日南市街からさらに国道220号を南下し、
大堂津を過ぎて細田川に架かる橋を渡って河口側へと折れ、虚空蔵島の脇を抜けると目井津港だ。カツオ一本釣りとマグロ延縄漁の漁獲量では県内有数の漁港で、宮崎県南地域の漁業を支えている。一角には沖に浮かぶ大島とを繋ぐ連絡船の発着所もあり、建物脇には「トロピカルアイランド OHSHIMA」と題した大島のイラストパネルが建てられている。また目井津港は八月下旬に開催される「なんごう黒潮祭り」の会場となる場所としても知られている。
昼間の漁港はいたって静かだ。港内の海面は波もなく、ゆったりと夏の陽射しを浴びている。港の風情を感じながらのんびりと歩いてみるのは楽しい。岸壁に繋がれて休む漁船や船の保守作業を行う人の姿、片隅にさまざまな漁具が無造作に置かれている様子など、何気ない風景にも郷愁を誘うような風情がある。
2001年夏、目井津港の岸壁をのんびりと歩いていると、地元の人らしいおじさんに「どっかい来なさったと?(どちらからいらしたんですか?)」と声をかけられた。こちらがカメラ片手にあちこちを見て回っているので、観光客と思われたのだろう。実は地元の生まれで、帰省中なのだと説明し、ひととき世間話で時を過ごした。おじさんはすでに老齢のようだが、日に灼けて逞しい印象がずいぶんと若く見せている。若い頃から漁業に携わって日々を過ごして来られたのだろう。別れ際、「ゆっくりしていきないよ(のんびりしていってね)」と笑顔を向けて下さった。
その目井津港に2005年(平成17年)2月、「港の駅めいつ」という施設がオープンした。「港の駅」というネーミングは「道の駅」を意識したものだろう。地元の漁協が運営する施設で、レストランと売店で構成されている。日南市ではカツオ一本釣りやマグロ延縄漁が盛んだ。新鮮なカツオやマグロが手頃な価格で味わえるとあって、オープン以来遠方からも客が訪れて賑わっているという。刺身定食やにぎり鮨、元来は漁師料理だった「かつおめし」などが人気を集めているようだ。窓辺の席に座れば窓外に港の風景を見ながら食事を楽しむことができる。売店では水産加工品や鮮魚に加え、地場産の野菜なども扱っており、市価よりも安いとあって、これもなかなかの人気のようだ。2016年(平成28年)3月にはリニューアルされ、施設内に展望所が設けられている。