埼玉県入間市の「彩の森入間公園」は米軍基地跡地に造られた公園だ。広場や樹林、池などを巧みに配した園内は穏やかな空間を成している。梅雨の晴れ間の六月中旬、彩の森入間公園を訪ねた。
彩の森入間公園
埼玉県入間市の北西端、狭山市との境に接して「彩の森入間公園」という埼玉県営公園が設けられている。15haの面積を有する園内には芝生広場や樹林、修景池などが巧みに配され、緑濃く穏やかな空間を成している。1998年(平成10年)に開園した公園だ。
彩の森入間公園
彩の森入間公園
彩の森入間公園
かつてこの辺りには米軍基地があった。「ジョンソン基地」と呼ばれた基地である。戦前戦中には日本軍の陸軍航空士官学校があった。陸軍航空士官学校分校が1938年(昭和13年)に入間郡所沢町(現在の所沢市)から入間郡豊岡町(現在の入間市)に移転し、陸軍航空士官学校として独立したものだった。1940年(昭和15年)には豊岡飛行場が完成した。やがて終戦、陸軍航空士官学校と飛行場は米軍に接収され、米軍基地となった。基地は1945年10月に殉職したジェラルド・R・ジョンソン陸軍中佐を偲んで「ジョンソン基地」と命名された。

1954年(昭和29年)に航空自衛隊が発足、1958年(昭和33年)に入間基地が設立され、1961年(昭和36年)には入間基地の日米共同使用協定が成立している。2年後の1963年(昭和38年)には飛行場地区の管理運用が米空軍から航空自衛隊へ移行され、現在の航空自衛隊入間基地へ至っている。ジョンソン基地跡地は1958年(昭和33年)から順次返還され、1978年(昭和53年)には全面返還を迎えている。その跡地利用のひとつとして設けられたのが彩の森入間公園というわけだ。
彩の森入間公園
彩の森入間公園
彩の森入間公園はほぼ正方形をした中心部と、南側に突き出た部分を合わせた敷地で、地図上で見れば「凸」の字を逆さにしたような形状をしている。南側の“出っ張り”の部分は「多目的広場」として使用されており、公園のメインは北側の正方形の部分だ。

園内は広場と樹林が巧みに配されて潤いのある景観に造られている。その中に「上池」と「下池」という二つの池を置き、その間を小川が繋ぐ。それらを囲むように園内を周回する園路が辿り、さらに小さな遊歩道が池の辺や林の脇を抜けて行く。広場と樹林と水辺の組み合わせは美しい景観を織り成し、園路を辿れば緑濃い風景はさまざまな表情を見せてくれる。
彩の森入間公園
彩の森入間公園
園内はほとんど起伏が無く平坦だが、巧みな設計のお陰で単調さを感じない。園内を散策してみれば、少しだけこぢんまりとした印象を感じなくもないが、15haという面積であれば順当なところだろう。もちろん休日のひとときを楽しむための公園としては充分に広いと言っていい。外縁部に木々が多く植栽されているお陰で、市街地の立地でありながら町の喧噪が感じられないのもいい。

二つの池にはそれぞれ噴水が設置されており、一日に何回か、決められた時刻に水を噴き上げて涼しげな景観を見せる。噴水の好きな人ならぜひ見ておきたいものだ。

六月、園内の随所で紫陽花が咲き、緑濃い風景の中に季節の色合いを添えている。「上池」では睡蓮の花も咲き始めている。季節の花々を愛でながらのんびりと散策し、ゆったりとした気分で公園でのひとときを過ごすのがお勧めだ。
彩の森入間公園
園内の池にはときおりサギが飛来するという。今回訪れたとき(2017年6月)、「上池」の睡蓮の中にアオサギの姿があった。かなり近づいても必要以上に人を恐れる様子はなく、悠々と池の中の小魚を狙っている。ちょうど捕食する瞬間も見ることができた。アオサギはそれほど珍しい鳥ではないが、こうした出会いはやはり楽しい。
彩の森入間公園
彩の森入間公園は、その立地の歴史的背景に特徴があるが、特筆するようなユニークな設備などはなく、子どもたちのための遊具類も充実しているわけではない。木々を多く植栽し、水辺を整え、いわゆる“憩いの場”として丁寧に設計し、丁寧に整備された公園だと言っていい。近隣に暮らす人なら日常的に利用し、季節毎の表情を味わいたい公園だ。奇をてらうことなく、“真っ当に”造られた、美しい公園である。
参考情報
交通
鉄道を利用して彩の森入間公園に訪れる場合は西武池袋線入間市駅が最寄りだ。駅から1km強、20分ほど歩けば着く。

公園には来園者用の無料駐車場が用意されている。200台分ほどの駐車スペースがあり、車での来園も気軽だ。

土地勘がないと駐車場入口が少しばかりわかりにくいかもしれない。駐車場入口は公園西側、埼玉県立入間向陽高等学校との間を通る道に設けられている。

遠方から訪れる場合は圏央道を利用するといい。入間ICから国道16号外回り(入間市街方面)へと出て約4km、狭山日高ICからは入間方面へと出るとすぐに国道407号との交差点があるので、そこを入間方面へと右折、約5kmで着く。どちらのルートも入間の市街地を抜けるため、これも土地勘がないとわかりにくい。ナビを使うにしても、予め地図を見ておくことをお勧めする。

飲食
園内にはレストランなどはない。園内に軽食の移動販売車が来ることもあるようだが、常に利用できるとは限らないだろう。公園でランチタイムを過ごすならお弁当持参がお勧めだ。

公園を南に出れば、国道463号沿いに飲食店が点在している。国道南側の「ジョンソンタウン」に足を延ばせばレストランやカフェなどがある。

彩の森入間公園には「BBQガーデン」が設けられており、機材の貸し出しなども行われている。手ぶらで訪れてもバーベキューが楽しめるとのことだ。詳しくは公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

周辺
公園を南側に出て国道463号を渡れば「ジョンソンタウン」と呼ばれる一角がある。かつての米軍ハウスが残り、アメリカンな雰囲気が人気だ。カフェなどもあるから足を延ばしてみるといい。

彩の森入間公園から航空自衛隊入間基地を回り込んで北へ辿れば、1.5kmほどで埼玉県営狭山稲荷山公園がある。狭山稲荷山公園もジョンソン基地の跡地を利用した公園で、桜の名所として名高い。緑に溢れた公園は散策も楽しい。

狭山稲荷山公園のすぐ北側には狭山市立の稲荷山公園がある。稲荷山公園はヤマユリの自生地として有名だ。ヤマユリの咲く七月上旬に訪ねてみたい。

彩の森入間公園から西へ、市街地を通り抜けて1.5kmほどで霞川の河岸に出る。霞川の河岸には桜並木があり、春のお花見にはお勧めだ。
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