東京都文京区後楽一丁目の小石川後楽園は水戸徳川家の庭園で、国の特別名勝、特別史跡に指定された名園だ。四季折々に美しい表情を見せるが、早春は梅の名所としても名高い。梅の咲く三月上旬、小石川後楽園を訪ねた。
早春の小石川後楽園
小石川後楽園は水戸徳川家縁の庭園だ。二代藩主光圀が儒学の教えを取り入れて作庭したものという。池を中心に据えた「回遊式泉水庭園」で、四季折々に美しい表情を見せる。南西側の角に設けられた入口から見ると最も奥まった一角、北東側の角に近い辺りには梅林があり、早春には美しい景観が楽しめる。東京都内の梅の名所のひとつとしても名を連ね、毎年大勢の観梅客を迎えている。
早春の小石川後楽園
入口から園内に入ると目指す梅林は大泉水の反対側に位置しているが、先を急がずのんびりと散策を楽しみつつ歩きたい。園内は日溜まりとなって穏やかな空気に満ちている。ベンチで談笑する人たちの姿もある。樹齢100年というシダレザクラも春を待っているようだ。大泉水の中心に浮かぶ蓬莱島の岸辺には鷺の姿があった。おそらくダイサギだろう。身体を丸めて岸辺の岩の上に立ち、池の中の小魚を狙っているのだろうか。
早春の小石川後楽園
早春の小石川後楽園
ゆっくりと歩き、大泉水を回り込むと菖蒲田の向こうが梅林だ。訪れたのは三月上旬、少しばかり見頃を過ぎているようだったが、それでも充分に美しい。観梅客も多い。梅林は散策路が設けられ、その散策路から梅を眺めて楽しむような構成だが、間近に見ることのできる梅も少なくなく、花の写真をクローズアップで狙いたい人にも充分だろう。紅梅、白梅が取り混ぜて植えられているようで、散策路を進むにつれて梅林の景観の表情も変わり、退屈しない。梅林は周囲を木々が取り囲んでいるために適度に“閉ざされた”感じがあり、都心でありながら里山の梅林を彷彿とさせる印象があるのも嬉しい。
早春の小石川後楽園
梅林の他、東南側に位置する「内庭」にも少ないながら梅の花が咲いている。こちらにも足を運んでみるといい。またこの時期にはサンシュユの黄色い花や、沈丁花なども梅と共に楽しめる。松の木に施された“雪吊り”も季節を感じさせて良い風情だ。そうした早春の表情を楽しみながらのんびりと園内を巡るのがお薦めだろう。
早春の小石川後楽園
大泉水の南側の散策路を歩いているとき、大泉水の東側の岸辺にカメラを構えた人たちが大勢集まり、蓬莱島の方へ目をやっているのに気付いた。何事だろうかと思って蓬莱島を見てみると、蓬莱島の南側の岸辺にアオサギがいるのだった。カメラを構えている人たちはアオサギの補食の瞬間や飛翔の瞬間を待っているのだろうと思うが、アオサギはときおり羽ばたくものの、なかなか期待に応えてくれそうになかった。このような都心の庭園でもアオサギの姿を見ることができるのかと、少し嬉しくなった。
参考情報
小石川後楽園は入園料が必要だ。入園料金や開園時間、その他の注意事項については東京都公園協会サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

交通
小石川後楽園へは都営地下鉄大江戸線飯田橋駅、JR中央線飯田橋駅、JR中央線水道橋駅、東京メトロ東西線・有楽町線・南北線の飯田橋駅、東京メトロ丸の内線・南北線の後楽園駅などが近い。都合の良い路線を選べばいい。

小石川後楽園には駐車場はなく、車で来訪する場合は近辺の民間駐車場を利用しなくてはならない。規模の大きなものから小さなものまでさまざまだが、周辺に数多くの民間駐車場が点在している。

飲食
西門入口横に涵徳亭(かんとくてい)という名の集会施設があり、「びいどろ茶寮」というお休み処が営業している。ランチや喫茶が利用できる。詳細は東京都公園協会サイト(「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

飯田橋駅周辺、水道橋駅周辺を中心に、近辺には多くの飲食店がある。気に入ったお店を見つけて食事を楽しむといい。

小石川後楽園内へのお弁当の持ち込みは可能だが、シートを敷くことはできないため、園内に設けられた縁台を利用しなくてはならない。縁台が空いていれば、美しい庭園を眺めながらのランチタイムも素敵なひとときに違いない。

周辺
小石川後楽園入口から東へ1kmほど行くと、本郷二丁目に東京水道歴史館が建っている。横には本郷給水所公苑という小公園があり、初夏のバラが美しい。

東京水道歴史館から北へ辿れば数百メートルで「本郷三丁目」交差点だ。菊坂辺りへと散策の足を延ばすのも楽しい。

梅の季節に訪れたならば小石川後楽園の北西側に位置する「牛天神」も訪ねてみるといい。梅の名所として知られている。

桜の季節なら飯田橋駅から外濠公園へと散策の足を延ばすのがお勧めだ。
梅散歩
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