宮崎市方面から国道220号を南下し、
富土を過ぎて富土トンネルを抜け、さらに小目井を過ぎて短いトンネルを抜けると宮浦の集落だ。国道220号は美しい浜辺を左に見ながら海岸沿いを真っ直ぐに辿っている。国道の右手には家々が並び、その中を旧道が抜ける。宮浦の集落にはこれといった「観光名所」のようなものもないために、観光客のほとんどはただ国道を通り過ぎてゆく。家々の並ぶ細い旧道は閑寂な空気の中で静かな時間が流れている。
宮浦川河口部の、山々に囲まれたわずかな平地に家々が並び、宮浦の集落を成している。その中を旧道が抜けている。旧道を辿れば昔ながらの面影を残す家々が並び、川を渡る橋の佇まいにも郷愁を誘われるような興趣がある。集落の南端に近い辺りには鵜戸中学校が建っている。鵜戸小学校はさらに南の、鵜戸神宮入口近くの集落にあるのだが、鵜戸中学校はこの宮浦の集落に建っている。昭和22年(1947年)に鵜戸村立鵜戸中学校として開校したものという。集落を囲む山々の斜面は柑橘類の栽培に適し、特にポンカンの栽培が盛んだ。
宮浦の入江は南北を岬に挟まれ、小さな浜辺を抱えて横たわっている。浜辺の北側には小さな漁港があり、浜辺の南端部分には宮浦川が注いでいる。浜辺は海水浴場ではないが、夏になると波打ち際や宮浦川の河口で地元の子どもたちが遊んでいる。
漁港は小さなものだ。防波堤に囲まれた港の中は波もなく、碧の海面に漁船がひっそりと浮かんで長閑な風景を見せる。防波堤の突端に近いあたりでは釣りを楽しむ人たちの姿がある。港の隅に停まっている車は釣りに訪れた人たちのものかもしれない。宮浦漁港から北の観音崎辺りは釣りのポイントとして知られている。クロダイやイシダイ、メジナ、シマアジなどが釣れるという。
宮浦は、かつて鵜戸参りに使われた鵜戸街道「日向七浦七峠」のうちの七番目、すなわち最後の浦だ。鵜戸参りの人々は、ここ宮浦から最後の難所、鳥帽子(えぼうし)峠を越えて
鵜戸神宮を目指した。今では国道220号が海岸の山肌に沿って延びる。岬を回り込んでサンメッセ日南の前を過ぎれば、いよいよ
鵜戸神宮だ。