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町田市小野路町
冬の小野路
Visited in January 2022
冬の小野路
寒さの厳しい一月下旬、冬枯れの里山風景を楽しみたいと思い、小野路町を訪ねた。まだまだ空気は冷たいが、寒さは少しやわらぎ、空は青く澄んで散策日和だ。のんびりと冬の小野路を歩いてみたい。
冬の小野路 今回は多摩ニュータウン側から小野路に入っていこう。多摩市南野、妙櫻寺横の小径を南へ辿っていけば町田市小野路町だ。丘の裾を辿る小径を、谷戸へと降りてゆく。「笠松谷戸」と呼ばれる谷戸だ。

一月下旬、真冬だ。低い角度の日射しが径に影を落とす。周囲には冬枯れの風景が広がっている。少し殺風景だが、これはこれでひとつの興趣というものだろう。畑地では農作業の人の姿もある。軽く会釈をして通り過ぎる。
冬の小野路 妙櫻寺横から1kmほどを歩いて鎌倉街道が近くなったところで分かれ道がある。東側の鎌倉街道から谷戸に入ってくれば、西へ向かう「布田道」と笠松谷戸に沿って延びる径とが分かれている。

分かれ道のところに野菜の無人販売所があった。ほうれん草が100円だそうである。販売所には「今日は寒さやわらぎカラカラお天気です 本日もヨロシクオネガイシマス」との手書きメッセージが貼られている。毎日メッセージを書いて、こうして貼り出されていらっしゃるのだろうか。なかなか素敵だ。
冬の小野路 分かれ道を引き返すように折れて「布田道」を西へ辿ろう。「大犬久保谷戸」と呼ばれる谷戸の中を突っ切るように小径が辿っている。

20年以上も前に小野路を歩いたとき、その頃はまだ里山歩きというものが一般的ではなく、楽しむ人も少なく、そのために土地の情報も少なく、谷戸の名などもよくわらなかった。今はいろいろとガイドの情報があり、道標なども整備されている。ありがたいことだ。こうしたことに尽力されている有志の方々、NPOの方々には頭が下がる思いだ。
冬の小野路 「布田道」を辿っていくと、やがて「関屋の切り通し」だ。これも昔は特に名は無かったが、今は布田道の「関屋の切り通し」として里山歩き趣味の人たちに知られている。切り通しの道脇に簡単な解説が設けられている。ここは関屋を経て小野路宿に至る道で、幕末には近藤勇らが通った道である旨が記されている。

「関屋の切り通し」は路面は舗装されているものの、尾根筋を切り崩して道を通した“切り通し”の様相が昔のままに残っている。両脇は土が剥き出しのまま、木の根などが露わになっている。こうした景観は東京近郊ではなかなか目にすることが難しくなってきているのではないか。その意味でも、小野路散策の際には見落とすことのできない場所のひとつと言っていい。
冬の小野路 「関屋の切り通し」を西へ抜け出ると少し広い道に出る。その道を南へ降りてゆくと、かつて小野路宿だったところだ。現在は都道156号町田日野線が抜けている。多摩市の多摩センター付近と町田市の野津田町方面とを繋ぐ最短ルートであるために交通量は少なくない。昔は狭い道だったが、2010年代に拡幅工事が行われて車両での通行も安全になった。

300mほど南へ辿れば「小野神社前」交差点の角に小野路宿里山交流館が建っている。里山散策を楽しむ人たちのための観光交流施設として町田市が設けたもので、2013年(平成25年)に開館した。館内では地場産野菜などの販売などを行っている他、食事も可能だ。散策ルートの案内なども行っているから、小野路散策が初めての人は立ち寄っておくのがお勧めだ。
冬の小野路 旧小野路宿から万松寺谷戸辺りへ足を延ばすのもお勧めだが、今回はまた「関屋の切り通し」の方へ戻っていこう。

都道156号から「関屋の切り通し」へ向かう坂道の途中、道脇に小さな稲荷社が祀られている。その近くには馬頭観音も祀られている。昔から人々の往来があった道であることを示すものだろう。今は車両の通行も可能な舗装路だが、かつては山道のような細道だったのではないだろうか。稲荷社も馬頭観音も今は道脇の崖上にあるが、これもかつてはすぐ道脇にあったのだろう。小さな祠や石碑などを見つけて昔の姿を思い浮かべてみるのも楽しい。
冬の小野路 「関屋の切り通し」を右に見ながらそのまま進むと、分かれ道があり、お地蔵様を祀った祠が建っている。分かれ道を左に行くと行き止まりだ。右へ、両脇に鬱蒼と木々の茂る道を辿っていく。

しばらく行くと、また分かれ道がある。道なりに真っ直ぐに進んでしまいたくなるが、その先は私有地だ。バラの栽培農家であるらしい。分かれ道を左に進むと、さらに鬱蒼と茂る木々の中を縫うように細道が辿っている。

細道を数百メートル進むと、一本杉公園の南側の道路へ抜け出る。一本杉公園を一回りして、今回の散策は終わりにしたい。
冬の小野路
「関屋の切り通し」を歩くのもずいぶん久しぶりのことだった。土が剥き出しの切り通しは風雨によって少しずつ様相が変化しているはずだが、久しぶりに見る切り通しの景観は昔のままのように感じられた。雑木林は葉を落として寒々しい冬の装いだが、それも季節の興趣というものだろう。楽しい里山散歩だった。

小野路は、朝日新聞社と公益財団法人森林文化協会の主催によって2008年(平成20年)に選定(発表は翌年)された「にほんの里100選」に、東京都で唯一選出されている。近年、里山歩きを楽しむ人が増え、小野路を訪れる人も多いようだが、その背景には小野路が「にほんの里100選」に選出されたこともあるのだろう。

里山散策の際には地元の方々のご迷惑にならないよう、充分に気をつけたい。農地を含む私有地に立ち入らない、写真を撮る際には地元の方のプライバシーに配慮するなど、最低限のマナーを忘れないようにしたい。
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