相模原市水郷田名の相模川河岸、高田橋上流側の堤防道に桜の大木が並んでいる。距離は五百メートルほどだろうか。初夏から夏にかけては緑濃く葉を茂らせて堤防道に木陰を落としてくれる並木だが、三月下旬から四月上旬の桜の花期には鮮やか景観となって河岸を彩る。
訪れた日、すっきりとした晴天に恵まれ、日差しを浴びて輝くように咲き誇る桜並木は見事な美しさだった。河岸という立地であるために周囲は開放感に富み、天候にも恵まれ、その中で見る桜並木は晴れやかな気分を誘って素晴らしい。桜はなかなか大きく、枝々が堤防道を覆うように広がっており、その下を「桜のトンネル」気分で歩くのもとても楽しい。
この辺りは四月下旬から五月上旬の連休の時期には「
泳げ鯉のぼり相模川」が開催されて賑わうところだ。河川敷は公園のように整備されている。そこから見上げるように眺める桜並木の様子もいい。澄んだ青空を背景に鮮やかに浮かび上がる桜並木はためいきが出そうなほどに見事な景観だ。風情のある姿の桜もあり、一本一本の桜を丁寧に見てゆくのも興趣のあるものだ。堤防道を歩いて間近から見上げたり、河川敷に降りて少し遠くから眺めたり、それぞれに美しい表情を見せて飽きない。
河川敷にはゲートボール場が設けられているのだが、その脇に堤防道の桜並木とは離れてぽつりと一本の桜がある。この桜もなかなかいい。間近から眺めるのもいいし、堤防道から相模川を背景にして見下ろす姿もいい。
堤防道はほんの僅かに緩やかに孤を描いている。高田橋側から上流側へと向かうと右手へと曲がっているから、歩いてゆくと遠方の景観の表情がゆっくりと変わってゆく。その変化が楽しい。ときどきふりかえって上流側から下流側への景観を眺めてみるのも楽しい。桜並木の堤防道の向こうに高田橋が見え、それもなかなか風情のある景色だ。時刻によって日差しの向きが変われば、それによって桜並木の景観の印象も違って見える。さまざまな表情の桜並木を楽しみたい。
堤防道には散策を楽しむ人の姿があった。友人同士やご夫婦らしい人たちがゆったりと春の河岸の風景を楽しみながら行き交っている。犬連れの人は地元の人だろうか。堤防道の脇、桜の下にシートを広げてランチタイムを楽しむ人の姿もあった。しかし訪れたのが平日だったからか、意外にお花見の人は少ないように思える。喧噪を離れてのんびりとお花見を楽しむにはよいところかもしれない。
水郷田名の桜並木はたいへんに美しく、お花見の場所としてお薦めだが、桜に囲まれた広場のような場所はないから宴会を催して楽しむお花見には不向きだろう。「
相模川ふれあい科学館」や
田名八幡宮なども訪ねて、ピクニック感覚の春の行楽として花見散歩を楽しむのがよいように思える。
水郷田名の町の中に飲食店などもあるが、お弁当持参で楽しむのもお薦めだ。少しばかり距離はあるが、高田橋から下流側に堤防道を辿ると
望地弁天キャンプ場がある。ここも桜が美しい。足を延ばしてみるのも悪くないだろう。