横浜線沿線散歩街角散歩
八王子市南大沢
ベルコリーヌ南大沢
Visited in June 2005
ベルコリーヌ南大沢
京王相模原線南大沢駅の西方の丘の上に、南大沢五丁目の住宅街が広がっている。そのほぼ中央部分を占める一角には美しい意匠の建物が建ち並び、その風景はヨーロッパの街並みを彷彿とさせる。「ベルコリーヌ南大沢」と呼ばれるところで、その街並みは「八王子八十八景」のひとつにもなっている。その「ベルコリーヌ南大沢」を中心に、緑溢れる舗道を辿って南大沢五丁目の街を歩いてみた。
南大沢駅前から北へ、首都大学東京へ向かって少し歩き、ラフェット多摩の手前で左へ折れる。多摩ニュータウン通りと京王線の線路を左に見下ろしながら、舗道が延びている。舗道は「桜歩道橋」で道路を渡り、南大沢五丁目の町へと続いている。舗道は桜並木で、春は美しい景観を見せるところだが、今は緑濃く葉の茂った並木道に木洩れ日が落ちている。舗道は左右に分岐する。左を選べば多摩ニュータウン通りのすぐ上を辿り、多摩ニュータウン通りを跨いで南大沢五丁目と南大沢四丁目とを繋ぐ「見晴らし歩道橋」へと至る。
桜歩道橋桜並木の舗道

分岐を右に進めば宮上中学校を右に見ながら「ベルコリーヌ南大沢」の住宅街へと舗道が続いてゆく。宮上中学校横に差し掛かった辺りでは左手(南東側)に視界が開け、多摩ニュータウン通りの向こうに広がる南大沢四丁目の街並みを眺望する。なかなか爽快な眺めだ。舗道の途中には展望デッキのような場所も設けられている。
展望デッキ舗道

舗道は緩やかに右に曲がる。宮上中学校横を抜けると、舗道が交差点のようになったところに差し掛かる。「交差点」の中央には石のオブジェが置かれている。「交差点」の右手前方の一角は木々が茂って緑濃い風景だ。「南大沢みどりやま公園」という公園になっているのだ。「南大沢みどりやま公園」には半円形のカスケードが設けられ、舗道の奧から流れてきた水路が注いでいる。小さな公園だが、水路と木々との織りなす風景がたいへんに美しい。
石のオブジェ南大沢みどりやま公園

「南大沢みどりやま公園」横を過ぎると舗道には水路が沿うようになる。水路の流れを上流側へと遡る形だ。この辺りでは舗道の両脇に美しい街並みが広がっている。「ベルコリーヌ南大沢」の街だ。舗道に沿った水路は自然の渓流を思わせるものではないが、四角形の石で岸辺が造られており、なかなか美しい造形美を見せる。
水路のある舗道

水路の表情を楽しみながらさらに舗道を辿って行くと、また「舗道の交差点」に差し掛かる。ちょっとした広場になっており、広場には池がある。池は舗道脇を辿る水路の一部を構成するもので、やはり四角い石によって岸辺を造られた幾何学的なデザインの池だ。その中央には円錐形のオブジェが置かれている。広場の周囲には「ベルコリーヌ南大沢」の美しい街並みが広がっている。この広場周辺の景観こそは「ベルコリーヌ南大沢」を象徴するものと言えるのではないだろうか。「ベルコリーヌ」とはフランス語で「美しい丘」という意味なのだそうだ。南欧の山岳都市をイメージしたという街並みは1990年に社団法人日本都市計画学会の平成2年度「計画設計賞」を、1991年には国土交通省の平成3年度「都市景観大賞」の「景観形成事例部門」を受賞している。
ベルコリーヌ南大沢

水路のある舗道をさらに辿って行こう。水路は少し表情を変え、自然石を用いた岸辺は自然の小川を模したものになっている。幼稚園を左に見ながら進むと、小公園のような一角に着く。「南大沢緑地」の「たきの広場」だ。その名が示すように広場の奧に滝があり、そこから流れ出た水が水路となって導かれている。滝はもちろん人工的なものだが、木立を背負った景観は住宅街の中であることを忘れさせてくれるようだ。滝の周りはベンチも置かれて端正に整備されており、のんびりと一休みするのに良さそうだ。
水路のある舗道南大沢緑地たきの広場

