国道220号を南下し、
いるか岬を過ぎて宮崎市から日南市へと入り、
鶯巣を過ぎるとやがて伊比井(いびい)だ。伊比井もまた岬と岬に挟まれた入江を成し、砂浜が横たわっている。砂浜の南端部に伊比井川が注いでおり、その伊比井川河口部左岸に家々が集まって集落を成している。
岬を回り込んだ国道220号は入江を左に見ながら山裾を辿って伊比井の集落に差し掛かる。国道のさらに山側には寄り添うように日南線の線路が走り、伊比井川の手前に
伊比井駅が設けられている。伊比井駅前の国道沿いには商店なども建ち、集落の中心の佇まいだ。国道から南側に入り込むと、家々が寄り添うように建ち並び、車一台がやっと通れる程の幅の路地がその中を縫うように抜けている。入ってゆくと迷路のような路地の様子が楽しい。伊比井川の右岸には山々に囲まれた平地に水田が横たわり、緑濃く長閑な風景が広がっている。静かに時を重ねる海辺の集落の、鄙びた佇まいが素敵だ。
伊比井の浜辺は海水浴場ではないが、夏になると波打ち際で遊ぶ子どもたちの姿がある。いつの頃からか、伊比井の浜辺は波乗りのポイントとして人気を集めるようになり、波を待つサーファーの姿を見ることも多くなったが、特に観光名所のようなものはなく、観光客が立ち寄ることはほとんどないだろう。