横浜線沿線散歩街角散歩
横浜市緑区中山町〜寺山町〜台村町
中山駅周辺
Visited in October 1998
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
横浜線中山駅前
横浜線中山駅は明治41年に開通した「横浜鉄道」の開業当時からの駅のひとつだった。戦前にはわずか十数件の商店が駅前に軒を連ねるのみであったというが、戦後間もなく駅の南口に商店街が形成され、昭和30年代頃までにはかなり広い商業圏を有していたらしい。高度成長期のあたりからは周辺は住宅街として発展してきたようだ。現在は緑区役所もあり、同区の中心となる町だといってよいだろう。歴史と再開発の中で雑然さと整然さの同居した中山駅周辺の町を歩いてみた。
中山商店街
中山駅を南口に出ると「中山商店街」だ。道路は狭い。緑区役所前を通る片側二車線のバイパスが造られてからはこの駅前の道路の交通量も少なくなったが、かつては商店街に用件のある車と通り抜けるためだけの車とが入り乱れて混雑したものだった。

現在でも駅の南口を経由するバス路線が存在するために、この狭い商店街をバスが通行する。普通乗用車同士のすれ違いもままならない道路のためにバスのような大型の車のすれ違いが不可能な場所もあって、スムースに通行させるために係員が道路脇に立ってバスを誘導している。

道路脇には今でも商店が軒を連ねているが、道路の構成が変わって人の流れが変わってしまったためなのか、あるいは大規模な再開発の計画でもあるのか、特に駅の東側の区間では少々寂れた印象に変わりつつあった。
川和踏切
「中山商店街」の東の端、丁字路の交差点に突き当たり、そのすぐ北側が横浜線の「川和踏切」だ。「川和町」はこの踏切を渡って、さらに恩田川を渡って、青砥町を抜けた北側の鶴見川流域の町だが、「川和町」はかつての旧都築郡の中心であった町で、その川和町へと至るための踏切ということでこの名があるのだろう。

青砥町方面からこの踏切を渡って中山商店街へ向かうには、踏切を渡ってすぐ、踏切で一旦停止する対向車の切れ間を縫って右折しなければならなかった。なかなかの難所だったのだ。今では中山を取り巻く道路の構成が大きく変わってしまったためにかつての混雑ぶりも見られなくなってしまったようだ。
中山の住宅街
商店街の南側の住宅街は中山町と寺山町、台村町が入り組んでいる。現在は駅の南口からまっすぐに南へと抜ける広い道路が新しく造られているが、ちょっと横に逸れて住宅街に入り込んでみるとまだまだ細い路地が残っている。

中山小学校の横を抜けてそうした路地を歩いていると、道脇の建物から鈑金工場特有の材料を抜き落とすパンチプレスの音が聞こえてきた。建物の横には製品を抜いた後のスクラップ材が山積みになっていた。こうした住宅街では騒音の大きな鈑金工場の操業はなかなか難しいのではないだろうか。そればかりではない。製造業界を取り巻く経済状況や、町全体の再開発など、こうした小さな町工場の存続を危うくする要因はいくらでもある。歴史の流れだと言ってしまえばそれまでだが。
【追記】
本文中に「中山小学校」の記述があるが、当時中山駅南側に在った中山小学校は2001年(平成13年)に「森の台13-1」に移転、「森の台小学校」と改称されている。なお、1996年(平成8年)に旧中山中学校の校舎を改装して「中山町925」に開校した「中山第二小学校」が「森の台小学校」の開校と共に「中山小学校」に改称、「中山小学校」の名を引き継いでいる。
緑区役所前付近
昔は中山駅から緑区役所へ行くには、中山商店街を少し西へ進んで狭い道路を南に入ってゆかなくてはならなかった。車で行くには交通量の決して少なくない狭い通りを抜けてゆかなくてはならないために区役所に行くのも一苦労だった。初めて訪れる者にはその場所もなかなかわかりにくいものだったのだ。

現在では緑区役所前を片側二車線の大きな通りが抜けている。台村町の交差点から現在の「緑郵便局入口」交差点の地点までを結んで、中山商店街を迂回するバイパスとして造られた道路で、現在は「三保」交差点から「宮の下」交差点まで真っ直ぐに結ぶ道路として機能している。「三保」交差点より西と「宮の下」交差点より東は、現在も拡幅の整備が進められているようだ。今ではこの道路沿いに大きなビルが建ち並び、町の中心もこちらに移りつつあるようだ。
「四季の森公園」プロムナード
中山駅南口から真っ直ぐに南へ抜けたところが「中山小前」交差点だが、これをほんの少し右手(西)に進むと、歩道脇に「四季の森公園プロムナード」の案内標識があるのに気付く。「四季の森公園」は寺山町の南側を占める広大な県立公園で、この舗道はその公園の北口へ至る遊歩道なのだ。

住宅街の中の遊歩道だが、道脇には緑が溢れ、公園に近づくと舗道に沿った水路もあり、ここからすでに公園の一部と言っても差し支えないような雰囲気の舗道だ。「四季の森公園」までは歩いて15分ほどの距離だが、途中遊歩道近くには杉山神社や慈願寺などの寺社も点在するし、公園まで急ぐのではなく、時には少し道を逸れたりして、ゆったりと寺山町の散策を楽しむのもよいだろう。
中山駅北口前
中山駅の北口は南口とはまるで印象が違って、いかにも再開発後の整然としたロータリーがあり、それを中心に建物が建ち並んでさまざまな店舗が営業している。

北口の西側の区域はかつては工場の敷地だったのだが、今では公団の団地となっていて、公園も整備され、恩田川河畔のなかなか良い住環境となっている。横浜市緑スポーツセンターもこの一角に位置している。さらに西側の、横浜線の線路に沿って十日市場へ至る一帯は今でも水田地帯が残っていて、田植えの時期から刈り入れの時期まで美しい田園風景を見ることができる。恩田川に沿って、あるいは横浜線の線路に沿って、中山から十日市場までのあたりは初夏から初秋にかけてのお勧めの散策コースの穴場だと言ってもよいだろう。
古くからの町は道路も狭く、繁華街も雑然としているが、それだけに歩いていると新たな発見も多い。町並みをちょっと外れると懐かしい谷戸の風景や田園風景も残っている。中山駅の周辺もそうした町のひとつであり、歴史的な由緒の残る場所も少なくない。時にはゆっくりと時間をかけて歩いてみるのも楽しいものだ。「四季の森公園」の最寄り駅というだけではもったいない。
寺山町にて