横浜線沿線散歩街角散歩
横浜市中区桜木町〜山手町
開港の道
Visited in October 2002
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
開港の道
桜木町駅前から新港地区を経由し、そこから遊歩道で山下公園へ繋ぎ、さらに「横浜人形の家」の横を抜けてフランス橋から港の見える丘公園へ至る散策ルートが整備されている。「開港の道」という。2002年春に「赤レンガ倉庫」や「山下臨港線プロムナード」などが整備されて公開されたのに伴って設定されたコースだ。

「開港の道」を示す路面ののマーク ルート上の路面には「開港の道」を示すマークが設置され、さらに随所にコース上の観光スポットへの距離を示した案内柱も置かれている。桜木町駅前など要所に設置された地図上にも「開港の道」のルートが記されて、訪れる人々を導く。横浜の港湾地区に面した数々の観光名所を繋ぐ「開港の道」は、横浜を訪れる人のための散策コースとして魅力的なものと言えるだろう。秋晴れの日、その「開港の道」を歩いた。
桜木町駅近くでランドマークタワーを仰ぐ 「開港の道」の西の起点は桜木町駅だ。桜木町駅前も整備が続けられ、この二、三年でまたずいぶんと様子が変わり、広々と整然とした駅前広場に姿を変えたように思える。空は青く晴れ渡り、ランドマークタワーの姿がくっきりと浮かび上がっている。夏は空気の中に湿気が多いためか、少し霞んだように見えることが多い。空気が澄んで風景がはっきりと見えるこの季節が、やはり散策にはよいかもしれない。桜木町駅前から汽車道を目指す。初めて訪れる人は駅前に設置された地図を見て、付近の様子や「開港の道」のルートなどを確認しておくとよいだろう。
駅前ロータリーの横を過ぎ、道路を横切って汽車道へ至る。汽車道は明治期に造られた橋梁を用いて整備されたプロムナードで、かつての臨港鉄道の遺構を利用したものだ。ワールドポーターズや赤レンガ倉庫などの建つ新港地区と桜木町駅とを結び、行き来する人は多い。汽車道にはベンチなどを配した広場のような一角もあり、みなとみらいのビル群の織りなす近未来的な風景を眺めてひとときを過ごすのも悪くない。
汽車道

汽車道を抜けた一角は運河パークと呼ばれる広場で、ワールドポーターズの正面エントランスが訪れる人を出迎えている。臨港鉄道遺構の線路が延びる先にはナビオス横浜の建物が建ち、特徴的な空洞部分の向こうに赤レンガ倉庫の建物が横たわっている。「開港の道」のルートはワールドポーターズの正面エントランスから建物の傍らを抜けてゆくような設定のようだが、ナビオス横浜の空洞部分を抜けて、傍らに置かれた錨のモニュメントなどを見てゆくのもいい。
サークルウォーク 「開港の道」はワールドポーターズの東側から「サークルウォーク」を経由する。サークルウォークは交差点に設けられた楕円形の「歩道橋」で、ワールドポーターズの二階部分と繋がっている。サークルウォークへ上がると赤レンガ倉庫が間近に見えるようになる。「開港の道」のルートはそのまま赤レンガ倉庫を目指しているが、少し寄り道をして新港パークへ廻ってみることにする。

サークルウォークからそのまま海側へまっすぐに進み、交差点を左に折れると新港パークだ。新港パークは横浜港を臨む臨海公園で、のんびりとした雰囲気が魅力だ。東側にはぷかりさん橋が間近に見え、発着する船の様子を眺めるのも楽しい。この日はどこかの小学校の遠足だったのか、思い思いの場所でお弁当を広げる子どもたちの姿があった。

新港パークから赤レンガ倉庫へ向かう。「開港の道」のコース上に戻ってもよいし、そのまま直接向かってもいい。すでに赤レンガ倉庫の姿が大きく見えている。
【追記】
新港パーク」は横浜市の港湾施設として初のネーミングライツの導入により、2012年(平成24年)8月から「カップヌードルミュージアムパーク」の愛称で親しまれている。その旨、読み替えられたい。またカップヌードルミュージアムパーク(新港パーク)と赤レンガパークとの間に当たる新港一丁目3の街区には2016年(平成28年)に「MARIN & WALK YOKOHAMA」がオープンしている。
赤レンガ倉庫は1899年(明治32年)に着工した新港埠頭の付属施設として建築されたものだ。明治期から昭和初期まで横浜税関の施設として横浜の生糸貿易の中心的施設として活用されてきたが、1970年代以降は新港埠頭の取引量が減ったために倉庫もあまり使われなくなった。平成の時代になってその赤レンガ倉庫を保存活用するために建物の改修と周辺の整備が行われた。倉庫はホールなどを設けた文化的施設と各種のお店の入った商業施設として生まれ変わり、倉庫周辺の一体は「赤レンガパーク」という名の臨海公園となった。その整備が完了し、公開されたのが今年(2002年)の春だった。
赤レンガ倉庫

