その吹上しょうぶ公園で、初秋になると彼岸花が咲く。吹上しょうぶ公園は東西を尾根に挟まれた谷戸の立地で、西側は林が間近に迫っているが、東側の丘裾には木々を取り払った草地が設けられている。彼岸花はその草地で見ることができる。
昔ながらの里山の風景を残す吹上しょうぶ公園に、彼岸花の花はよく似合う。初秋の澄んだ青空の下、緑濃い風景の中に咲く彼岸花の鮮やかな赤はよく映える。園内の彼岸花はおそらく植えられたものだろう。草地一面を覆い尽くすというほどの数ではないが、園内の風景の美しさと相俟って良い風情を漂わせている。菖蒲田の畦にもぽつりぽつりと彼岸花が咲いている。これも興趣に富んでいる。里山の風景が残されているとはいえ、あくまで“公園”だから、少しばかり“人工的”な印象も伴うが、緑濃い風景の中に咲く彼岸花の美しさを愉しむには充分だと言っていい。