八王子市の柚木地区、「多摩ニュータウン」として整備された地域の一角にこの富士見台公園がある。丘陵部の北斜面に元来の地形の起伏を利用して造られた公園で、付近住民の憩いの場としての典型的な都市公園とも言えるが、町中の喧噪から離れた静かな印象を持っている。「中央広場」や「ピクニック広場」、「史跡広場」などから構成される園内は東西に長く、9haを超える面積を有している。天気の良い休日に家族やグループでお弁当を持って出かけるのに最適な公園だ。

富士見台公園のほぼ中央に設けられているのが「中央広場」だ。「中央広場」は園内では高所にあたり、北側への眺望が開けて開放感漂うところだ。広場は地形の起伏を利用して段差をつけて設けられている。その段差を利用してカスケードが造られ、下段には噴水を囲む円形の広場が設けられているのだが、今回訪れたとき（2021年6月）には水は流されていなかった。

広場の周囲にベンチが置かれている。ベンチではのんびりと読書をしたり散歩の途中で一休みする人の姿をよく見かける。静かなひとときを楽しむことのできるところだ。

「中央広場」から西側へ辿ると樹林に囲まれて展望台が設けられている。円柱形の「塔」のような構造の展望台で、螺旋状に造られた階段で頂上部まで登ることができる。頂上部からは眺望が開けて爽快な気分が味わえる。天候に恵まれれば、公園の名の通り、遠く山並みの向こうに富士山の頂上部分の姿を見ることができる。富士見台公園を訪れたときにはぜひこの展望台からの眺望を楽しんでおきたい。

いつだったか、この展望台の上部に携帯用の椅子やお弁当などを持ち込み、トランシーバーで誰かと何やら連絡を取り合いながらノートを片手に双眼鏡を覗く人の姿を見たことがあった。野鳥の調査をしていたようであった。その人の双眼鏡の行方をこちらも追ってみたが、鳥の観察に慣れていない身で、さらに肉眼ではうまく鳥の姿を見つけることはできなかった。

展望台の横には木立の中に東屋なども設置されていて、園内の広場を眼下に眺めながらのんびりとしたひとときを過ごすことができる。眺めも良く、夏は木立を抜ける風も涼やかでお勧めの場所だ。

展望台の北側は草はらのスロープになっており、「わくわく広場」と名付けられている。斜面となった地形を活かして、展望台の横から長い滑り台がスロープを下っている。滑り台の乗り口からは園内の広場を眼下に見下ろし、その向こうには周辺の街並みを見渡すことができる。なかなか見事な眺望である。

滑り台には「ながーいすべりだい」という名がある。「富士見台公園プロジェクト！小学生のアイデア募集！」として下柚木小学校と松木小学校の児童のアイデアをもとにしたものという。滑り台は長さ約34m、高低差約11mだそうだ。滑り台は6〜12歳用で、6歳未満の幼児は保護者同伴で利用できる。その他、利用に際しての注意事項を記したパネルが乗り口横に設けられているので、それらを守って危険のないように利用しよう。

滑り台の降り口付近には複合遊具が設置されている。特筆するほど規模の大きなものではないが、造形も楽しいもので幼児用の遊具として充分なものだろう。

「わくわく広場」の北側は園路を挟んで「ピクニック広場」と名付けられた芝生の広場だ。「わくわく広場」と「ピクニック広場」は明確に分けられているわけではなく、両者を合わせてひとつの大きな広場として機能している。「ピクニック広場」はところどころに木立のある芝生の広場で、ケヤキの大木などが美しい樹形を見せる。木陰にシートを広げてのんびりと過ごすには最適の場所だと言っていい。まさに“ピクニック気分”で楽しめる。

「ピクニック広場」の西側部分には“トランポリン遊具”や“ザイルクライミング”などの遊具が設けられていて、子どもたちの人気を集めている。遊具近くにシートを広げれば子どもたちが遊ぶ姿にも目が届き、親たちも安心だろう。

公園西側部分は樹林地で、木立を縫うように園路が辿っている。樹林地の中に「史跡広場」が設けられている。富士見台公園周辺では縄文時代から古代にかけての遺跡が発見されており、公園の地下からも集落跡が見つかり、土器などが出土しているという。「史跡広場」には四阿が設けら、古代の住居を復元したという竪穴建物跡がある。古代の人々の姿を思い浮かべながら散策を楽しむのも一興だろう。

この「史跡広場」は桜の林で、四月上旬の桜の開花シーズンには大勢のお花見客で賑わう。桜の季節が終われば落ち着いた印象に変わり、「ピクニック広場」の開放感溢れる雰囲気とはまた違ったしっとりとした風情が楽しめる。滴るような緑の中、のんびりと散策を楽しむのがお勧めだ。

トイレは「ピクニック広場」と「史跡広場」に設置してある。公園内に売店やレストランなどはなく、近くにお店もないので、のんびりと過ごすのならお弁当持参が良いだろう。駐車場は「ピクニック広場」のすぐ北側、由木中学校の裏に用意してあるが初めての人には少々場所がわかりづらいかもしれない。予め地図で確認しておいた方が良い。駐車場は二十数台分の駐車スペースが用意してあるが、公園の規模と比較すれば充分とは言えず、花見や初夏の行楽シーズンなどの休日には満車になりやすい。余裕を持って出かけよう。