多摩市南野二丁目の住宅街に小野路第1公園という小公園が設けられている。面積は1300平方メートルを少し超えるほど、広場に遊具などを設置した街区公園だ。1977年（昭和52年）に開園したものという。

まずはその名に興味を覚える。多摩市南野二丁目に位置する多摩市の公園でありながら、なぜその名に町田市の地名である「小野路」を冠しているのか。実は、多摩市の南野から永山の一角にかけて、かつては町田市だった地域なのだ。「多摩ニュータウン」の造成に伴って、1973年（昭和48年）に町田市の小野路町と下小山田町の一部が多摩市に編入され、当初は「多摩市小野路町」の町名も存在した。

1975年（昭和50年）になって新設された「多摩市南野」や「多摩市永山」の一部となって「多摩市小野路町」は消滅した。町田市の一部が多摩市に編入された時点で、すでに公園の設置も公園の名も決定していたのだろう。同様の理由で「小野路」の名の残る多摩市の公園として、同じ南野に「小野路第2公園」、永山に「小野路第3公園」、「小野路第4公園」が存在する。こうした公園の名に土地の変遷の歴史が残されるのも興味深い。

小野路第1公園は多摩市南野二丁目4番、住宅街の中に位置する小さな街区公園だ。南側は一本杉公園通りに面し、東側と北側も道路に面している。東西に長く、広場を樹木が取り囲んだ構成だ。特に東側では大きなケヤキやクスノキなどが枝を広げ、公園の歴史が長いことを物語る。

広場には滑り台や鉄棒、砂場、球状のジャングルジム風の遊具などが設置されている。特徴のある遊具はないが、近隣の子どもたちのための遊び場としての役割は充分に果たしてくれるだろう。

公園の西側の端部にはブランコと藤棚が設けられている。ここは中央部の広場から階段状に少し高くなっている。公園のある場所は少し傾斜を伴った地形だ。その傾斜を上手く利用しているのだろう。園内のすべてを平坦な広場にせず、一部に段差を設けていることで、単調になりがちな広場の景観にアクセントが添えられている印象だ。

四月の末、藤棚の藤は今が花の盛りだ。薄紫の花が咲き誇って見事な景観を見せてくれている。藤棚の横手には花壇が設けられている。花壇にも春の花が咲いている。地元の方々によって日常的に整備が行われているのだろう。花壇も美しく、園内にも荒れた印象はまったくない。

小野路第1公園は小さな街区公園で、駐車場もトイレもなく、あくまで南野二丁目に暮らす人たちのための公園と言っていい。遠方から訪れたくなるような特徴があるわけではないが、その名に「小野路」を冠する多摩市の公園として、「小野路第2公園」や「小野路第3公園」、「小野路第4公園」と共に訪ねてみるのも一興だろう。

公園は一本杉公園通り沿いにあり、通りを渡った反対側には一本杉公園の入口のひとつが設けられている。一本杉公園に訪れた際に併せて訪ねてみるのもいい。

小野路第1公園にはさまざまな木々に混じってオオシマザクラの木もあり、春には美しく咲き誇る。一本杉公園と一本杉公園通りも桜の美しいところだから、春の花見散歩の際に訪ねてみるのもお勧めだ。