青島駅は、説明するまでもなく、有名な観光地である
青島への鉄路の玄関口だ。「鬼の洗濯板」や島内に鎮座する
青島神社などで有名な青島は古くから景勝地として知られ、訪れる人も多かったようだ。青島駅という駅は宮崎軽便鉄道が大淀駅(現在の南宮崎駅)と内海港を繋いでいた頃から存在していたが、現在の青島駅の実質的な始まりは日南線が全線開通する1963年(昭和38年)のことである。
駅舎は日南線が全線開通した際の開業時から使われているものだが、2020年(令和2年)にリニューアルされ、白と青を基調にした外観に生まれ変わった。浜辺の白砂と青い海や空を連想させる色彩は“海外のビーチハウスを思わせる”とも評され、まさに青島駅の意匠に相応しいものだ。地元の人にも好評だという。現在はもちろん無人の駅だが、
青島への玄関口としての面目は保っている印象だ。
駅舎前にはワシントン椰子が立ち、南国の駅としての風情を漂わせている。駅前にはロータリーがあり、中央部の緑地帯にも椰子が植えられている。ここから青島入口へ至る道路は広く造られた歩道に水路が設けられ、植栽された南国の木々が陰を落とし、南国情緒溢れるプロムナードとして演出されている。
青島駅は宮崎観光の重要な拠点であったこともあり、二面のホームと三本の線路が設けられており、日南線の駅としては規模の大きな方だと言えるだろう。ホームにも蘇鉄やサボテンが植えられ、南国ムードを漂わせている。駅名標は青島神社の鳥居とサーフィンの様子を描いたイラストをあしらったカラフルなものだ。
駅舎のすぐ南側で歩道橋が線路を跨いで東側と西側とを繋いでいる。青島駅の出入口は東側(海側)のみで、“西口”は設けられていない。線路の西側と行き来するためにはこの歩道橋を渡らなくてはならない。この歩道橋の上から、青島駅のほぼ全貌を見下ろすことができる。鉄道ファン、駅舎ファンの人なら、ぜひこの歩道橋からの眺めも楽しんでおこう。
青島駅が最も賑わったのは宮崎が新婚旅行先として脚光を浴び、宮崎観光ブームに湧いた昭和40年代(1960年代後半から1970年代前半)だっただろう。休日ともなると上り下りの列車が駅に着くたびに観光客や家族連れなどが多く降り立ち、“観光宮崎”を代表する観光地としての賑わいを見せたものだった。現在の日南線でも南宮崎から青島までの区間は比較的利用客も多く、この区間のみを運転する列車も何便か存在するが、多くの観光客が車を利用する時代になって、やはり往時の賑わいは無い。夏の日を浴びて静かな時間が流れる青島駅である。