横浜市中区新港
赤レンガパーク
Visited in November 2016
横浜港を臨む横浜市西区新港地区の一角に、昔日の横浜港の面影を残す建物がある。「赤レンガ倉庫」だ。赤レンガ倉庫は、今では横浜の観光名所のひとつとして認知され、常に多くの観光客が訪れて賑わっている。赤レンガ倉庫の周囲は「赤レンガパーク」という名の公園として整備され、臨港公園としての風情も楽しめる。名実共に“港ヨコハマ”を象徴する観光地と言っていい。
関東大震災では被害を被り、昭和初期に復旧したが、当初のものより小規模のものになってしまった。戦後は米軍に接収されたが1956年(昭和31年)に接収解除、その後一号倉庫は税関施設、二号倉庫は横浜市の管理のもとに公共上屋として使用されていたが、1970年代に入って新港埠頭の取引量が激減すると倉庫の用途も減っていった。やがて1989年(平成元年)、赤レンガ倉庫はついにその「倉庫」としての役目を終える。
1992年(平成4年)、横浜市が赤レンガ倉庫を取得、歴史的建築物である建物を保存、活用するために改修工事を開始する。構造の補強や屋根・外壁の補修などを経て、現在の赤レンガ倉庫が2002年(平成14年)4月にオープンした。赤レンガ倉庫のオープンに伴って周辺は5.5ヘクタールの面積を持つ赤レンガパークとして整備され、現在に至っている。開放的な空間の中に建つ赤レンガ倉庫の姿も美しく、今や横浜観光の定番の名所のひとつとして広く知られている。
多くの観光客を集めるのはやはり二号館だ。訪れた人たちはそれぞれに館内を見て回っているが、ほとんどの人たちはショッピングが目的ではないように見える。「観光」に訪れた人であれば、「赤レンガ倉庫の中を歩いてみる」ということが目的であるかもしれない。館内は決して広くはないが、元々は倉庫として使われていた歴史的建築物の中を歩くというのはなかなか楽しい。
館内の店舗はそれぞれに特色があり、時間に余裕があればそれぞれのお店をゆっくりと見てゆくのも楽しい。お洒落な雑貨店やカフェなどは特に若い女性の人気を集めるものだろう。一階の東側の一角には「ガラスボックス」と名付けられたサンルーム風のカフェのスペースが設けられており、そこから外の景色を眺めながらの食事やひと休みもお薦めだ。
一号館と二号館との間の広場スペースはさまざまなイベント会場になることも多い。と言うより、常に何らかのイベントが開催されているという印象がある。それらのイベントを目当てに訪れる人も少ないないようだし、それと知らずに訪れても何らかのイベントで賑わっている様子は楽しいものだ。
赤レンガ倉庫を写真に収めようと、カメラを携えて訪れる人の姿も多い。思い思いの場所に三脚を立てて倉庫の姿にレンズを向ける人の姿を多く見かける。写真趣味の人にとっては魅力的な被写体であるのに違いない。場所によっては赤レンガ倉庫の屋根の向こうにランドマークタワーの姿が重なり、新旧の横浜を象徴する風景を捉えることもできる。
赤レンガパークとして整備された敷地は開放感に満ちており、横浜港を臨む海岸部分からは象の鼻防波堤や大さん橋が間近に見え、さらに湾の向こうにベイブリッジの姿が見える。海岸に佇み、のんびりと海を眺める人の姿も少なくない。芝生の広場やベンチなどでくつろぐ人も多く、のどかな海辺の公園の風情が漂う。
パークの最も東側の海辺の突端部分あたりから陸側を振り向くと、象の鼻パークの向こうに神奈川県庁のキング、横浜税関のクイーン、横浜市開港記念会館のジャックという「横浜三塔」の姿を一望することができる。かつて横浜港に寄港する船の上から見えるその姿は横浜のシンボルとして親しまれたというが、その想いがほんの少し理解できるような気もする。
パークの最も東側の海辺の突端部分あたりから陸側を振り向くと、象の鼻パークの向こうに神奈川県庁のキング、横浜税関のクイーン、横浜市開港記念会館のジャックという「横浜三塔」の姿を一望することができる。かつて横浜港に寄港する船の上から見えるその姿は横浜のシンボルとして親しまれたというが、その想いがほんの少し理解できるような気もする。
赤レンガ倉庫二号館の西側には旧税関事務所遺構がある。1914年(大正3年)に建設された税関事務所の遺構であるらしい。関東大震災のために焼失し、復旧されることなく埋められていたものが、赤レンガパーク整備の際に発見されたものという。現在は花壇として使用されつつ、遺構として保存されている。旧税関事務所遺構の傍らには旧横浜港駅プラットホームが復元されている。かつて外国航路の客船で賑わった時代を支えたプラットホームだが、今では少し淋しげに公園の片隅に佇んでいる。赤レンガ倉庫の姿や公園内に残された遺構などから、往時の新港埠頭の賑わいを思い浮かべてみるのも一興かもしれない。
1982年(昭和57年)頃、赤レンガ倉庫を訪ねたことがある。当時の新港地区はすでに埠頭としての役目は第一線を退き、時代に置き去りにされたかのように朽ちてゆく赤レンガ倉庫の姿が哀しげに見えたものだ。2002年(平成14年)10月、現在の姿で再出発したばかりの赤レンガ倉庫にも訪ねてみた。明るく開放的な広場の中に建つ赤レンガ倉庫はずいぶん堂々と立派に見えて、横浜の新しい観光名所の誕生を実感したものだ。
そして今、赤レンガ倉庫はすっかり横浜の観光名所のひとつとして定着した感がある。設計当初とは異なる目的のために改修され、多くの観光客や買い物客を集める赤レンガ倉庫だが、その姿は悠々として泰然としたものさえ感じさせてくれる。日本の発展の一翼を担った施設の、幸福な余生である。
そして今、赤レンガ倉庫はすっかり横浜の観光名所のひとつとして定着した感がある。設計当初とは異なる目的のために改修され、多くの観光客や買い物客を集める赤レンガ倉庫だが、その姿は悠々として泰然としたものさえ感じさせてくれる。日本の発展の一翼を担った施設の、幸福な余生である。
赤レンガパークは横浜の湾岸地域、いわゆる“横浜ベイエリア”のほぼ中央に位置していると言っていい。周辺にはさまざまな観光名所や商業施設が多数点在し、散策の足を伸ばして見るのも楽しい。横浜ベイエリアの観光名所を繋いで設定された「開港の道」のルートの一部でもあり、「開港の道」の道を辿っての横浜観光も、特に初めて横浜を訪れる人にはお勧めだろう。パーク内の岸壁には「ピア赤レンガさん橋」も設けられ、各種の観光遊覧船が発着する。それらを利用するのもお勧めだ。