日南市飫肥の中心部から国道222号を西へ十数キロ、酒谷キャンプ場入口からさらに500mほど辿ったところに、「小布瀬の滝」への入口の道が左へ降りている。細道を降りていった先に観光用駐車場が設けられ、そこから数十メートル行った左手に朱い鳥居が建っている。鳥居脇には小さな社が祀られており、その横を小径が山間へと辿っている。辿っていった先に「小布瀬の滝（こぶせのたき）」と呼ばれる滝がある。

鳥居をくぐって小径を辿っていけば、小径は沢に沿って延び、やがて崖に囲まれた窪地で行き止まりになる。その崖に一筋の滝が落ちている。「小布瀬の滝」である。現地に設けられた案内板によれば、滝は高さ23m、滝幅3m、滝壺直径は15mだそうである。周囲は鬱蒼と木々が茂り、滝壺を囲む崖も苔や草木に覆われている。辺りには滝の音だけが響き、まったく深山幽谷の趣である。

「小布瀬の滝」にはひとつの伝説がある。昔、継母が先妻の子を殺害しようと、この滝の上に連れてきて突き落とした。ところがその子がいつの間にか自分の腰紐と継母の腰紐を結んでいたので、二人とも滝壺へ落ちて亡くなってしまった。このとき、小布が枝に引っかかって残っていたので、憐れに思った人々が「小布瀬の滝」と呼ぶようになったという。

「小布瀬の滝」は昔から日南市の観光名所のひとつとして知られているが、あまり有名とは言えず、普段は訪れる人も多くはない。しかし滝の姿は美しく、滝マニアでなくても訪れる価値があるように思える。滝壺を囲む崖の様相はジオツーリズム的な楽しみ方もできるだろう。滝壺周辺には苔が数多く、苔の愛好家にもお勧めだ。日南観光の際、できれば訪れてみたい場所のひとつと言っていい。