赤レンガ倉庫はみなとみらい地区のビル群などと比べると小さなものだが、やはり経てきた歴史の重みを感じさせるのか、堂々とした佇まいが印象的だ。お店の並ぶ二号館の内部は少々狭苦しい感じもするが、かつて倉庫として使われていた頃の面影を残して興味深い。倉庫周辺は開放感溢れる広場で、一角には旧税関事務所遺構や旧横浜港駅プラットホームなどもあり、明治期の新港埠頭の姿が偲ばれる。赤レンガ倉庫の中のお店で食事や買い物を楽しむのもよく、海辺に立って潮風に吹かれてみるのもいい。
「山下臨港線プロムナード」 赤レンガパークから西へ向かうと、新港橋から「山下臨港線プロムナード」という名の遊歩道が延びている。このプロムナードはこの地域に残っていた臨港鉄道の高架橋を利用して遊歩道としたものだ。眼前右手に横浜税関の「クイーンの塔」を見ながら緩やかな坂になった舗道を進むとやがて視点が高くなり、周囲に眺望が開けてくる。ビルの二、三階の高さに相当するのだそうだ。歩きながらふりかえれば、赤レンガ倉庫やみなとみらいのビル群を一望する景観が広がる。左手眼下には「象の鼻」周辺の少々雑然とした風景が横たわり、一時代前の横浜港の姿を彷彿とさせて楽しい。
【追記】
「象の鼻」地区は2006年(平成18年)に再整備の基本計画が策定され、2009年(平成21年)6月2日、横浜開港150周年の開港記念日に「象の鼻パーク」として開園した。2002年当時に船溜まりになっていた港湾部を囲む形で公園が整備され、すでに当時の面影は残っていないが、特徴的な「象の鼻」の防波堤は公園内の施設として残されている。海岸通り日本大通りとの「開港資料館前」交差点が市街地側からの「象の鼻パーク」へのメインエントランスとなり、周辺の景観も大きく変わっている。
「山下臨港線プロムナード」から「象の鼻」地区を見る
やがて「山下臨港線プロムナード」は「開港広場」前の交差点と大さん橋とを繋ぐ道路の上を越える。その手前に下へと降りる階段が設けられているので「山下臨港線プロムナード」から逸れて寄り道を楽しむのもいい。

「開港広場」の辺りは1854年(安政元年)にペリーが二度目の来日をした際に日米和親条約が締結された場所として知られる。広場の横には横浜開港資料館が建ち、横浜開港以降の歴史資料を展示している。その名も「開港の道」を歩くのであれば、やはり立ち寄っておきたい。

大さん橋 大さん橋も今年(2002年)になって改築工事が終了し、現在の姿となったものだ。建物の屋上部分は船の甲板を模したような木張りの「ボードウォーク」に芝生などを配して公園のように造られており、無料で一般公開されている。この屋上からの眺望が素晴らしく、赤レンガ倉庫やみなとみらいのビル群、山下公園周辺の氷川丸やマリンタワーなどを海側から見る視点が楽しい。ベイブリッジも間近に見え、横浜港を行き来する船を眺めて過ごすのもいい。時間に余裕があれば、これも立ち寄ってみたい。
「開港広場」横を過ぎると、すぐに「山下臨港線プロムナード」の西端に達し、山下公園へと降りる。昔は臨港鉄道の高架が山下公園の端にそのまま残っていたのだが、美観を損ねるという側面もあり、現在ではすでに撤去されて跡形もない。

山下公園 山下公園は関東大震災後の復旧事業の一環として、被災した瓦礫などを埋め立てて造られた臨海公園として知られる。横浜港を臨む風情が旅情を誘い、散策は楽しい。公園内の岸壁に氷川丸があることなどもあり、またシーバスなどが発着することもあって、常に多くの観光客で賑わっている。やはり横浜観光には欠かせない場所のひとつであるだろう。
「開港の道」のルートは山下公園内を辿るが、晩秋の季節であれば山下公園通りのイチョウ並木の黄葉も見逃せない。「開港の道」は山下公園東端に近い部分から「ポーリン橋」を渡って「横浜人形の家」の傍らを抜け、さらに「フランス橋」を渡って港の見える丘公園の「フランス山」地区へと辿る。
港の見える丘公園のバラ 「開港の道」はそのまま「フランス山」の散策路を辿って港の見える丘公園の展望台へと辿る。港の見える丘公園もまた横浜観光に欠かせない場所のひとつだろう。展望台から見る横浜港の景色は少々雑然として「美しい」とは言えないような気もするが、海風に吹かれながら眼前間近にベイブリッジを臨む風景はやはり爽快な気分だ。港の見える丘公園の展望台で「開港の道」は終わっているが、時間が許せば、そこからさらに元町山手本通りへも足を延ばしたい。
山下公園にて 横浜港湾地区の主要な観光名所を繋ぐ形の「開港の道」は、横浜観光に於ける「王道」的ルートのひとつであるかもしれない。例えば初めて横浜を訪れる人にとっては、観光ルートのモデルとして充分に参考になるものに違いない。「開港の道」は距離にして約三キロほど、山手観光と組み合わせれば、さらに魅力的なものになるが、それぞれの場所をゆっくりと楽しんでゆくと時間が足りなくなるのが難点かもしれない。

以前はみなとみらい地区と山下公園周辺とは距離はそれほど離れていないにも関わらず、なぜか隔たった印象があったのだが、赤レンガパークと「山下臨港線プロムナード」が整備されたことによって両者が有機的に繋がり、ひとつの観光・散策エリアとしての形を成したように思える。「開港の道」は朝日新聞大阪本社が発刊50周年の記念事業として選定した「遊歩百選」にも選ばれている。名実ともに「港ヨコハマ」の散策ルートを代表するものだと言えるだろう。
「山下臨港線プロムナード」から開港広場を見る