渡って「白浜入口」の交差点がある。そのまま真っ直ぐに進んでゆくと山間を抜けて
堀切峠へと至るのだが、交差点を左へ、すなわち海側へと折れて進んでゆくと、白浜という集落がある。そのまま家々の並ぶ中を抜けてゆくと、美しいビーチに着く。「白浜海水浴場」だ。
「白浜」という地名は全国各地に存在する。美しい砂浜を言い表す呼称として一般的なものなのだろう。宮崎市南部に位置する、この「白浜」も、その名に恥じない美しい砂浜を抱えている。浜辺は緑濃い山肌を背負って横たわり、両脇には岬が張り出し、そのため海岸の開放感の中にもひっそりと山々に囲まれた静けさを携えている。眼前には海原が広がり、水平線が長く延びているが、北方に目をやれば遠く
青島の姿を見ることができる。
宮崎市近郊の海水浴場として人気は高く、夏になると多くの海水浴客を集めて賑わう。海水浴場としての設備も必要なものは揃っており、特に不便を感じることもないだろう。昔ながらの素朴な意匠の「海の家」もなかなか楽しい。海水浴場の隣にはキャンプ場があり、夏空の下でカラフルなテントが日差しを浴びている。海水浴場とキャンプ場が並ぶ辺りは端正に整備されており、植栽された椰子や蘇鉄の姿と夏空の組み合わせも景観としてたいへんに美しい。海岸に沿った遊歩道も整備されており、美しい孤を描く砂浜や北方に浮かぶ
青島の島影を眺めながらの散歩も楽しいものだ。
白浜海水浴場へ訪れるには車が便利だ。海水浴場横に有料駐車場が用意されているが、駐車台数にあまり余裕がないのが難点かもしれない。鉄道ではJR日南線の
折生迫駅が最寄り駅ということになるが、折生迫駅から歩いて白浜海水浴場へ訪れるには少しばかり距離があり、あまりお勧めとは言えない。バス路線を使ってもよいが、便数が多くないため、注意が必要だ。
海岸から少し離れて家々の並ぶ中を歩いてみるのも楽しいものだ。鄙びた海辺の町の佇まいが夏の日差しを浴びる様子には不思議な郷愁を覚える。歩いていると、小公園のような広場の四阿で地元のお年寄りが談笑していたりする。会釈を交わして行き過ぎるのも楽しい。かつて宮崎軽便鉄道が走っていた時代、軽便鉄道の路線が白浜の集落を抜けて戸崎鼻の岬を廻って堀切峠下の海岸に沿って
内海に至っていた。その頃には「白浜」の駅もあったが、その名残を探すのも今では難しくなってしまった。
白浜海水浴場は宮崎を代表する観光地のひとつである
青島に近い立地でありながら、その知名度は決して高いとは言えない。宮崎県も宮崎市も白浜海水浴場を観光資源として利用するのにあまり積極的ではないようにも見える。そのため、観光客は
青島海水浴場へ、地元の人たちは白浜海水浴場へと、利用者の傾向が分かれているようにも思える。しかしかえってそのことで、白浜海水浴場は昔ながらの素朴さを保ち続けているのかもしれない。その素朴さに魅力を感じる立場としては、白浜海水浴場の知名度が高くなって欲しいと思う一方で、いつまでも地元の人たちのためのひっそりとした海水浴場であって欲しいとも思ってしまうのだ。