埼玉県ときがわ町北部に雀川砂防ダム公園という公園がある。その名から容易に推測できるが、雀川という川に設けられた砂防ダムの周辺を公園として整備したもので、砂防ダム下流側の「お花見・イベント広場」と砂防ダムを見下ろす高台に設けられた「展望広場」、砂防ダム上流側に設けられた「渓流広場」の三つの広場を中心に構成されている。紫陽花の名所として知られる公園だが、園内には桜の木も多く、春には見事な春景色を見せてくれる。自然溢れる風景の中でのんびりとお花見が楽しめる公園だ。
雀川砂防ダム公園で最もお花見に適したところが「お花見・イベント広場」だ。公園入口付近から渓流沿いにかけて桜が並んで美しい景観を見せる。広場には四阿やベンチも設けられているから、お花見を楽しみながらのランチタイムには好適なところだ。
「お花見・イベント広場」から雀川の下流側を見た景観も素晴らしい。駐車場と雀川の間に並ぶ桜が陽光を浴びて輝き、雀川の渓流と共に風趣に富んだ景観を見せる。気温の高い日なら渓流の中を歩いてみるのも楽しいだろう。下流側に架かる橋の上から「お花見・イベント広場」側を見る景観もいい。
雀川の上流側に目をやれば、砂防ダムと桜の競演を楽しむことができる。雀川河岸に咲く桜を前景に、その向こうに砂防ダムが見える。巨大な人工物と桜との取り合わせが独特の興趣を生んでいる。砂防ダムの向こう側に見える山々にも桜が咲き、美しい春景色を織り成している。
「お花見・イベント広場」の一角には「野外ステージ」が設けられているが、そのすぐ上に枝垂れ桜が咲いている。それほど大きな木ではないのだが、春の青空と緑の山々とを背景にした姿がたいへんに美しい。この枝垂れ桜は、すぐ真下まで上がっていくこともできるから間近から観賞するのもお勧めだ。
「お花見・イベント広場」の「野外ステージ」横から階段状の園路を上っていけば「展望広場」だ。パーゴラの背後や園路脇などに桜が咲き、「お花見・イベント広場」とはまた違った春景色を見せてくれる。
道脇に一本のヤマザクラが咲いている。東側から西側に向かって眺めると、ヤマザクラの向こうに桜の咲く山肌が見える。素敵な景観だ。
砂防ダムの上流側にはダムによって堰き止められた水が“ダム湖”を成している。「展望広場」から“ダム湖”を見下ろせば、河岸に咲く桜が風景に彩りを添える。「展望広場」は公園の北側にあるから、河岸の桜は逆光気味になり、陽光を受けて浮かび上がるように咲いている。美しい景観だ。
「展望広場」から西へ（山側へ）進んで行くと「渓流広場」だ。「渓流広場」にはほとんど桜はないが、緑濃い風景の中にぽつりと咲く桜がある。日を浴びた姿がたいへんに印象的で美しい。
「展望広場」の中の小径を歩きながら上を見上げれば、木々の間から間近に迫った山々が見える。山肌は桜と萌黄色に彩られ、春の青空を背景にして美しい春の色彩を見せてくれる。ソメイヨシノが見せる春景色とは違った、素朴な味わいの春景色だ。
「渓流広場」と公園入口とを繋いで、雀川の右岸側（南側）を小径が辿っているが、この小径脇にミツバツツジが植えられている。鮮やかなピンクの花が絢爛な印象で景観を彩っている。場所によってはミツバツツジ越しに砂防ダムの姿を見ることもできる。
春の雀川砂防ダム公園は自然溢れる風景の中で桜が楽しめるところだ。“桜の名所”と呼ぶには少し物足りなさもあるが、穏やかな空気感の中で静かなお花見が楽しめる。桜の盛りの時期でもお花見の人はそれほど多くないようで、お花見の人混みが苦手な人には好適なところと言っていい。のんびりと園内を巡って桜の咲く景色を楽しみ、お気に入りの場所を見つけてお花見ランチを楽しむのがお勧めだ。
ときがわ町
雀川砂防ダム公園