「たきの広場」の向こうには舗道を挟んで「南大沢うずまき公園」が隣接している。草はらの広場があるだけの小さな公園だが、その草はらの中に「うずまき」状に弧を描く水路が設けられている。上流側から続く水路がこの公園の広場で「うずまき」を描き、中心部分で水が地中へ導かれる構造になっている。地中へ姿を消した水の流れは、隣接する「たきの広場」の滝から流れ出ているのだろう。「うずまき」を描く水路の造形が楽しく、初夏から夏にかけての季節には近所の子どもたちが水遊びの場所となっているようだ。
うずまき公園

舗道はさらに続いている。水路は浅くなり、自然の小川を彷彿とさせるものになっている。やがてその水路の上流端、「南大沢緑地」の「わきみず広場」に着く。その名のように、人工的に「湧き水」が造られ、そこから流れ出る水が舗道に沿った水路となって流れてゆくのだ。木々に囲まれた草はらの広場はひっそりと静かだ。この辺りでは舗道は並木の深い緑に包まれており、たいへんに美しい佇まいを見せる。この舗道を歩くだけでも充分に楽しい。
水路のある舗道南大沢緑地わきみず広場

「わきみず広場」の横を抜けてさらに舗道を辿ると、バス路線の通る道路をくぐってそのまま都立小山内裏公園へと入って行ける。小山内裏公園は八王子市と町田市の市境に設けられた広大な公園で、里山の自然をそのままに残している。南大沢五丁目を抜ける舗道から入ってきたところはちょうど駐車場の横手、「水辺の広場」と名付けられた一角で、眼前に池が横たわっている。そのまま小山内裏公園の散策を楽しむのもいい。
小山内裏公園から南大沢五丁目方面を見る小山内裏公園
「うずまき公園」横から東側へ住宅街の中の小径を抜けてゆくと内裏谷戸公園がある。二面のテニスコートを設置した公園で、普段はテニスを楽しむ人たちが訪れている。テニスコートの両脇には雑木林の丘が残されており、林の中の小径を辿って散策を楽しむこともできる。特に北東端に当たる部分には展望広場のような一角があり、眼下に多摩ニュータウン通りを見下ろし、その向こうに南大沢四丁目の街並みを、右手には小山内裏公園を、左手には南大沢駅方面の街並みを見渡せる。なかなか爽快な眺望だ。
内裏谷戸公園内裏谷戸公園

内裏谷戸公園の北側には宮上小学校がある。小学校の横を多摩ニュータウン通り方面へと抜けてゆくと「見晴らし歩道橋」へと出る。「見晴らし歩道橋」は多摩ニュータウン通りと京王線の線路を跨いで南大沢五丁目と南大沢四目の街を繋いでいる。その名の通り、歩道橋の中ほどに立てば爽快が見晴らしが楽しめる。歩道橋から多摩ニュータウン通りを見下ろせば、緩やかな孤を描いて延びる道路の左手には「ベルコリーヌ南大沢」の建物が見えている。人工的な景観ではあるが、なかなか美しい。
見晴らし歩道橋からの眺望見晴らし歩道橋からの眺望

「見晴らし歩道橋」脇から多摩ニュータウン通りを右に見下ろしながら舗道が辿り、南大沢駅方面へと続いている。その舗道脇に面白いものを見つけた。ナマズ、だ。なぜこのような場所に、ナマズ、なのか。詳しいことは知らないが、楽しい。こういうものに遭遇するのも散策の楽しみのひとつだ。
ナマズ街並み
南大沢五丁目の街は、「ベルコリーヌ南大沢」の街並みも美しく、その中央を貫くように延びる水路のある舗道の佇まいがとても魅力的だ。とくに「南大沢みどりやま公園」から「南大沢緑地わきみず広場」に至るまでの区間は舗道脇に点在する公園や緑地が有機的に繋がり、舗道そのものも含めてひとつの大きな公園として機能しているように思える。この舗道だけでも充分に散策は楽しいが、南大沢駅から都立小山内裏公園へ至るプロムナードとしての役割を担っていると考えることもできるかもしれない。小山内裏公園も含めて散策を楽しむと、より充実した時間を過ごすことができるに違いない。
ベルコリーヌ南大沢