横浜線沿線散歩公園探訪
町田市下小山田町
小山田緑地
Visited in May 2018
小山田緑地
小山田緑地は町田市下小山田町の丘陵地帯の一部を公園としたもので、都立の公園として1990年(平成2年)6月に開園している。広場や雑木林、池などから構成された本園と、本園の北部に点在する分園から構成されている。その名が示す通り、小山田に残された多摩丘陵の自然を緑地として保全しようという目的のためのもののようで、市街地に設けられた都市公園とはまったく趣が異なる。自然を満喫して散策を楽しむのには絶好の場所だ。
小山田緑地/小山田の牧
小山田緑地本園は下小山田町の中央あたりにほぼ円形に近く広がっており、その北側を抜ける狭い道路に面してメインの入口と管理事務所が置かれている。管理事務所脇の入口から坂道を上って本園に入ると、雑木林の丘陵の中にぽっかりと視界が開けて広場に出る。「小山田の牧」と名付けられたこの広場は12世紀頃に馬の放牧が行われていた牧場の遺構であるという。当時の下小山田町はこの地を治めた小山田有重の小山田荘の中心であったらしく、この遺構もその当時のものなのだろう。現在の「小山田の牧」は小山田緑地に於ける“運動広場”的な意味合いを持っており、中央部に設けられたグラウンドでは子どもたちがサッカーの練習をする姿があったりする。その光景も公園の風情を感じさせてなかなか素敵だ。

小山田緑地/小山田の道
広場の東側には雑木の林の中を尾根道が辿っている。「小山田の道」と案内標識にある。「小山田の道」の名は大久保分園の方でも見られるが、本園内の道脇には馬頭観音なども残っているところをみると単に公園内に設けられた散策路というのではなく、かつての古道の名残なのだろう。舗装されずに古来の面影を残す道は木漏れ日も美しく、野鳥の声も聞こえてのどかな散策が楽しめる。木々の間を抜けるように辿る園路は園内の随所を辿っており、それぞれにさまざまに魅力的な雑木林散策が楽しめる。園内マップを参考にして園内の小径を巡ってみるのも一興だろう。
小山田緑地
小山田緑地/みはらし広場
広場の西側には一段高くなった丘があり、「みはらし広場」と名付けられている。標高が123mあるという丘の上は園内では最も高所にあたり、その名が示すように視界が開けて見晴らしが良く、多摩丘陵や遠くには丹沢の山並みも望めて爽快な気分が味わえる。小山田緑地を訪れたときには是非とも「みはらし広場」の開放感と眺望を味わっておきたい。「みはらし広場」に立ち寄らないのでは小山田緑地の魅力が半減すると言っても過言ではない。丘の上を渡ってゆく風に吹かれながらのんびりと過ごすひとときは穏やかな開放感に満ちていて、時の経つのを忘れてしまう。広場にはテーブルとベンチがいくつか設置してあり、お弁当を広げたりするにも絶好の場所だ。

小山田緑地/みはらし広場からの富士
この「みはらし広場」は「関東の富士見百景」のひとつでもある。「関東の富士見百景」は(国土交通省関東地方整備局のサイトによれば)「周辺の景観の保全や活用への支援を通じて、美しい地域づくりの推進を目的として」国土交通省関東地方整備局が主催して、2005年(平成17年)に「富士山への良好な眺望を得られる地点を選定」したものだ。「百景」とは言うものの、実際には128景、233地点が選定されている。選定に当たっては応募のあった地点の全てが現地調査されたという。小山田緑地の「みはらし広場」は、そのうちのひとつ、「都立小山田緑地本園見晴らし広場 」として名を連ねているのだ。現地には社団法人関東建設弘済会(現在の一般社団法人関東地域づくり協会)から寄贈された「関東の富士見100景」の碑がある。

天候に恵まれれば、確かに「みはらし広場」から富士山が見える。ただ、ここから富士山の方向を見れば間に丹沢の山々が横たわっているわけで、その稜線の向こうに辛うじて富士の山頂が見えるという程度だ。それでも、その姿が見えると何故か気持ちが高揚する。不思議なものである。
小山田緑地
小山田緑地/小山田の谷
本園東側部分は雑木林に囲まれた谷戸部となっていて、池があり、その周囲を辿るように木道が設置されている。「小山田の谷」と名付けられたこの谷戸は本来は「宇津保沢」という地名であるようだ。

池は湧き水と雨水とを集めたもののようだが、さまざまな水辺の生き物や植物を見ることができる。以前、4月に訪れたとき、池の中におびただしい数のオタマジャクシを見た。並大抵の数ではなく、水辺から覗き込んだ池の中が黒く染まるほどで、手を差し延べると簡単にオタマジャクシをすくい上げることができた。木道からは今にも落ちそうに身を乗り出しながら、子どもたちがオタマジャクシをすくって遊んでいた。

小山田緑地/北東側尾根道脇の広場
「小山田の谷」の奥まったところには見事な竹林があり、美しい景観を見せてくれる。竹林を抜けて坂を上がると北東側の外縁部を辿る尾根道だ。尾根道から見る竹林の景観も素晴らしい。

竹林から尾根道を少し南へ辿ると、尾根道の北側に視界の開けた広場がある。広場は小さなものだが、北東側への眺望が楽しめる。眼前に横たわる緑の丘陵群を眺めていると、ここが多摩丘陵の真っ直中だということを実感する。ほとんど人の姿の無い広場だが、それも却って魅力かもしれない。レジャーシートを広げてのんびりとランチタイムを楽しむにもお勧めだ。
小山田緑地
小山田緑地
多摩丘陵の自然をそのままに残す小山田緑地は過剰に整備の手が入れられていない素朴さがいい。初夏の新緑や、梅雨の時期の紫陽花、夏の蝉時雨、秋には紅葉に染まった雑木林など、四季折々に美しい姿を楽しむことができる。それぞれの季節に訪ねてみたくなる公園である。

園内には子どもたちのための遊具類はほとんど無いが、林や広場は遊具にも勝る子どもたちの遊び場だ。小さな子どものいる家族連れなら木陰にシートを広げて、子どもたちの遊ぶ姿を眺めながらのんびりと過ごすのもよいものだ。

小山田緑地
小山田緑地の周囲に広がる風景も古き佳き時代の多摩丘陵の姿を色濃く残しており、本園を拠点に「梅木窪分園」や「大久保分園」などの分園を巡りながら周辺の里山散歩を楽しむのもお勧めだ。管理所には近辺の様子を記したイラストマップが用意してあるので、ぜひ利用したい。初めて訪れた際には係の人に公園の概要を教えてもらうとよいかもしれない。特に分園の周りは公園の土地と私有地とが入り組み、また近接するゴルフ場のコースに近い場所もあって飛来するボールの危険もあり、注意が必要だ。

「大泉寺」のバス停から大泉寺の横を通ってさらに入り込んだところに本園の入口と管理所があり、入口脇に駐車場があり三十数台分の駐車スペースがある。また本園東側、「小山田の谷」側にも駐車場が設けられており、こちらは三十台ほどが駐車可能だ。その他、問い合わせ先、交通アクセスの詳細などについては、東京都公園協会のサイト(頁末「関連する外部ウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
小山田緑地