日南市街からさらに国道220号を南下し、
大堂津を過ぎて細田川に架かる橋を渡って河口側へと折れ、虚空蔵島の脇を抜けると
目井津の町だ。目井津は目井津港を抱える漁業の町だ。目井津港はカツオ一本釣りとマグロ延縄漁の漁獲量では県内有数の漁港で、宮崎県南地域の漁業を支えている。近年では「港の駅めいつ」が人気を集め、観光客も多く訪れる。
昼間の漁港はいたって静かだ。港内の海面は波もなく、ゆったりと夏の陽射しを浴びている。港の風情を感じながらのんびりと歩いてみるのは楽しい。岸壁に繋がれて休む漁船や船の保守作業を行う人の姿、片隅にさまざまな漁具が無造作に置かれている様子など、何気ない風景にも郷愁を誘うような風情がある。
目井津港の北側は虚空蔵島が地続きとなって、そこを利用した船溜まりが設けられている。港湾中心部とは桟橋で区切られ、小型の漁船やプレジャーボートなどが係留されている。静かに浮かぶ船の向こうにはこんもりとした姿の虚空蔵島が日差しを浴びて緑に輝いている。
虚空蔵島横の船溜まりを区切る桟橋のひとつは大島とを繋ぐ連絡船の発着場だ。待合所の建物には「トロピカルアイランド 大島」と書かれている。青と白を基調にカラーリングされた建物がトロピカルな雰囲気を漂わせている。大島は目井津港の沖合約2.5kmのところに浮かぶ無人島だ。島の中央部には「大島アドベンチャー・キャビン&コテージ」が設けられており、観光に訪れる人も少なくない。連絡船は市営で、1日4便が運航している。
目井津港のほぼ中央部に「港の駅めいつ」という施設が設けられている。「港の駅」というネーミングは「道の駅」を意識したものだろう。地元の漁協が運営する施設で、レストランと売店で構成されている。2005年(平成17年)2月にオープン、2016年(平成28年)3月にはリニューアルされ、施設内に展望所が設けられている。
日南市ではカツオ一本釣りやマグロ延縄漁が盛んだ。「港の駅めいつ」では新鮮なカツオやマグロが手頃な価格で味わえるとあって、オープン以来遠方からも客が訪れて賑わっている。刺身定食やにぎり鮨、元来は漁師料理だった「かつおめし」などが人気を集めているようだ。窓辺の席に座れば窓外に港の風景を見ながら食事を楽しむことができる。売店では水産加工品や鮮魚に加え、地場産の野菜なども扱っており、市価よりも安いとあって、これもなかなかの人気のようだ。
目井津港の岸壁に沿って南に歩いて行くと、小さな川があって二本の橋が架かっている。奥側(南側)に架かる橋を通る道路は宮崎県道448号目井津港線、目井津港の中だけを通る短い区間の県道だ。橋には「古港橋」との名がある。橋の上から南側を見ると、川の河口部を利用した船溜まりがある。「古港橋」という橋の名から推測すれば、この船溜まりが古い時代の目井津港だったのだろう。木々の茂る山を背負って静かに横たわる姿が郷愁を誘う。
「古港橋」を渡った先は目井津港の南東側の区域で、漁協や卸売市場、日南市南郷B&G海洋センターなどの建物が建っている。漁港としての表情を見ることのできるところだが、夏のお昼過ぎにはほとんど人の姿は無く、静かに暑い日差しだけが降り注いでいる。
日南市南郷B&G海洋センターの西側、背後の山から張り出した高所に霧島神社が鎮座している。伊弉諾尊、伊弉冉尊、彦火火出見尊の三柱の神を祀る神社だ。夏の日差しを浴びた朱塗りの社殿が鮮やかだ。神社の建つ場所はそれほどの高所ではないのだが、鳥居の前に立てば眼下に港湾の風景が広がる。まさに港を見守るように鎮まり、古くから目井津の人々の信仰を集めている神社である。
目井津港は“観光名所”と呼べるようなところではないが、「港の駅めいつ」に立ち寄った際、少し散策を楽しんでみるのも悪くない。港の北側の虚空蔵島や沖に浮かぶ大島などが美しい景色を織り成している。景観を楽しみながら漁港の風情を楽しむのもお勧めだ。